天使のお話/atl

140503_01近世以降の天使は、無垢な子供の姿や女性的な姿を取って表現されるようになりました。これはルネサンス期にローマ神話のクピド(女神ウェヌスの使い)からイメージを借りたとされています。クリサリス・コレクションの天使も、すべてやさしい女性的な姿です。つまり、ルネサンス期のローマ神話が、彼女たちの起源と言って良いでしょう。

天使と神々

天使は、主にユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖典や伝承に登場する神の使いです。英語のエンジェル(angel)はギリシャ語のアンゲロス(angelos)に由来していて、神の使者を意味します。日本語の聖典中では「み使い」と呼ばれることもあります。

天使は、大きくふたつの類に分かれます。第一の天使は、上記の「み使い」と呼ばれる天使です。彼らは旧約・新約聖書の中で、翼など持たず普通の人と変わらない姿で現れます。姿が見えない場合もありますし、姿が見える場合は男性の姿であると考えられています。第二の天使は、セラフィム(熾天使)・ケルビム(智天使)・オファニム(座天使)のように、多数の眼と多数の翼等を持つ、怪物のような姿の天使です。

 

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キリスト教の天使

初期のキリスト教の天使は青年男子の姿で、翼を持ちませんでした。天使が翼を持つ姿で考えられるようになるのは、精霊のイメージなどが混合されたためです。中世ヨーロッパの絵画では、天使は有翼で西欧人の衣装をまとっています。「天の聖歌隊」を構成する天使たちは美少年の姿に、大天使ガブリエルは優美な男性の姿に、また、悪と戦う使命を持ったミカエルなどは鎧をまとい剣を帯びた、雄々しい戦士の姿で描かれています。

 


多神教的要素としての天使

天使は、他宗教の神々に近い働きをするため、唯一神教であるアブラハムの宗教の中に取り込まれた、多神教的要素と考える人もいます。モーセ五書における「神の使い」「ヤハウェの使い」は、ヤハウェ(唯一神)が顕現化したものであり、ヤハウェと同一視されます。天使はそれとは異なり「仕える霊」として描写されます。旧約聖書における「仕える霊」「天の軍勢」としての天使への言及は、ユダヤ人のバビロン捕囚期以降に成立した概念と考えられています。ミカエル、ラファエルなど固有の名前をもった天使は、捕囚期以後に成立した文書にはじめて現れます。

これらのことは、天使の概念が「アブラハムの宗教が広まり、他民族を取り込んでイスラエル民族が成立していく過程で、他宗教の神を下位の存在として取り込んでいったもの」とする考えにつながりました。また、ゾロアスター教の神の組織のあり方と、天使の組織のあり方が類似しており、天使の概念にはゾロアスター教の影響があるとも言われています。

 

自由で普遍的な美しさ

少々難しくなってしまいましたが、アブラハムの宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)の天使は、クリスティンハワースの描く天使のイメージとは異なることが解ります。冒頭に述べたとおり、ルネサンス期のローマ神話が彼女たちの起源です。クリサリスコレクションの天使は、特定の宗教観に捉えられない、より自由で普遍的な美しさを持った天使たちであることが、お分かり頂けると思います。140503_-3

 

 

 

 

 

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