『四畳半神話大系』とは、2005年に刊行された森見登美彦さんの小説です。2010年4月より『ノイタミナ』枠にてTVアニメが放送されて、その独特の世界観が好評でした。
放映後に、あまりにも多くのアニメファンから評価が高いことに反発した、“アンチ『四畳半』”派が台頭したという作品でもあります!!
現在、そのアニメ『四畳半神話大系』のBlu-ray BOXが予約受付中(発売予定日は2014年6月18日)とのことで、この機会に同作品を改めて紹介します・・・。
2010年4月から7月にかけて、フジテレビ「ノイタミナ」枠にて放映されたTVアニメ『四畳半神話大系』は、『太陽の塔』で第15回日本ファンタジーノベル大賞を、『夜は短し歩けよ乙女』では山本周五郎賞を受賞した森見登美彦さんの同名小説が原作のアニメです。
アニメ化にあたり、キャラクター原案はイラストレーターの中村佑介さん、脚本は上田誠さんが担当しました。そして、『マインド・ゲーム』などでの個性的な作品作りで知られる湯浅政明さんが監督で、湯浅監督にとっても小説作品のアニメ化は本作が初めてでした。
四畳半の風呂なしアパートに住む大学三回生の主人公「私」は、無意味で無意義な二年間を過ごしてきたと思っています。“黒髪の乙女との薔薇色のキャンパスライフを夢見ていた”のに、現実にはその様なことは起きませんでした・・・そんな「私」は、その無意味な生活の原因を他人のせいにして、もっと素晴らしい人生があったのではなかろうかと悩む内に、特異な「四畳半」パラレルワールド(並行世界)に迷い込み、物語はその不毛で愚行に彩られた摩訶不思議な大学生活を描いていきます。
本作は基本的には各1話毎完結の物語です。「私」の不毛な大学生活がパラレルワールドとして、各話で展開されます。そのパラレルワールド(並行世界)は、大学入学時に「私」が入部したサークルに応じて、それぞれ異なる状況で展開していきます。ある回ではテニスサークルへ、またある回ではヒーローショー同好会へと入部、更に別の回ではどこのサークルにも入部しないパターンと、いろいろな大学生活の様子が描かれますが、結局はみな同じ無意味な顛末になります。この様な大学生活を送ったことに関して「私」は、“実益のあることなど何一つしていない”と断言し、結果的に自らのキャンパスライフを振り返り、煩悶と反省するだけの三回生となっています・・・。
しかしそれらの展開が、巧みに伏線回収されて最終2話で一つの結末に見事に収斂されているところに、この作品の驚きと構成の妙があるといえましょう。
主人公が非日常の世界へと旅立って、その世界で幾多の困難を乗り越えて成長を遂げた後に日常世界へと回帰する物語は多くありますが、この作品もその類型の一つでしょう。
つまり、この作品は“青い鳥”的幸福論のお話なのですが、この物語の「私」も、それまでの生活を否定してばかりで、あれも違う、これも違う、と理想のキャンパスライフを追い求めるばかりでした。ところが、「四畳半」並行世界での色々な体験を得たことで、本来のごく普通の日常生活にひそむ楽しさや自身の恵まれた境遇のことを理解し再発見できるようになります。
結局は、普通の大学生活こそが実は感じ方次第では薔薇色の大学生活なのだ、という大切なことを教えてくれる作品でもあり、主人公の「私」が自分自身としっかりと向き合った時にこそ始めて本当に大事なものが見えてきた、という物語でもあります。
原作は独立した4話から構成されていますが、TVアニメは全11話であるため、小説のイメージや設定を活かしつつ、各話のエピソードや構成を組み替えて、10パターンの並行世界の物語に組み替えられました。ややもするとこの変更のために、序盤での多少の解り難さと、中盤での展開をモタツキ感と感じる人がいるかも知れません。少々馴染みにくい独特の世界観とこのモタツキ感故に、TVアニメ『四畳半神話大系』に対する評価は分かれている様です。
しかし、中盤までで脱落してしまわずに頑張って見続けてほしいのです。それは、そこまでの内容が、多くの伏線として終盤に意味を持つ構成となっているからです。
多くの個性的なキャラクラーの登場人物や主人公「私」の“昭和の文豪”のような語り口など、少々癖のある原作を巧みに表現し再構成した脚本は素晴らしいと思います。そして、各々の「四畳半」並行世界のすべての話が総括され収斂していく、終盤へ向けてのあの爽快感はたまりませんし、特に最終2話の出来栄えは、見事と言うほかはありません。
アニメ制作上の技法としては、センスの良いアングルが独特の世界観を巧く表現していると共に、時折入るコマ撮りの演出も効果的でした。結果は、湯浅監督をはじめ、中村佑介さんや上田誠さんなど、実力派の面々の才能をうまく連携させて、まとまりのある素晴らしいアニメ作品に仕上がっています。
尚、舞台となる京都市内の描写については、インクラインや四条河原町、そして京都大学などで1か月近くのロケハンが実施されたそうです。また京都府や下鴨神社なども、「協力」として制作を支援しています。
2010年12月8日には、2010年度文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で大賞を受賞しました。TVアニメ作品の大賞受賞は創設以来初めてで、湯浅監督の受賞は、『マインド・ゲーム』以来の2度目です。また、2011年3月1日には、東京国際アニメフェア2011・第10回東京アニメアワードでもテレビ部門優秀作品賞を受賞しています。
PV動画 ⇒ http://yojouhan.noitamina.tv/sp_movie.html
『四畳半神話大系』 Blu-ray BOX 6月18日(水)発売決定!!
<特典>
■キャラクター原案、中村佑介描き下ろしイラスト三方背外箱
■封入特典 再編集版ブックレット(中村佑介キャラクター原案イラスト完全収録)
■特典映像
ディスク1 TV未放映エピソード①「地面潜航挺、南極へ」(約7分)、ヨーロッパ企画の京都案内
ディスク2 ・ノンテロップOP ・ノンテロップED ・プロモーション映像①&・プロモーション映像②
・BD&DVD TV-SPOT
ディスク3 TV未放映エピソード②「地面潜航艇、女湯へ」~閨房調査団桃色探索~(約7分)
ディスク4 TV未放映エピソード③「恋と釣りの地面潜航艇」(約7分) ・第十一話 ノンテロップOP
-終-
【続報】 2016年12月15日、森見登美彦さん原作の小説『夜は短し歩けよ乙女』のアニメ映画化を記念して、世界観や登場人物を共有するTVアニメ「四畳半神話大系」の特別放送が発表されました。
・TOKYO MX 2017年1月8日より毎週日曜24時30分~
・BSフジ 2017年1月13日より毎週金曜24時30分~
オープニングテーマは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONによるオリジナル放送時の主題歌「迷子犬と雨のビート」をシナリオアートがカバー。エンディングテーマは、同じくシナリオアートの新曲「ラブマゲドン」となるそうです。またオープニング、エンディング映像は新バージョンになるとのこと。尚、アニメ映画『夜は短し歩けよ乙女』は監督が湯浅政明さん、脚本は上田誠さん(ヨーロッパ企画)、キャラクター原案は中村佑介さん、主題歌はASIAN KUNG-FU GENERATIONというTVアニメ「四畳半神話大系」のクリエイターが6年ぶりに再集結し制作されます。2017年4月7日に全国公開予定。
新品価格 |