畠中恵さんの小説『つくもがみ貸します』が待望のアニメ化されて、(2018年)7月22日よりNHK総合の月曜0時10分~0時35分(日曜深夜枠)にて放送を開始しました。尚、ナレーションは片岡愛之助さんが担当し、OPテーマ曲「Get Into My Heart」の歌を担当しているのが MIYAVI vs シシド・カフカさん、EDテーマ曲「今宵は夢を見させて」の作詞と歌が倉木麻衣さんとなっています。
公式サイト ⇒ http://tsukumogami.jp/
本書(シリーズ)は、江戸・深川の損料屋「出雲屋」を舞台に付喪神(つくもがみ)と市井の人間たちとが織り成す悲喜こもごもの人情噺(&軽い謎解きストーリー)ですが、2007年9月25日に角川書店から単行本が刊行され、その後に文庫本が角川文庫から刊行されました。
2013年からは“つくもがみシリーズ”としてシリーズ化されて、同年3月26日には続編『つくもがみ、遊ぼうよ』(つくもがみ、あそぼうよ)が刊行されています。更に2018年からは【小説 野性時代】にて『つくもがみ笑います』(つくもがみわらいます)が連載中で、2017年10月現在の累計発行部数は60万部を突破しています。
著者の畠中恵(はたけなか・めぐみ)さんは、高知県生まれで名古屋造形美術短期大学卒。『しゃばけ』で第13回ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞してデビュー、その後、この『しゃばけ』が大人気シリーズに成長します。著書には『ぬしさまへ』・『ねこのばば』・『おまけのこ』・『うそうそ』・『ちんぷんかん』((以上『しゃばけ』シリーズ、新潮社)、『百万の手』(東京創元社)・『ゆめつげ』(角川書店)・『とっても不幸な幸運』(双葉社)・『アコギなのかリッパなのか』(実業之日本社)・『まんまこと』(文芸春秋)などがあります。
※付喪神(つくもがみ)とは、長い年月(100年とも)を経た道具や器物などに神や精霊(霊魂)などが宿り妖怪となったものの総称。人を誑かすともされており、「九十九(つくも)神」(この場合の“九十九”は、長い・多いなどの意)と表記されることもあります。尚、古来より我国では付喪神となることを防ぐ意味もあってか、99年を経た道具は捨てられることが多かったと伝わります。同様の、万物に霊が宿るとする信仰・思想は「アニミズム(animism)」と呼ばれ、世界各地に存在しています。
※損料屋とは、今でいうレンタル事業者。庶民はもちろん、武家屋敷から商家や岡場所などに鍋・釜・着物・布団から褌などの日用品や骨董品、そして美術品と何でも貸し出す江戸時代特有の商売です。火事や水害の多い江戸の土地柄、いざ災厄に追われて逃げる身となれば多くの家財は邪魔となります。そこで、日々に必要な道具類は買うより借りて済ませようと考える者が当時の江戸には多く、こうしたニーズを受けての“万(よろず)レンタル業”は珍しくない商いだったのです。
※『しゃばけ』は、江戸時代を舞台とした妖怪が活躍するミステリー仕立ての時代劇ファンタジーで、第13回日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞を受賞。シリーズ累計670万部を超え、手越祐也さん主演で2007年・2008年にフジテレビにてドラマ化もされました。
<あらすじ>
江戸は深川、仲町にて古道具屋 兼 損料屋「出雲屋」を営む、お紅と清次の義理の姉弟が物語の主役です。但しこの出雲屋が取り扱う道具たちは、他店とは一味も二味も違い、作られてから百年以上が過ぎて魂を宿した「つくもがみ(付喪神)」という一種の妖怪たちだったのです。
客先に貸し出されては色々な話を聞いて来ては噂話を繰り広げる「つくもがみ」たちですが、お紅と清次は、彼らの姿や言葉が見えたり聞こえたりする特異体質の持ち主。そこで彼らは、気位が高く悪戯(いたずら)好きでお節介な「つくもがみ」たちの力を借りながら、江戸の町で起こる大小様々な事件や騒動を解決していくのでした‥‥。しかしやがて、4年前に失踪したお紅の意中の相手である佐太郎の行方を図らずも知ることとなり、お紅と清次の関係性にも変化が――。
<登場人物>
“清次(せいじ)”CV:榎木淳弥
義姉のお紅と共に「出雲屋」を取り仕切る若き主人で、お紅の叔父で「出雲屋」の先代主人が知人から引き取った養子です。意外にも人情家の一面がありますが、頭の回転も速くて謎解きの才能も持ち合わせており、「つくもがみ」たちの力を借りて事件を解決に導きます。但し、押しが弱くて優しすぎる点から、店の品物で一癖も二癖もある「つくもがみ」の面々からは、揶揄われることも屡々(しばしば)です。そして、義理の姉であるお紅に儚い想いを寄せていますが、なかなか具体的な行動には及びません‥‥。
“お紅(おこう)”CV:小松未可子
