「芝居蒟蒻芋南瓜 (しばい・こんにゃく・いも・かぼちゃ)」、この言葉は江戸時代に「女性の好きな物」を語呂が良いように並べたことから。
その典拠は、井原西鶴の作品中の「とかく女の好むもの芝居浄瑠璃芋蛸南京」という言葉だとか、落語の『親子茶屋』/『狸の賽』の中の「女の好きなもんはちゅうたら、芝居、こんにゃく、いも、タコ、南瓜、とこない言うた、こらみな安い」からとか。同じ江戸時代の川柳に「この世女の好むもの 芝居 浄瑠璃 いも たこ なんきん」もあり、「芋蛸南瓜(いも・たこ・なんきん)」は同じ意味となりました。
こうして結局は江戸時代の慣用句として、『芝居蒟蒻芋南瓜』が定着します。また「いも・くり・なんきん」とも聞いたことがありますが、「いも・たこ・なんきん」が正しい言葉の様です。
尚、現在では「芋」というと一般的に「薩摩芋(サツマイモ)」を指しますが、この場合の「芋」とは「里芋(サトイモ)」を指していたらしいとの説もあります。これは年代によって違うのかも知れませんが、どちらにしても砂糖が高価だった江戸時代には、芋や南瓜といった安価で甘味のある野菜が、女性には大変人気があったのでしょう!
ちなみに「いも、たこ、なんきん」は、里芋・蛸・南瓜(かぼちゃ)を同じ器に盛り合わせた煮物(たき合わせ)や前菜盛りに使う献立名ともなっており、粋な料理人の遊び心から、夏の料理や献立名に多く使われています。
続いて「巨人・大鵬・卵焼き」ですが、これは戦後昭和期の流行語です。「子ども(を含めた大衆)に人気のある物」の代名詞として造られた言葉です。
其々は、プロ野球の巨人軍(読売ジャイアンツ)と、大相撲の横綱・大鵬、そして料理の卵焼きを並べたもの。
この言葉の生みの親は、作家で後に経済企画庁長官も務めた堺屋太一さんとされています。堺屋さんが通商産業省(現在の経済産業省)の官僚だった頃に、1961年(昭和36年)度の経済報告の記者会見の席で「子供たちはみんな、巨人、大鵬、卵(玉子)焼きが好き」と述べ、これが報道を通して広まりました。元々は若手官僚の間で、強い巨人軍や大鵬、物価の優等生と呼ばれた鶏卵が「時代の象徴」だと冗談で話していたことが底流にあったとされています。
他にも、「大洋・柏戸・水割り」&「西鉄・柏戸・ふぐちり」というのもありました。「巨人・大鵬・卵焼き」が「子どもが好きなもの」の代名詞として使われたのに対し、「大人(特に男性)が好きなもの」を指す対語として挙げられていました。
これに反して「江川・ピーマン・北の湖」という言葉もあり、1970年代後半(昭和50年代前半)に「嫌われもの」の代名詞として揶揄的に使われました。
また「おしん・家康・隆の里」は、1983年(昭和58年)の流行語。この年に放送された連続テレビ小説の主人公・おしん、大河ドラマの主役となった徳川家康、糖尿病を患いながらも30歳にして横綱へと昇進した隆の里を「辛抱する人の代表」として並び称した言葉です。
最後が「西武・千代の富士・ハンバーグ」で、1980年代に西武ライオンズの黄金時代と昭和60年代のバブル期に活躍した大横綱の千代の富士の全盛期が重なった事から、これも並び讃えた言葉でした。
〈終〉
《スポンサードリンク》