日本の鉄道博物館訪問シリーズ 第12回  19世紀ホール〈17/38TFU03〉

今回の鉄道博物館は京都府のトロッコ嵯峨駅内にある「19世紀ホール」をご紹介します。
「鉄道博物館」と名乗っているわけではありませんが、蒸気機関車が4.5両(なぜ0.5という半端な数字なのかは、後述します)も保存展示されており、りっぱな鉄道記念館といえるでしょう。それでは、さっそく紹介していきます。(写真はすべて筆者撮影。2019年7月訪問)

19世紀ホールはJR京都駅からJR嵯峨嵐山駅までJR嵯峨野線で約15分です。駅と直結しています。この駅は嵯峨野観光鉄道の駅でもあり、多くの観光客が下車します。そもそも嵯峨野観光鉄道は、JR山陰線の複線化によって使われなくなった線路の観光利用を目的として、1990年発足しました。もともとこの保津川渓谷沿いのルートは、渓流や奇岩など自然の創りだす素晴らしい景観を車窓から楽しめる路線として、全国の鉄道の中でも名所でした。廃線後しばらくは放置されていたため、レールは錆び、枕木は腐り、路肩は崩れて草が生い茂るという荒れ放題だったようです。そこからわずか数名のスタッフを中心に整備され、今では観光用のトロッコ列車に多くの観光客が訪れます。
ホームや待合室には、特に海外からの観光客でごった返し、まるで海外の空港のようでした。
その脇に「19世紀ホール」の入り口がありますが、ここまで流れてくる客は(特に外国人は)皆無でした。
ホールの入口にはSLの動輪を使ったモニュメントとともに、D51ナメクジ型の実機が展示されています。

D51 51

製造は1937年。配置は福知山の期間が長く、この地ともゆかりのある機関車です。
1968年には吹田第一に移動。廃車は1971年でした。「ナメクジ」型の機関車です。
2004年までは大阪府枚方市の「くずはモール」で30年余り語損されていました。
展示に当たって各部を磨き出しの上、塗装されています。しかし屋外で、京都・嵐山の気候を考えればこの状態を維持するのはかなり大変な気がします。実際、錆や水垢汚れなど目立ちます。配管がない箇所もありました。デッキによじ登ったりして、マナーの悪い観光客が粗末に扱っていました。今後も心配です。

館内への入場は無料。機関車の前に、カフェスペースにはイスやテーブルが並び、音楽芸術発展の一翼となったピアノやオルガンの展示もされています。天井からは大きなシャンデリアも飾られているので、鉄道博物館というより、ホテルのロビーのような雰囲気です。
ちなみに展示されているのはベーゼンドルファー・インペリアルモデルのグランドピアノです。

C56 98

製造は1937年。使用開始は同年、北海道の岩見沢からでした。その後も、静内、苗穂と道内を移動し、新潟に移動、1971年には九州の吉松、その後は山陰の浜田に移動し、
1973年に廃車となりました。室内保存のためボディーも足回りも良好な状態を保っています。ヘッドマークの「はと」は似合わないです。縁もゆかりもないですからね。どうせなら、山陰の急行「ちどり」号のヘッドマークを複製し、つけてもらえればと思いました。

C58 48

製造は1938年。広島局に配置され、1941年には九州の直方、1949年に豊後森。
1956年には正明市に移動。1961年には厚狭。そしてSLの時代も終焉をむかえそうな1972年には釧路に移動しました。廃車は1974年です。つらら切りや切り詰めされたデフなど北海道型のスタイルのまま、保存されています。こちらもヘッドマークはいらないのでは?と思います。まったく不釣り合い。北海道型の迫力を打ち消してしまっています。

D51 603《前頭部のみ》

製造は1941年。新製配置は宇都宮でした。その後、1944年に高崎、1945年柳井,
1946年 岡山、1950年 姫路、1955年 敦賀、 1956年 金沢、1962年 稲沢第一と
数多く移動をしています。そして1964年 北海道の滝川へ。
最終の運用は1975年12月24日 夕張線5794列車でした。
そして廃車は1976年 追分。
国鉄最後の工場出場車であり、保存予定でしたが、1976年4月未明に起きた追分機関区火災で焼損後に解体されました。しかしながらその一部は誰にも知られず、SL収集家のもとで保存され、2002年11月に突如として人前に現われたのです。奇跡のようなドラマチックな機関車です。切断された位置が煙室より後ろのため、大煙管、小煙管、過熱管の仕組みがわかります。(ちょっと痛々しいですが・・)

阿波鉄道ア4形7号

製造は1921年 コッペル製。阿波鉄道4形7号として配置され、
1933年に国有化されて「ア4形7号」機関車となりました。
その後は岡山機関区で入換用として活躍し、1936年に廃車されました。
1939年に鷹取工場養成所生徒実習用の見習機関車「若鷹号」に改造された上、保存されました。

【講評】保存展示されている機関車は以上です。運転室内には入れませんが、間近で状態の良い機関車が見られます。喫茶スペースではお手頃な値段んで飲食できるので、コーヒーを味わいながら機関車をゆっくり眺める、なんていう贅沢な時間も過ごせます。強いて言えば、照明の色がなんとかならないでしょうか。黄色が強すぎて長く見ていると機関車がベターっと見えてしまいます。また、無料でなくてもいいです。その代わり、人を配置して、運転室を見せたり、屋根上を見せてあげたりすればもっと活性化するのではないでしょうか。D51 51も早急に屋内に移動させてほしいです。嵯峨野という京都観光のメッカでもあるので、もっと多くの人が訪れてほしいです。京都鉄道博物館の分館的な位置づけにしてももいいかもしれません。

【勝手に採点】  ※ 満点は☆が5つ
行きやすさ                 ☆☆☆☆
車両の見やすさ               ☆☆☆
保存状態                  ☆☆☆
貴重な車両の多さ              ☆☆
鉄道知らない人でも楽しめる度        ☆☆
また行ってみたい度             ☆☆

【開館時間】

開館時間:8:30~17:00
入館料: 無料
休館日:毎週水曜日

 

 

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