目指すぞ全国制覇!日本の鉄道博物館訪問シリーズ 第1回 小樽市総合博物館 〈17/38TFU03〉

最近は昭和の時代を走ってきた鉄道車両たちの引退が続々と進み、さらには平成生まれの
車輛たちにも廃車の足音が近づいています。子供の頃に見た特急車両や、修学旅行で乗ったあの電車。夢を乗せて夜通し走っていた機関車や客車など、記憶の彼方に去ろうとしています。その一方で、鉄道車両を保存するための博物館も、全国には存在します。
そんな鉄道に関する博物館を北から南から、訪ね歩いてみたいと思います。シリーズの第1回は北海道の小樽市にある「小樽市総合博物館」。記事の最後には、筆者の勝手な評価ランクもつけてお届けします!(訪問日:2018年4月)

転車台と機関庫、左が明治41年竣工の1号で右が明治18年の3号。3号は国内最古の機関庫で国の重文指定。

小樽市総合博物館は、平成19年7月、旧小樽交通記念館に小樽市博物館と市の青少年科学技術館の機能を統合し、開館しました。場所は小樽駅からバスで海のほうに10分ほど向かった手宮の地にあります。その場所は明治13年(1880)11月に開通した「幌内鉄道」の起点でもある旧手宮駅構内で、当時から国鉄時代にかけての機関車庫、転車台、国鉄車両等が保存されています。保存されている鉄道車両は数多く、鉄道遺産といえる施設もあり、鉄道王国だった頃を振り返ることができます。

入場後に屋内の建物で最初に現れるのが、SL「しづか号」。磨き上げられたピカピカの車体が美しいです。
しづか号は1884(明治17)年にアメリカで製造され、その翌年から幌内鉄道で活躍。北海道の近代化を支えた、日本を代表的する機関車です。その経歴は、
1889年 北海道炭鉱鉄道
1906年 鉄道作業局
1912年前半 北海道建設事務所
1917年  室蘭製綱所(日本製綱)に払い下げ
1919年 サドルタンク化
1951年 国鉄へ寄贈
そして準鉄道記念物指定: 1963年10月14日
鉄道記念物指定: 2010年10月14日 といった長い長い経歴です。
展示状態もやはり別格の扱い、といった印象です。

そして後ろにつながれた一等客車、「い1号」。車内に入れるので、豪華な内装も見学できるのがうれしいところ。製造は1893年5月 ここ手宮工場で誕生し、北海道炭鉱鉄道 い1として活躍した後、
1906年国有化、1919年10月1日2等車に格下げ。
1928年に定山渓鉄道に寄贈、1963年国鉄に戻されました。
準鉄道記念物指定は1963年10月14日  鉄道記念物指定は2010年10月14日でした。

屋外の機関車庫にも行ってみるとします。ここにも貴重な車両が保管されています。たとえば、1895(明治28)年に手宮工場で造られたSL「大勝号」、これは現存する最も古い国産SLです。しづか号などを手本に、日本人の技術で製造されたそうです。

さて、ここからは展示車両の中から、筆者が注目した保存車両の様子と過去の経歴をそれぞれ追ってみましょう。

ラッセル式除雪DLのDD15 37です。メインゲートの近く、最も北側に展示されています。もうひとつはDD14 323です。こちらは雪を掻き集めて跳ね飛ばすロータリー式。他に、ラッセル式除雪車キ100形のキ270とキ550形のキ1567があります。いずれも北海道の鉄道を語る上では、欠かせない車両ばかりです。

キハ03 1   

昭和29年登場のキハ01の改良版キハ02をスノープロウや二重窓を備えて北海道向けとして昭和31年から製造されたもので、国鉄時代のレールバス国内唯一の現存車です。
運転台との仕切りやトイレも無い簡素な造りで、まさにバスのようです。運転方法はそれこそ自動車のように、クラッチやシフトレバーの操作が必要な上、総括制御は出来ないので、連結運転時は各車に運転士が乗務します。
北海道内では根北線や興浜北線など赤字線で主に運用されましたが、活躍期間は10年程度と短かったそうです。2010年10月14日にJR北海道により準鉄道記念物に指定されました。

キ752とキ718

機関庫の間に展示されています。
ジョルダン式と呼ばれる駅や停車場内用除雪車で、大正15年に米国ジョルダン社から輸入された2両を参考に国内で量産されたものです。キ718は圧縮空気で雪かき翼を開閉する従来形で巨大な空気ダメがあるのに対して、キ752は雪かき翼の油圧駆動化した改造車で、同じ形式ながら外観は大きく異なります。

つづいて、本館建屋前に行ってみましょう。ホームを模した展示場に、北海道を走った懐かしい車両たちが並んでいます。

キハ82 1 キシ80 34 

キハ82は国内初の特急型気動車キハ80系列の貫通型先頭車、キシ80はそれまでのキサシ80に代ってエンジン付きとした食堂車で、どちらも昭和36年登場。2010年10月14日にJR北海道により「キハ82 1号気動車」として準鉄道記念物に指定されました。

C55 50

C55型機関車は流線形に改造されたものがありましたが、同機も流線形からの改造車です。運転台の屋根の形に唯一名残があります。両側にホームがあるので、下回りを見ることはできません。C55の魅力である大型のスポーク動輪が見えないので、残念です。ただ、ボイラー下をのぞきこめば腐食、サビなどが目立ち心配な状態です。製造は1937年、新製配備は仙台、1947年に青森に移動、1949年 会津若松、北海道に移動は1950年 旭川。廃車は1974年です。

