【鉄道模型を愉しむ】大変だ、篠原模型製レールが生産終了!! 〈3784JKI51〉

我家の鉄道建設が困難に。全国、否、全世界のレイアウトビルダーに震撼が走る!! 本稿は、ディープな鉄道模型ファン(しかもHOゲージでのレイアウト建設推進者)にだけ関わる非常にマイナーな話題をお届けする記事だが、この切実な状況を是非とも多くの人々に訴えたい‥‥!?。

ちなみに鉄道模型の世界での“レイアウト”とは、「模型列車を走行させるための線路と情景を備えた運転施設を指す。レイアウトと同種の情景模型としてジオラマがあるが、鉄道模型においては車両の走行が出来るものをレイアウト、車両も情景の一部として固定もしくは静置されたものをジオラマ/シーナリーセクションと呼び区別している。」(ウィキペディアより)とされる。

 

さて先月(4月)中頃、「大変、大変だよ。篠原模型がレール製品の生産終了を発表したらしい」との同じ模型趣味の友人(本人の許可を得たので紹介すると、この人がKijidasu! 認定投稿者第1号の“准将”閣下)からの急報を受けて慌てて真偽を確かめた筆者は、現実にその通りであることを知り衝撃を受けた。その姿を見ていた家人は大いに呆れていたが、鉄道模型、中でもレイアウト建設派にはこのことは非常に重大な問題なのである。

改めてことの真相だが、4月の初め、篠原模型は同月25日をもって、1950年の創業以来継続していた同社のレール製品の製造を終了すると取引先の主要な鉄道模型店各社に通達したそうだ。筆者の周辺では、老舗模型店の『エコーモデル(EM)』のHPのインフォメーション記事でこの事実を知った鉄道模型ファンが多かった様だが、複数の他の模型店でも同様の情報が得られた。

先月途中からネットでもこの情報が飛び交い、特にHOゲージで本格的なレイアウトを建設中のファンやセクション/モジュール/ユニット等を制作中のお仲間たちをパニックが襲った。海外の同様(道床なし線路、下記で詳述)の他社製品と完全に互換性がない訳ではないが、微細な形態や寸法の違いから混在・併用は相当に難しいと考えられるし、代替使用にはどちらかに一部改造が必要となり制作過程で煩わしさが増す。またシノハラ製品にしか存在しないタイプの線路もあるのだから、レイアウトビルダーの困惑は増長するばかりである。

そこでシノハラ製品でレイアウト制作途中の者やこれから建設を検討・予定していた人を中心に既に市場在庫の買占めが始まっており、多くの小売店では販売制限、具体的には製品種類別の一人当たりの購入数量を限定する動きが出ている上に、どの店もほぼ追加の製品確保は困難であるとしており、現状の在庫限りの販売となると表明していて、ファンの間では混乱・不安が拡大している。

 

篠原模型が1955年に考案した「フレキシブルトラック(SINOHARA TRACK)」(以下、フレキ)、つまり自在に曲げてカーヴ区間をも作ることが可能な道床無し線路(枕木付きレール)は、やがて鉄道模型界の一大潮流となる。

この様な道床無し線路を路盤に敷いてそこにバラスト(線路を支える砂利)を撒いた方が、如何にも模型然とした道床付線路をそのままの状態で使用するよりも実感的であることは言うまでもない。またフレキは曲率もある程度自由に曲げられるし、切断することで長さも調整可能であるから、定型の道床付線路よりも線路配置の自由度は極めて高いのだ。即ち、ヴァリエーション豊かで現実の鉄道の線路配置に近いレイアウトを構築するには、フレキとそれと同じ構造・形式のポイント(分岐線路)などのシリーズ製品が間違いなく適しているのである。

その為、シノハラ製品は筆者が鉄道模型を趣味の一つとした約50年前には、レイアウト制作においては既に主流のレール製品であった。オールドファンならば、雑誌『鉄道模型趣味(TMS)での同社の広告ページ(長期間にわたり毎号表3への掲出だったと思う)は懐かしいものだろう。ちなみに、いつ頃からかは正確には知らないが、かつて同誌の発行元である機芸出版社は英国のPECO(ピィコ)製品の国内総代理店でもあり、毎回、同誌上にはPECOのレール製品広告とシノハラのレール製品広告がバチバチに競合していたのだった。但し、当時の筆者にはPECO製はNゲージに適しているが、HOならばシノハラ製を選ぶべきだという印象が強かったと思う。

