【今日の気になる言葉】撃ち方止め!! 〈1129JKI007〉

特に重要な意味も無く、日常において何となく気になった言葉について考えてみよう、という記事が【今日の気になる言葉】。今回のテーマは先日観た海外ドラマの中で、主人公の警官が発した「撃ち方止め!」の英語表現から始めて、周辺の類義語に触れてみようと思う‥‥。

 

味方の発砲を止める命令に関しては、TVドラマ『コンバット!』でよく聞いた英語の用法に「Cease fire!」があった。サンダース軍曹(たまにヘンリー少尉)が敵のドイツ軍部隊を制圧した直後に、この言葉を大きな声で叫ぶ。

つまり「Cease fire!」とは休戦や停戦を表し、戦闘行為においては「撃ち方止め!」の号令なのだが、cease【síːs】は、止まる・終わる・停止するという意味の動詞で、Cease fireで銃火器や砲の発射・発砲を止める事となる。

ちなみに英語圏のネイティブスピーカーに聞くと、この言葉はちょっと古臭い言葉遣いであり、公的で堅苦しい感じがすると云う。軍隊や警察用語だから堅い云い回しが使われたのだろうが、最近ではあまり使用されない言い方なのだろうか‥‥?

また同じ様な意味には、「Don’t shoot!」=「撃つな!」や「Stop firing」=「射撃中止」がある。また一時的に射撃を停止させる場合は、「Check fire」とか「Hold fire」という言葉が使われるが、アメリカの戦争映画や警察ドラマでは「Hold your fire!」=「撃ち方待て!」といった表現がよく出てくる様に思う。

逆に、射撃を開始する場合は、単純に「Fire!」=「撃て!」・「発射!」とか、「Open fire」や「Commence fire」(commenceは、開始するという意味の動詞)が射撃開始の合図として「撃ち方始め」を意味する。だが、敵の銃撃に応戦する場合は「Return fire!」と言う場合もある様だ。

尚、「撃ち続けろ」は「Keep shooting」となり、援護射撃は「covering fire」、制圧射撃は「Suppressing」と云う。

 

各語の使い分けのニュアンスまでは理解出来ないが、同じ英(米)語でも時代変遷や英米/地域の違い等、何らかの理由があってのことかも知れない‥‥。軍隊においても、陸海空では微妙に言い回しが異なる事もあると云うし、将校と下士官・兵では言葉の使い方も隔たりがあるとされる。

ある意味、一種の業界用語だから、英語に堪能な人でもあまり知らない言葉の使い方だったりするのだが、事前にその意味を知っておくと、字幕や原語オンリーで愉しむ際の理解度が増すと云うものである。

-終-

【余談-1】“コンバット”あるある話を幾つか開陳すると、ヘンリーは最初は一等軍曹で、ノルマンディー上陸後に少尉に昇進する。この段階での彼は真面目一方な性格ではなく、女性とイチャつく軟派な一面を持つ人物として描かれている。一方、三等軍曹のサンダースは歴戦のベテラン兵士で、従軍経験のないヘンリーに対してはタメ口で話し、結構なチャラ男でもあった。まだシリーズにおける性格設定が確立されていないことが理由とは思うが、後の二人の性格や言動とはギャップ・意外性があって面白い。

また彼らが所属する部隊(第361歩兵連隊第3大隊)の呼び出し符牒は、原則としてチェス用語に関連したものであり、ヘンリーが率いるK中隊の第2小隊は“チェックメイト・キングツー”である。サンダースの分隊は“ホワイトルーク(White Rook)”(白の「城」)であり“ホワイトロック(White Rock)”(白い「岩」)ではないが、日本版放送では初期の頃に誤って“ホワイトロック”と吹き替えられていた。

更にサンダース役のヴィック・モロー(Vic Morrow/本名はVictor Morozoffの“ヴィック”はヴィクターの略で、“ビッグ”(大きい)ではないが、当初、多くの日本人が吹き替えを聞いて、ビッグ(big)だと思っていたそうだ。しかし実際のモローの身長は180cmと欧米人としてはさして長身でもないから、「凄いヤツ」といった感じで“ビッグ”と受け止めたのだろう‥‥。

【余談-2】自民党の総裁選挙などで、同じ党内で一つのポストを巡って競い合う場合は多い。しかし選挙が終わると、党内から「これでノーサイドだ」とか「撃ち方止め」とかの発言がよく聞かれる。争いを収めて一致団結しようとの意味だろうが、何となく白々しい。

 

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