【還暦オジサンのお洒落講座】高級スーツと云えば“トム・フォード(Tom Ford)”!! 〈9JKI35〉

本日(2018年6月3日)現在、テレビ東京の『海外ドラマセレクション』(毎週月曜日から金曜日の12:40 – 13:35)枠にて放送中『SUITS/スーツ(原題:Suits)(2018年5月7日~6月14日/シーズン1・2)は、アメリカ・USAネットワークで2011年から放映されている人気の連続テレビドラマだが、その劇中で主人公のひとりであるハーヴィー・スペクターが身に付けているスーツは『トム・フォード(Tom Ford)』のものであり、このブランドは現在米国を代表するラグジュアリーブランドの雄である。

 

ドラマは、経歴を詐称して働く完全記憶術を持つ若き弁護士のマイク・ロス(パトリック・J・アダムス、シーズン7までで降板)と、その上司の剛腕で自信家の敏腕弁護士・ハーヴィー・スペクター(ガブリエル・マクト)を中心とした一流弁護士事務所、そして法曹界を舞台としたサクセス・ストーリーであり、現在もシーズン7を終えて継続中だ。ちなみに、先日、英国王室のサセックス公爵ヘンリー王子と結婚したレイチェル・メーガン・マークル(サセックス公爵夫人)がレギュラー女優(レイチェル・ゼイン役)として出演していた(シーズン7までで降板した)ことも話題に。

またドラマの題名ともなっている、まさしくニューヨークの一流弁護士を象徴するかの様なハーヴィーのスーツ姿を筆頭に、毎回登場人物の纏(まと)うラグジュアリーでスタイリッシュなファッションが番組の魅力の一つでもある。⇒ ウィキペディアの関連サイト

 

そしてハーヴィーが着ているスーツは、昨今の欧米高級紳士ブランドを代表するデザイナー、トム・フォードの手によるものだが、彼のブランドである『トム・フォード(Tom Ford)』は2005年に設立され、今や世界を代表するトップクラスのラグジュアリーブランドと云えよう。ブランド設立当初は、アイウエア(眼鏡・ゴーグル類)からスタートしたが、現在ではメンズやレディースを問わずバッグから香水までを展開する総合アパレルブランドに成長している。

フォードは、斬新で奇抜なデザインではなく、普遍的でクラシカルなオートクチュールの手法で認められたデザイナーだが、自らのブランドの世界展開においては、スーツの製造に関しては高級スーツブランド『エルメネジルド・ゼニア(Ermenegildo Zegna)』と提携し、そのスーツは最高品質の素材を用いたエレガントなデザインが特徴で、更に一つ一つ細部の裁縫にまで拘って仕立てており、上記のテレビドラマだけではなく、映画の“007シリーズ”への衣装提供でも有名となった。

そのクラシックな手法やディテールを踏襲しながら、洗練された都会的デザインに仕上げられたスーツは、今や世界中のセレブや映画スターがレッドカーペット上において着用することでも知られている。

※『エルメネジルド・ゼニア(Ermenegildo Zegnaとは、イタリアを代表する世界的ファッションブランドのこと。スーツを中心にジャケットやシャツ・ベルトからシューズ、そてバッグなどのレザー製品も手がけている。元は生地メーカーとして1910年に発祥、現在でも最高品質の生地メーカーとして『アルマーニ』・『エルメス』・『ラルフ・ローレン』・『ブリオーニ』等の高級ブランドに生地を供給している。

映画“007シリーズ”では、『慰めの報酬』・『スカイフォール』・『スペクター』の3作品でジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグが『トム・フォード』のスーツを身に付けている。ちなみにそれ以前は『ブリオーニ』のスーツを着用していた。

※『ブリオーニ(Brioni)は、1945年にイタリアのローマにて創業された紳士服の高級ブランド。このブランドのスーツは、最高級の素材を使用して職人のハンドワークを重んじたもので、一貫してイタリアの軽やかなエレガンスを追求している。

