【超入門】Jazz名盤この1枚、ウエス・モンゴメリー(Wes Montgomery)の『フルハウス(Full House)』 〈12JKI00〉

ウェス・モンゴメリー(Wes Montgomery)のリーダー作は数あれど、正統派 Jazzのスタイルで録音されたものの中では、ライブ録音ということもあってか、最もホットで勢いのある仕上がりとなっているのが、この『フルハウス(Full House)』である。

またこの作品は、1962年6月25日にカリフォルニア州バークレーにおいて、テナーサックス奏者のジョニー・グリフィン(Jonny Griffin)をゲストに迎え、当時、ちょうどツアーで同地を来訪していたマイルス・デイヴィス(Miles Davis)のリズムセクションメンバーであったピアニストのウイントン・ケリー(Wynton Kelly)、ベーシストのポール・チェンバース(Paul Chambers)、そしてドラマーのジミー・コブ(Jimmy Cobb)と共演したクインテット編成でライブクラブ「ツボ(Tsubo)・コーヒー・ハウス」で録音された銘盤である‥‥。

 

【解説】
ウェス・モンゴメリー(g)の、ジョニー・グリフィン(ts)やウィントン・ケリー(p)などの共演者との相性の良さと、観客も一体となって演奏を楽しんでる様子が伝わるライブ盤である。

全体的にはライブならではのメンバー各自の余裕を持ったプレイが印象的で、絶妙な間をもった掛け合いと、その合間に聴衆の程よい反応が加わり、いかにも Jazzのパフォーマンスらしいホットでウォームな心地よいグルーブ感を感じさせる名盤となった。

また複数の楽曲で疾走感抜群のスリルにとんだフォーバースの応酬がみられるが、そこでは互いのフレーズを引用し合ったり、上手く重なり合う様にフレーズを積み上げたりと、ハイレベルの演奏テクニックに基づいた信頼度の高い余裕のセッションが展開されている。但し、ライブ盤にありがちな単なるブローイング・セッションが場当たり的に延々と続く様な内容では決してなく、楽曲内の演奏の決め事が意外にしっかりとしていて、またビ・バップ期によくみられる細かな譜割の曲が多い。そして聴く側には、各ソロパートとも即興性が高くダイナミックな印象だが、ソロのコーラス数もあらかじめ明確に決められていた感じがする。

オクターヴ奏法など得意の超絶技巧を駆使したウェスが、テンション上げ上げの”リトル・ジャイアント”ジョニー・グリフィンと渡り合い、ウィントン・ケリーも相変わらずの“ケリー節”を披露。ベースのポール・チェンバース、ドラムスのジミー・コブも、流石に当時マイルス・デイビスのコンボでケリーと共に鉄壁のリズム・セクションを担っていただけのことは、その演奏が充分に証明している。

またグリフィンとは、後の欧州ツアーで共演して快演(1965年のライブ盤『LIVE IN PARIS』等)を繰り広げているし、同様にケリーのトリオとも一緒にアルバム(SMOKIN’ AT THE HALF NOTE VOL.1 』その他)を制作している仲であり、実にコラボの質が高いのも頷けるメンバーなのであった。

星の数ほどあるJazzのライブ録音盤の中でも、その充実した内容と心地良さではTopクラスの出来映えだ。聴く者には、まるで自分が熱狂のライブ・ハウスに居合わせたかの様な気分にさせておきながら、一気呵成に駆け抜けていく爽快感を味わせる、そんな作品。“60年代 ダンモ”の真のライブ感覚と興奮を体験してみたい方に、是非、お薦めの一枚である。

尚、ウェスは、ケニー・バレルと共に1960年代のJazzシーンにおける黒人ギタリスト台頭のシンボルであり、彼の登場により、それまではシングルトーン中心のソロ演奏だったギターが、オクターブ奏法やコード奏法などの多弦によるダイナミックで多彩なアドリブ楽器に変貌したのである。すなわち彼こそが、チャーリー・クリスチャン以来の驚異のJazzギター奏者であったのだ。

最後にウェス・モンゴメリーその人についての詳細は、他のメンバー共々、別稿にて取り上げたいと思うので、本稿では割愛することをご了承願う。

 

【メンバー構成】
この作品は、1962年6月25日にカルフォルニア州バークレーのコーヒー・ハウス「ツボ(Tsubo)」でのライブ録音で、演奏メンバーはウェス・モンゴメリー(g)、ジョニー・グリフィン(ts)、ウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds)の5人である。

Personnel :
・Wes Montgomery(guitar)
・Jonny Griffin(tenor sax)
・Wynton Kelly(piano)
・Paul Chambers(base)
・Jimmy Cobb(drums)

Recording Data:June 25,1962.  Live at the Tsubo,Berkeley,CA

 

【収録曲】
Tunes Side A:
1. Full House(9:14)  【Wes Montgomery】
2. I’ve Grown Accustomed to Her Face(3:18)  【Lerner and Lowe】
3. Blue’n Boogie(9:13)  【Dizzy Gillespie】

Tunes Side B:
4. Cariba(9:35)  【Wes Montgomery】
5. Come Rain or Come Shine(6:49) (take-2)【Mercer-Arlen】
6. S.O.S.(4:57) (take-3)【Wes Montgomery】

尚、CD化された際に、上記の楽曲に加えてボーナストラックとして Come Rain or Come Shine(take-1)・S.O.S. (take-2)・Born To Be Blueの3曲が追加収録されて、Come Rain or Come ShineとS.O.S.がテイク違いと続けて順に並べられ、Born To Be Blueが最後の9曲目とされた。

また原盤は、Wes Montgomery『 Full House 』1962 / Riverside RLP12-434 (SMJ-6069)である。

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