数年前までは、米国の有力鉄道模型メーカー兼卸店のウォルサーズ(WALTHERS)へ長年OEM供給されていたシノハラ(Shinohara)のレール製品は、その豊富な品揃え品質の高さで、海外でも上記のPECO製のレール製品と双璧とも云える地位を築いてきた。

こうして米国を始め世界的にも大きなシェアを持つに至ったシノハラのレール製品だが、御座敷レイアウト主流の我国では他社の道床付線路を使用する人も多く、シノハラ製の場合でも専用道床を購入したり自ら制作するファンが多数派であったと思う。筆者も同社の横浜・関内店(有隣堂本店の裏手のカレー屋さんの2F)を訪れては、フレキ以外に4番ポイントと併せて専用木製道床を買い求めたことがあった。また固定レイアウトを作る場合は木製以上にコルク道床全盛の時代が長く続いたが、しかし(居住環境の狭い)日本国内の鉄道模型の主流がHOからNゲージへと移るにつれて、手軽なプラ製の(例えばカトーやトミックスの)レールを手にする人々が増加していった。

 

尚、今回の製造打ち切りの理由には製造技術に関する後継者不足が挙げられている様だが、それ以外にも販売量の減少も一因だろうと推測されよう。ある程度の売上が見込まれれば、他社が権利を買い取り製造販売を継続する可能性が高く、そうでないからには販売量の減少という現実が必ず存在すると考えられるのだ‥‥。しかし世界的にも充分確立したブランドでもあり、幅広いヴァリエーションと高品質を誇る素晴らしい製品群を失うことは、誠に残念である。

ところで本件は、今年半ばから予定していた筆者の第4次レイアウト制作(筆者は16番と1/87米国型を好み、大型長大車輌を多数入線させたい)にも大きな支障を来すだろう。今回の篠原模型(シノハラ)のレール製品からの撤退で、我が計画も根本から見直す必要が発生している。現在、当家のシノハラ製品のストックと云えばCODE83のフレキ直線1mが4~5本あるだけであり、今後、使用するレール類のブランドを早期に決めて購入を開始することが出来ないのであれば、まったく制作の道筋が見えない。取り敢えず慌ててシノハラ製品を可能な限り買い漁ってみても、追加購入のメドが立たないと(長期にわたる)レイアウトの拡充・改修や保全に関して不安なだけである。

輸入品であればマイクロ・エンジニアリング(Micro Engineering)などのレール製品があるが、如何せんポイント(分岐線路・ターンアウト)等の種類が少ない。道床なしタイプではアトラス(Atlas)ブランドの製品もあるが、これも種類が乏しい上に実感味にも欠ける玩具ぽい仕上がりだ。但し、ラピード・トレインズ(Rapid trains)の「Bendy Track」が本格的にシリーズ化すれば、これは凄いことになるのだが‥‥。また道床付ならば選択肢は豊富となり、国産のカトー「ユニトラック」は最も手軽に調達が可能だが、種類が少ない上に道床が厚(高)過ぎでバラスト部分にも実感味がない。またエンドウの「ニューシステム線路」では先祖返りになってしまいそうだ。海外製のバックマン(Bachmann)は論外、 欧州勢のフライッシュマン(FLEISCHMANN)のレール群は道床が薄いが堅牢で評価は以外に高いが、どうしても曲線径がきつく(ある程度曲げられるフレキもあるが)フランジの問題もあるし価格も高額だ。ロコ(ROCO)の製品はちょっと工夫すれば割に実感的で、線路の規格もCODE83相当だと聞くが、こちらも曲率が強くポイントの番手も低いものばかり。つまり欧州メーカーの線路は、急曲線のミニレイアウト向き(但し、自社の車両は大型でも大抵通過可能)で、小型車両で遊ぶHO定尺ベニアレイアウトを作るのならば最適である。また欧州の製品の方が、カトーの「ユニトラック」よりは道床部分が自然な感じがする。

結論としては、やはりPECO製品への転換やむなしだが、国内では機芸出版社が総代理店を外れて以来(現在はプラッツが代理店)、鉄道模型専門店でもPECO取扱店は減少傾向で、また通販店などでは扱いがあっても一部製品のみの場合が多く、これも入手が困難化しているらしい。こうして結局のところ、レイアウト制作派の鉄道模型趣味は大ピンチなのである‥‥。

-終-

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