マニ30 2012

なんと日銀(日本銀行)所有の現金輸送車
国鉄民営化後はJR貨物に車籍があり、この2012号は隅田川駅に常駐していたラストナンバー車です。現役時代は存在そのものが秘匿され、幻の車輛でした(画像左)。
窓のほとんどない、独自のスタイル。車体中央が日銀職員用の控室で前後に荷物室があります。荷物室はおろか車掌室にまで監視カメラが設置がありました。現金輸送という特殊な運用にあっては車掌ですら監視の対象であったのです。

ED76 509
北海道で初めて本格投入された電気機関車です。普通列車の電車化で用途が減少して平成6年には青函トンネル用に改造されていた1両を残して全廃。製造は1968年でしたが、廃車は1986年と短命でした。

スユニ50 501
スユニ50は車体は新製ながら、台車や連結器などは旧型客車から流用した郵便荷物合造車で昭和56年に落成した車両です。郵便・荷物輸送の廃止で多くが廃車となりました。
展示車の車内は仕分け作業の様子が再現されており、宛名が書かれた封書や郵政職員の制服を着た2体のマネキンが置かれています。

DE10 503
昭和43年から造られた暖房用蒸機発生装置(SG)を持たない入換用の機関車です。ここではDE10を先頭に小貨物列車が再現されており、奥からワム82506、セキ7342、トラ57964、ホキ2226という編成。製造は1968年、函館に配置されてから五稜郭、釧路、苫小牧、鷲別と移動し、1986年に廃車となりました。

DD51 615
前照灯上のスピーカーは構内での誘導員への連絡用で、北海道独特のものです。製造は1968年、新製配置は長野でしたが、その後北海道に来て、1986年小樽築港で廃車となりました。

オエ61 309
昭和9年製のオロ35を起源とし、格下げを経て荷物車化、さらにマニ50の登場によって余剰となり救援車に改造されたものです。
オエ61は救援車という車両で、鉄道事故の復旧のために現地へ派遣される車両です。この車両は作業員の移送用と控室であったようで、長期間の作業に備えてベッドにもなる長椅子や炊事の設備があります。

スエ78 5 
第二次大戦で被災した車両を戦後の混乱期に資材を節約しながら車体を復旧した、いわゆる「戦災復旧車」です。この車両は二等寝台車マロネ37をオハ77 20として復旧、以後郵便荷物合造車を経て救援車に改造されたものです。台車は3軸ボギー車。

操重車ソ34

操重車は脱線事故の復旧用にクレーンと回転式キャブを持つ車両です。迫力満点。

C12 6
製造は1933年3月7日、当初は名古屋に配置され活躍した後、1941年には函館、
1949年標茶、1961年小樽そして廃車は1973年4月 小樽築港でした。
保存開始は1976年9月1日からです。ナンバープレートの輝きもなく、展示もはずれのほうだったので、ひっそりと佇んでいました。

キシ80 12

座席や厨房設備などは撤去されているようです。それにしても、塗装もボロボロ。ガラスも汚れて車内もよく見えません。

キハ22 56
国鉄時代の北海道を代表する気動車で、道内各地に保存されていますが、この博物館ではこの1両のみが置かれています。

ED75 501
北海道交流電化用試作機で、ED75では唯一北海道へ投入された車両です。高圧機器の車内への収納によって屋根がすっきりして全長も異なるなど、他のED75とは異なる点の多い車両です。製造は1966年、新製配置は札幌、その後も岩見沢で廃車まで活躍し、1986年廃車。準鉄道記念物に2010年10月14日 JR北海道で指定されました。

キハユニ25 1
キハ20系シリーズの寒冷地向け郵便荷物合造車で、昭和33年の製造。運転室、次いで荷物室、郵便室、客室という構造で、デッキや二重窓が装備されていないので、北海道で使用するには少々難がある構造ですが、松前線などで時々みかけました。

キハ56 23、キロ26 107、キハ27 11

内地向けのキハ58系を北海道向けとした急行列車の編成車両です。昭和50~60年代の急行全盛期はこのようなスタイルの急行が、北海道を縦横に走っていたものです。

DD16 17
DE10やDD13が入線できない簡易線向けで、DE10をさらに短くしたような外観の4軸の機関車。ローカル線の貨物列車や貨物ヤード廃止によって国鉄時代にほとんどが廃車となってしまいました。

 

【講評】一般型の車輛や事業用車なども多く保存され、コアなファンも楽しめるかもしれません。また、屋外の展示場内もゆったりとしており、かつての手宮駅の構内も彷彿とさせます。
しかし全体的に車両の腐食や退色が激しくせっかくの貴重な車両がみすぼらしい姿になっています。ボランティアの皆さんの手によって順次補修が行われていますが、対応に回り切れないという印象です。私が見学した日も、芝生の養生だけで大変そうでした。
管理方法もボランティアに頼るばかりでなく、予算化して専門業者を入れて計画的に補修をしていく、そして展示車両を覆う上屋を設置するなど、根本的な対策が必要であると感じます。
古き良き北海道をテーマパークとするように、なにか他の商業施設と結び付けて、「生活の中の鉄道」を謳ってみてはどうかな、と感じました。

【勝手に採点】  ※ 満点は☆が5つ
行きやすさ                ☆☆☆
車両の見やすさ              ☆☆☆
保存状態                 ☆
貴重な車両の多さ             ☆☆☆
鉄道知らない人でも楽しめる度       ☆
また行ってみたい度            ☆☆

【料金】  2019年6月現在
中学生以下無料
本館:一般400円(冬期300円)、
高校生・市内在住の70歳以上の方200円(冬期150円)
※11月上旬から4月下旬までの期間は冬期料金です。この期間は展示の一部が見学できません。具体的な期間はお問い合わせください。

【交通】小樽駅前のバスターミナル3番のりばから、高島3丁目経由小樽水族館行き(系統番号10番)に乗車。「総合博物館」で下車。所要時間約10分。

 

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