義理の弟の清次と二人で「出雲屋」を切り盛りする看板娘。器量良しのしっかり者で、老若男女を問わず周囲から人気があります。本来は日本橋の古道具屋「小玉屋」の一人娘でしたが、火事で父親の久兵衛を亡くした後、親戚の「出雲屋」に引き取られました。清次に対しては必要以上に厳しいところもありますが、実際は清次に強い親愛の情を持ち、悉く頼りにしています。しかし失踪したかつての想い人・佐太郎と彼が紛失した香炉「蘇芳(すおう)」の行方を常に探しており、未だに佐太郎のことが気になっている様子。尚、ネタバレ的ですが、後々に清次の妻となります。
“佐太郎(さたろう)”CV:櫻井孝宏
豪商である唐物屋「飯田屋」の跡取り息子で、容姿端麗で気立ての良い若旦那。かつてお紅に求婚までしたにも関わらず、ある日突然、行方不明となります。ちなみに、「小玉屋」が火事に巻き込まれた直後、大切な香炉「蘇芳」を紛失してしまうのですが‥‥。
<付喪神たち>
“野鉄”CV:奈良徹は、蝙蝠の形をした古い根付けで、蝙蝠だけに空を飛べます。いつも文句タラタラですが情報収集力は抜群、意外にも草餅が好物。
“五位(ごい)”CV:平川大輔は、雁首に鷺の絵が描かれた粋な煙管で、「つくもがみ」たちの中でも特に落ち着いた性格のリーダー格。
“猫神(ねこがみ)”は、大坂から江戸に流れてきた根付けで、佐太郎の行方の手がかりを知っている様子。
“うさぎ”CV:井口裕香は、好奇心旺盛な明るいキャラクターで、情報収集が得意な櫛の「つくもがみ」です。
“月見夜(つくよみ)”CV:仲野裕は、月が描かれた掛け軸。店にある「つくもがみ」では一番気位が高く、無礼者を許さない性格で、周りも手を焼いています。
“利休鼠(りきゅうねずみ)”CV:井口祐一は、鼠(ネズミ)の形をした根付。蜂屋家の跡取りの印である貴重品です。
“裏葉柳(うらはやなぎ)”は、病死した後も恋人が忘れられず、青磁の香炉に変身した男の「つくもがみ」です。
“黄君(おうくん)”は、琥珀の帯留め。お紅の生家「小玉屋」にいた為に、お紅のことをよく知っています。
“お姫”CV:明坂聡美は、豪華で贅沢な作りの姫様人形で、お喋り好きで耳年増な面食い姫様。
“唐草(からくさ)”は、金唐革でできた財布。「つくもがみ」になってからまだ日が浅い新人。
“青海波(せいかいは)”は、お紅が祖母から譲り受けた守り袋で、お紅の過去や佐太郎との関係を詳しく知っています。
ちなみに、原作者の畠中恵さんはインタビューに答えて、
(登場する)品物に関しては、百年以上経ったあとも残る、凝った美しい形状のもの、という基準で選びました。名前は、描かれている絵や形にちなんでいます。ちなみに、キャラクターの性格は細々考えたといより、書いていくうちにそれぞれが自己主張してできた感じですね(笑)。
と話しています。
ところで、最後にほんの小さな愚痴を言わせてもらうと、アニメ第1話を観た感想としては時代考証が少々、甘いのではないかと‥‥。
第1話に登場する武士・勝三郎が佐久間家の次男坊として、小袖に黒の縮緬羽織を羽織って袴をつけ、大小の二刀を腰に手挟(たばさ)んでいる姿は充分に合格ですが、自家(佐久間家)が禄高200石であるとの情報とこの姿形から、初めは町奉行所の与力職の者かと思いました。しかし自ら某大名家の家臣(つまり陪臣)で大名屋敷内の長屋に居住している、と述べています。にも拘わらず実家は立派な薬医門を有した屋敷で、なんと「佐久間邸」との表札が掲げられていました。この屋敷が何処に建てられているのかは不明ですが、国元が地方にある大名家/藩であれば、家禄200石の決して大身ではない佐久間家の当主である勝三郎の兄(や隠居の父)も、江戸詰め(常在)の立場であったら大名屋敷内(下屋敷や添屋敷などかも知れないが)の拝領屋敷に居住しているのでは、と考えられるのですが‥‥。
また彼(勝三郎)は自身の婿入先(蜂屋家、但し同じ大名家内の武家とは限らない)が家禄450石と称していましたから、屋敷の門構えが家格に合った長屋門であることは間違いではないのですが、門前にて提灯状のものを掲げたり家名を示すこと等は奇異であり、更に当時、武家諸法度で屋敷の華美な造りは禁じられていましたから、両家共に家門周辺のあの様な妙な装飾はあり得ませんし、それ以上に通常、武家屋敷には表札の類はなく、ましてや提灯での家名の掲示などは考えられません。
さてこのアニメ、江戸時代が舞台ではありますが、全体的に彩が鮮やかで色彩が美しいのは良いのですが、しかしこれも良く考えると明る過ぎるのでは、またあり得ない色使いでは、と感じてしまいます。そして正直に申し上げると、主人公たちの髪型も頂けない。清次の散切り頭に、お紅の謎の髪型(黒柳徹子さんカット!?)にはびっくりです(笑)!!
-終-
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