実は(急いで)朝鮮半島へは向かっていなかった、と報じられたアメリカ海軍の第1空母打撃群(Carrier Strike Group-1:CSG-1、司令官はジェームス・W・キルビー少将 REAR ADMIRAL JAMES W. KILBY)であるが、その具体的な陣容・実態は意外に掴みづらい。
当然ながら(機密保持の為に)所在地などに関しては、アメリカ海軍の公式HPや各艦のFacebookホームページでも限られた情報しか公開されていないし、他の民間を含むミリタリーサイトでもその動向に関する情報は限定的である。更に日本国内の軍事情報サイトの内容は杜撰でいい加減なものも多く、誤報が蔓延している…。
『Aidia Mj』が20日に公開した動画を下記にて紹介しよう。
この動画では空母カール・ヴィンソン Carl Vinson(CVN-70)の随伴艦として、第1空母打撃群(CSG-1)のメンバーである巡洋艦のバンカー・ヒル(CG-52)、並びに第1駆逐隊(駆逐艦部隊/戦隊) Destroyer Squadron-1(CDS-1)所属の駆逐艦グリッドレイ Gridley(DDG-101)、スタレット Sterett(DDG-104)、デューイ Dewey (DDG-105)が登場する。
また2015年当時のCDS-1の所属艦は、駆逐艦グリッドレイ(DDG-101)、スタレット(DDG-104)、ストックデール Stockdale(DDG-106)、ヒギンズ Higgins(DDG-76)、ベンフォード Benfold(DDG-65)、ラッセル Russell(DDG-59)である。
更にアメリカ海軍が昨年末に公表(2016年11月28日)していた情報では、CSG-1には巡洋艦レイク・シャンプレーン Lake Champlain (CG 57)の他にCDS-1を構成する駆逐艦として、スタレット(DDG 104)・デューイ(DDG 105)・ウェイン・E・メイヤー Wayne E. Meyer (DDG 108)・マイケル・マーフィー Michael Murphy (DDG 112)らが所属しているとされていた。
同様の海軍公開情報(2017年4月10日)では、レイク・シャンプレーンとウェイン・E・メイヤー、マイケル・マーフィーがカール・ヴィンソンと共に4月8日にシンガポールを出港したとの記事もある。
その他の情報からも、現在、ヴィンソンに随伴しているのはイージス巡洋艦がレイク・シャンプレーン(並びに可能性は低いがバンカー・ヒルが加わり)、ミサイル駆逐艦がウェイン・E・メイヤーとマイケル・マーフィーであるが、その他の艦艇(ミサイル駆逐艦1隻~2隻程度)が増勢されている可能性もある。
ところで、我国の横須賀を母港とする空母ロナルド・レーガン Ronald Reagan(CVN-76)を中核とする第5空母打撃群(CSG-5)の編成(最新の状況では一部変更の可能性あり)を紹介すると、そこにはアンティータム Antietam(CG-54)・チャンセラーズビル Chancellorsville(CG-62)・シャイロー Shiloh(CG-67)の3隻の巡洋艦と第15駆逐隊 (CDS-15)の駆逐艦が所属している。
そしてCDS-15を構成している駆逐艦の陣容(少し前の情報なので、ここでも変更となっている艦があるかも知れないが)は、BARRY バリー(DDG-52)・カーティス・ウィルバー Curtis Wilbur(DDG-54)・ジョン・S・マケイン John S. McCain(DDG-56)・フィッツジェラルド Fitzgerald(DDG-62)・ステザム Stethem(DDG-63)・ベンフォールド Benfold(DDG-65)・マッキャンベル McCampbell(DDG-85)・マスティン Mustin(DDG-89)となっている。(2017年3月末日現在、ステザムが佐世保入港、バリー、フィッツジェラルド、マッキャンベルを除く他の艦が横須賀港に在泊中)
すなわちCSG-1の直掩ではないにせよ、朝鮮半島周辺の海域に上記のCSG-5所属のイージス巡洋艦やミサイル駆逐艦が、 北朝鮮の弾道ミサイル迎撃任務や彼の地の核施設やミサイル・重砲基地をトマホーク巡航ミサイルで叩く為に(4月10日以降くらいから)複数配置されていることは、充分以上に考えられるのだ。(但し現在、空母のロナルド・レーガンは定期修理・メンテ中である)
さて、国内の軍事サイト等によると、現在、カール・ヴィンソンと同航している巡洋艦はアンティータムであるとの指摘もあるが、これは間違いだ。該艦は横須賀沖で座礁、現在、港内に停泊して武装の積み下ろし作業中である。(ちなみに4月20日現在、巡洋艦シャイローも横須賀港に停泊中)
また、駆逐艦ラッセン Lassen(DDG-82)並びに高速戦闘補給艦サクラメント Sacramento(AOE-1)が随伴中との情報もあるが、サクラメント級は全艦退役済みである。またオリバー・ハザード・ペリー級(Oliver Hazard Perry-class missile frigate)ミサイルフリゲート艦のイングラハム Ingraham(FFG-61)の名前も見受けられるが、既にこの艦も退役しているので、やはり不適切な情報が混在している様だ…。(ラッセンは2016年1月まで横須賀に配備されていた)
補給艦については高速戦闘支援艦のサプライ級(Supply-class fast combat support ship)が関わっているとも考えられるが、これについても国内のネット情報では給油艦ペコス Pecos(T-AO-197)がCSG-1に随伴しているとの報告が上がっている。
確かに、冒頭にリンクした動画を観ても、カール・ヴィンソンと共に航行している補給艦の艦影はヘンリー・J・カイザー級給油艦(Henry J. Kaiser-class underway replenishment oiler)であるので、ペコスの可能性は大である。しかしヴィンソンの右舷遠方に貨物弾薬補給艦のルイス&クラーク級(Lewis and Clark-class dry cargo ship)らしき姿も見えるので、他にも補給艦が行動を伴にしている可能性も高い。(但し、この動画が何時撮影されたのかは定かではなく、別途の画像を使用して編集されていたとしたら正確な状況の確定は不可能である)
また佐世保配備のルイス&クラーク級貨物弾薬補給艦のリチャード・E・バード Richard E. Byrd(T-AKE-4)とウォリー・シラー Wally Schirra(T-AKE-8)、そしてチャールズ・ドリュー Charles Drew(T-AKE-10)は2017年3月末日現在において佐世保港には在泊していない。
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