【警察小説名作選】「ギデオン警視」シリーズ 〈4169JKI00〉

1950年代より書き継がれた名作警察小説シリーズ「ギデオン警視」ものをご紹介。現在読み返してみると流石に古めかしさを感じますが、近代警察小説の礎的な作品です‥‥。

さて、「ギデオン警視」シリーズの作者のJ・J・マリック(J.J.Marric)は、本名をジョン・クリーシー(John Creasey MBE、1908年 ~ 1973年6月9日)という英国の推理小説家で、英国推理作家協会(CWA)の創設者の一人です。

彼は英国のサリー州サウスフィールズ出身で、ロンドンのスローン・スクール卒。1953年に英国推理作家協会(CWA)を設立してその初代会長に就任しました。28(24とも)もの異なるペンネームを使い分けて、作家家業をはじめて以来約40年で凡そ600作以上の小説を書いたとされる大変な多作家ですが、彼の作品は世界中で翻訳されており、総計6,000万部以上も発行/販売されました。ちなみに、女性名義での恋愛小説も多数刊行しています。

また、CWAの最優秀処女長編賞は、クリーシーの功績を讃えて彼の本名を冠して“ジョン・クリーシー記念賞”と名付けられています。更にクリーシーは、1966から67年にかけては米国探偵作家クラブ(MWA)の会長にも就いています。

さて、そんな彼の最も有名なミステリ作品が「ギデオン警視」シリーズですが、その概要は毎回、日常生活の出来事に思い悩むごく普通の中年男であるスコットランドヤード犯罪捜査部長ギデオン警視が、上司と部下の板挟みにあいながら難事件を解決に導く様子を描いています。

そしてこの一連の作品群は、大都会ロンドンで日夜発生する果てしない犯罪の数々と命を賭して戦う警察官たちの日々の捜査活動と哀歓を描いた今日の警察小説の原形とも云える小説シリーズであり、また複数の事件が同時並行的に発生・進行するという所謂 “モジュラー型”と呼ばれる近代警察小説の基礎を形造ったモデル作品と云われています。この為、本作以降に発表されたエド・マクベインの87分署シリーズを始めとする多くの警察小説に大きな影響を与えたとされています。

比較的、探偵(個人プレー)型捜査官を主人公に据えた作品が多い英国のミステリには珍しい、組織捜査型の警察小説の先駆けであり、且つ、いまなお同類の代表作と云えるシリーズなのです。尚、1956年の『ギデオン警視の一週間』で、英国推理作家協会(CWA) シルヴァー・ダガー賞を、1962年には『ギデオンと放火魔』で米国探偵作家クラブ(MWA) 最優秀長編(エドガー)賞を受賞しています。

 

邦訳ありの「ギデオン警視」シリーズ・リスト

・『ギデオンの一日(Gideon’s Day)』(1955年)邦訳:早川書房。1958年にジョン・フォード監督で映画化
・『ギデオンの一週間(Gideon’s Week)』(1956年)邦訳:東京創元社。
・『ギデオンの夜(Gideon’s Night)』(1957年)邦訳:東京創元社。
・『ギデオンの1ヵ月(Gideon’s Month)』(1958年)邦訳:東京創元社。
・『ギデオン警視と部下たち(Gideon’s Staff)』(1958年)邦訳:早川書房。
・『ギデオン警視の危ない橋(Gideon’s Risk)』(1960年)邦訳:東京創元社。
・『ギデオンの戦い(Gideon’s War)』(1962年)邦訳:EQMM 1965年7月号。
・『ギデオンと放火魔(Gideon’s Fire)』邦訳:早川書房。
・『ギデオンと暗殺者(Gideon’s March)』邦訳:早川書房。

 

他に『ギデオンと焼栗売り』、『ギデオンとヴィンテージカー泥棒』、『ギデオンと公園荒し』などが早川ミステリマガジンに翻訳掲載されている様です。

その他の未訳作品として、
Gideon’s Ride(1963年)、Gideon’s Vote(1964年)、Gideon’s Lot(1965年)、Gideon’s Badge(1966年)、Gideon’s Wrath(1967年)、Gideon’s River(1968年)、Gideon’s Power(1969年)、Gideon’s Sport(1970年)、Gideon’s Art(1971年)、Gideon’s Men(1972年)、Gideon’s Press(1973年)、Gideon’s Fog(1975年)

ジョン・クリーシー名義
Gideon’s Drive(1976年)などがあります。

※記憶違いで誤記などがありましたら、何卒、ご容赦ください。

-終-

投稿者: 准将

何にでも好奇心旺盛なオジサン。本来の職業はビジネス・コンサルとマーケッター。興味・関心のある分野は『歴史』、中でも『近・現代史』と『軍事史』が専門だ。またエンタメ系のコンテンツ(音楽・映画・ゲーム・マンガなど)には仕事の関係で随分と係わってきた。今後のライフワークとして儒学、特に陽明学を研究する予定である。kijidasu! 認定投稿者第一号でもある。