※TVドラマ『SUITS/スーツ』の2nd.シーズン・第9回の放送で、ハーヴィーのライバル弁護士(ルイス・リット)がブリオーニ(Brioni)』のスーツを着ていたこと(ハーヴィーと同格の地位への昇進の前祝いとして購入)を観て、ハーヴィーの秘書であるドナが事務所内の派閥争いに関する敵対行動の存在に気付くシーンがあるが、(敢えて『ブリオーニ』を選択したことが劇中の軽いジョークでありながら)このエピソードからも『トム・フォード』のライバル・ブランドは『ブリオーニ』であるとのイメージが一般的に定着している事がうかがえる。

 

トム・フォードは、1961年生まれで米国テキサス州の出身。ニューヨーク大学で美術史を学びながら俳優を目指していた後、有名なデザイン学校であるパーソンズでインテリア・アーキテクチャーを専攻。その後、ファッション業界へと転進、キャシー・ハードウィック(Cathy Hardwick)『ペリー・エリス(Perry Ellis)デザイナーとして頭角を現していった。

※『ペリー・エリス(Perry Ellis)は米国のファッションブランドで、伝統にとらわれないデザインと自然素材との組み合わせが特徴。「ニュークラシック(新古典派)」と云われるファッションのスタイルを確立したが、トム・フォードの他にマーク・ジェイコブスも在籍していたことがある。

 

1990年にはニューヨークからミラノに移って『グッチ(GUCCI)』のレディース部門のデザイナーに任命され、1994年にはクリエーティブ・ディレクターに就任する。以降、1995年から1999年にかけて『VH-1(VH-1 Fashion and Music Awards)』CFDAで各賞を受賞、2001年からはグッチ社のグループ企業となっていた『イヴ・サンローランYves Saint-Laurent)プレタポルテ(既製服)ラインである『リヴ・ゴーシュ』ブランドのクリエイティブディレクターも兼任した。

※『グッチ(GUCCI)は、グッチオ・グッチ(Guccio Gucci)1921年に創業したイタリアファッションブランド、並びに同ブランドを展開する企業グループである。バッグ・靴・サイフなどの皮革商品をはじめ、服・宝飾品や時計・香水などを幅広く手がけているが、現在はフランスの流通大手企業体ケリング(KERING)グループ(旧PPR)の傘下。

 

2004年になって『グッチ(GUCCI)』から離れ、翌2005年に自身のオリジナルブランド『トム・フォード(Tom Ford)』を設立して現在に至るが、国際的にも高い評価を受け、現在、世界中で最も成功したデザイナーの1人と評されている。

またトム・フォードは、映画監督も務めており(彼の作品『シングルマン』が2009年に第66回ヴェネツィア国際映画祭に出品されて主演のコリン・ファースが男優賞を受賞、2016年には『ノクターナル・アニマルズ』が第73回ヴェネツィア国際映画祭で審査員大賞を受賞)、更に自身の映画出演作も複数あるという多才の持ち主。

そんな彼は、『グッチ(GUCCI)』時代には衰退していた同ブランドを復活させた中興の祖として、“トム・フォード シンドローム”を巻き起こした。これは創業者一族のお家騒動によって倒産寸前まで追い込まれたグッチ社の苦境の時期に、新たなデザインでブランドのイメージを一新し、高級ブランドに大胆さと刺激を吹き込むことで各界の有名人やファッション業績からの共感を呼んだとされている。

その手法は、市場に溢れていた凡庸なグッチ製品を整理し、同社の伝統的な昔ながらの良きデザインのテイストは残しながら、それを現代的に解釈し直したものを次々にコレクションとして発表していった。

更にブランディングやマーケティングといった分野に力を入れ、高級ブランドとしての『グッチ(GUCCI)』を再生したのだった。即ち、同社を創業したのはグッチオ・グッチだが、現在のグッチの礎を作ったのはトム・フォードであると言っても過言ではない。

※トム・フォードがクリエーティブディレクターに就任した1994年以降の10年間で、グッチ社の売上高は2億3,000万ドル程度から30億ドル程度へと約13倍にまで拡大し、収益性は大きく改善したとされる。

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