新作TVアニメ『ひそねとまそたん』 〈44JKI15〉

筆者が今クール(2018年4月~)で一番期待していた(シリーズ作品の続編を除く)TVアニメがTOKYO MX・BSフジ他で放映中の『ひそねとまそたん』。20世紀風の描画スタイルが懐かしくもあり、ストーリー進行もまた同様に70年代~90年代の(子供向け)アニメを髣髴とさせます。(放送開始前に)アニメ好きな友人からは「“ど根性ガエル”的コメディと“エヴァンゲリオン”的ロボ操縦ものを足して二で割った様な作品みたい」と聞いていましたが、実際にもたしかにそんな感じかも知れません。但し今のところは、“エヴァ”の様なじんわりとした湿っぽさ(それが魅力でもあるのですが)はなく、圧倒的に明るくノーテンキな面が強いようですが‥‥。

 

『ひそねとまそたん』は、航空自衛隊が密かに管理する「軍用機に擬態するドラゴン」と、女性パイロットたちの交流を描くオリジナル・アニメ作品です。ボンズ(BONES)制作、『シン・ゴジラ』等の樋口真嗣さんが総監督で『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などの岡田麿里さんが脚本を担当しています。

キャラクターデザイン原案は青木俊直さん、ドラゴンのデザインは本体をコヤマシゲトさん、変形後のメカ・スタイルを『マクロス』の河森正治さんが担当し、最終的に伊藤嘉之さんがまとめる形となりました。特にゆるキャラ系の少女キャラクターを得意する青木さんの才能が上手く活かされており、コヤマさんの描く愛らしいドラゴンも意外と違和感なく他の人間キャラと同居しています。またドラゴンが戦闘機へと変形、空を飛ぶところはまさしく『マクロス』の“バルキリー”の世界観ですね。

尚、独特の絵柄・作風について、ウィキ(wikipedia)によると

本作は通常のテレビシリーズではスケジュール上難しいプレスコ(先に声優が台詞を収録してから作画する)方式で制作している。セル(動画)や3DCGの主線を撮影で太らせることにより、手描きの背景に馴染ませている。放送を視聴したゆうきまさみは「『アニメ』と言うより『動いている漫画』とでもいうような感覚を味わえて、そこも新鮮。」と感想を述べている。

とのことです。筆者も、あの航空機を始めとした乗物や建物などの枠線の太い描き方がかつてのアニメを思い起こさせてくれる一因と感じており、たしかに『動いている漫画』感はそこから来ているのかも知れません。

 

あらすじと作中用語

航空自衛隊の岐阜基地に配属された新人自衛官の“甘粕ひそね”は、本来は事務職に配属されるはずでしたが、偶然に格納庫で遭遇した巨大な変態飛翔生体 (OTFことドラゴン) に気に入られたこと(選ばれ̪し巫女?)から、このOTFを操縦するDパイロット(Dパイ)に任命されてしまいます。その存在を隠す為に F-15J戦闘機に擬態して飛行する謎のドラゴンを“ひそね”は“まそたん”と命名し、専属搭乗員としての日々を送ることに。しかしこのドラゴンには、国家の命運を左右するとされる程の巨大な秘密が隠されているらしいのですが‥‥。

・OTF(オーティーエフ)とは、変態飛翔生体のこと。即ち、航空自衛隊により秘匿にされているドラゴンの呼称です。H形態(形態“ホテル”、FORM Hotel、外装装備モード)からF形態(形態“フォックストロット”、FORM Foxtrot、航空機モード)に擬態(変形)することが可能。猛烈な代謝熱を放出するために定期的に空を飛ぶ必要があり、待機時はプールによる冷却装置に漬かっています。ちなみに食事はレアメタルで、携帯電話(特にガラケー)などを好む様です。

・Dパイ(ディーパイ)とは、OTFの飛行要員を指す用語。つまりドラゴンの専従パイロットのことです。ヘッドピースリアライザー(通称:ヘッピリ)を着用してドラゴンに飲み込まれることで、当該ドラゴンを操縦します。

 

主な登場人物(カッコ内は声優の氏名)

・甘粕ひそね 2等空士(久野美咲)、新人自衛官で岐阜基地所属の“まそたん”担当のDパイ。

・貝崎名緒 2等空士(黒沢ともよ)、岐阜基地所属のDパイ候補生。

・小此木榛人 空士長(梶裕貴)、岐阜基地所属の“まそたん”担当の機付長(整備責任者)。

・柿保令美 2等空佐(釘宮理恵)、岐阜基地所属の飛行班長。

更に他基地の別のOTFのDパイとして、星野絵瑠 空曹長(河瀬茉希)、絹番莉々子 2等空曹(新井里美)、日登美真弓 2等空曹(名塚佳織)などが登場します。

 

作中に登場するドラゴンはまるでポケモンのモンスターのように愛らしく見えますが、“ひそね”が名付けた“まそたん”とは「間祖譚」(第2話で判明するが、詳しい謂われはまだ解っていない)のことらしい。これは「ご先祖様の物語」を意味していますが、今後のストーリーで“まそたん”の謎がおいおい明らかにされていくのでしょう。

さてエンディング曲が、60年代のフレンチポップスのカバーという事が話題となっており、作中に登場する声優さん達がたどたどしいフランス語で頑張って歌っているのが逆に一種の味わいとなっています。また歌と共にエンディング場面での各キャラたちのダンスもカワイイと評判です。

実は何とこのED曲は、フランスの歌手で「Poupée De Cire , Poupée De Son(邦題:夢みるシャンソン人形)」の大ヒットで有名なフランス・ギャル(France Gall、本年1月に死去)さんが歌う、「Le temps de la rentrée(邦題:恋の家路 新学期)」 のカバー曲なのでした。

未だ放送2回目(本記事投稿時)ながらこのエンディングに対する反響は凄く、(『新世紀エヴァンゲリオン』での「Fly Me To The Moon」もそうだったと思うのですが)懐古調と云うか温故知新が狙いなのかは別として(何故にフランス・ギャルなのかは一層不明ながら)、樋口真嗣さんは庵野秀明さんとの親交も深く『シン・ゴジラ』もそうですが“エヴァ”関連の作品にも多く参加しており、どことなく庵野さんと似た感性・テイストをお持ちなんだと改めて感じさせるものがあり、また世代的に近い筆者にもこのセンスには共感深いものがあるのでした‥‥。

 

自衛隊に秘匿されているドラゴンが変形して戦闘機となる設定や第2話での“盗んだバイクで逃げ出した”貝崎の逸話、そして早くも人気のEDソングなど、色々な仕掛けを検証すればするほど、実は前世紀へのオマージュであり回顧譚的なアニメとも思えるのですが、こうした点がかえって最近の若年層には新鮮な印象を与えているみたいだし、今後の展開が楽しみでもあります‥‥!!。

-終-

【参考-1】『ひそねとまそたん』関連PV

 

【参考-2】「Poupée De Cire , Poupée De Son(邦題:夢みるシャンソン人形)」

 

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