ベストセラー小説「ジャック・ライアン」シリーズの映画化最新作が『エージェント:ライアン』。『スター・トレック』のクリス・パインが4代目ライアンに扮し、世界を恐怖に陥れる経済テロに立ち向かうスパイ・アクションで、2014年2月15日(土)より公開。
また映画の紹介と併せて原作者トム・クランシーにも触れたい。
原作シリーズと原作者について
昨年(2013年)の10月に、米国の作家トム・クランシーの訃報が報じられた時は驚いた。まだ66歳と若い上、死因は不明との一報に、さすがは一流のスパイ・スリラーの書き手だ、最後まで謎に包まれているナ、と妙に関心したりもした。
小説の「ジャック・ライアン」シリーズに関しては、ジャックがまだ東西冷戦を背景にCIAの職員として活動していた初期の作品が好きだ。
「レッド・オクトーバーを追え(The Hunt for Red October, 1984)」「愛国者のゲーム(Patriot Games, 1987)」「クレムリンの枢機卿(Cardinal of the Kremlin, 1988)」「いま、そこにある危機(Clear and Present Danger, 1989)」くらいまでは、毎回文庫版の発売が待ちきれずに、入手後は早速手に汗握りながら徹夜で読んだものだ。
敵対勢力も旧ソ連のKGBとか中南米の麻薬組織とかだったりで、日本人読者としても主人公ジャック・ライアンの敵役としてすんなりと受け入れ易かった。
それがシリーズ中盤には日本が敵役となる。日本人に対する作者の偏見は結構露骨で、悪役の変な日本人が登場してくるだけではなく、しまいには日米が戦争を始める事態にまで至るから困りものである。しかも両国間の戦争が終結した後に、恨みを抱いた日本人機長による旅客機を使った米国国会議事堂への自爆攻撃が描かれており、後にこれが9.11事件の自爆テロとの類似性で大きな話題となった。
結果的に大統領にまで上り詰めたライアンを描くこの「日米開戦(Debt of Honor, 1994)」だが、(個人差があるだろうが)残念ながら筆者は作者の描く日本人像に違和感や嫌悪感を覚え、その作風に戸惑ったものだ。
その後はおきまりのイスラム系テロ勢力「デッド・オア・アライヴ (“Dead or Alive, 2007)」や中国がバッシングの対象「大戦勃発(The Bear and the Dragon, 2000)」となっていく。最新作では、ついに米中が開戦「米中開戦 (Threat Vector, 2012)」だ!!
最近の作品は、ジャックの息子のジュニアやその従兄弟たち、それから「クレムリンの枢機卿」以来のシリーズ影の主人公とも言えるジョン・クラークなどが、私設の極秘諜報機関“ザ・キャンパス”を舞台に活躍する連作となっている。またジャック・ライアン(シニア)といえば、なんと一度辞した大統領に再選を果たしている。
近作のテイストにやっと落ち着いて楽しめると思っていた矢先、作家本人の逝去とは誠に残念である。
映画について
東西冷戦下のCIA分析官の活躍を描き圧倒的な人気を博したこのシリーズは、これまで『レッド・オクトーバーを追え!』(1990年、主役アレック・ボールドウィン)、『パトリオット・ゲーム』(1992年、主役ハリソン・フォード)、『今そこにある危機』(1994年、主役ハリソン・フォード)、『トータル・フィアーズ』(2002年、主役ベン・アフレック)の4作品が映画化されてきた。
この最新作『エージェント:ライアン』は、シリーズを通しての主人公であるジャック・ライアンがどのような経緯でCIA職員となり、いかに“エージェント(工作員)”としても成長していったのかを描く誕生ストーリーで、いわばリブート作品である。尚、ジャーナリストの池上彰氏が本編字幕監修を担当したことも、話題となった。
↑『2分でわかるエージェント:ライアン みどころガイド』
ジャック・ライアン役には、新進気鋭のハリウッド・スター、『スター・トレック』シリーズのクリス・パインが配された。アクションシーンはもちろん、誰もが信じられない状況に苦悩するライアンを迫真の演技で演じている。
また謎めいたフィアンセには『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのキーラ・ナイトレイ、CIAの上司役には名優ケヴィン・コスナーが扮している。監督は俳優のケネス・ブラナー、また彼は世界恐慌を企てる主人公の敵役も演じた。
↑『映画 エージェント:ライアン 予告』
ジャック・ライアンは、ウォール街で働いているごく普通の経済アナリストだが、本当の姿はCIAの分析官だった。天才的な分析力を持つライアンは、全世界を標的とした大規模テロ計画の情報を入手する。彼は上司のハーパーにロシアへの調査/工作員の派遣を要請するが、しかし、なぜかハーパーの指示でライアン自身が調査に赴くこととなった。
真相を暴くためにモスクワへ派遣されたジャックを待ち受けていたのは、現場の工作員“エージェント”としての活動。なぜ工作員経験がない彼が選ばれたのか?世界経済を牛耳る謎の実業家の登場やフィアンセの不可解な行動、そしてどこか信用できないCIAの上司。誰が本当の敵で、何が真実なのか?
ただ一人極限状態の中で、その情報分析力だけを頼りにライアンの孤独な戦いが始まる・・・。スパイ経験ゼロのデスクワークしか体験したことのない男が、世界規模の巨大な陰謀に敢然と立ち向かうというスパイ・アクション。
↓公式サイト
もともとのシリーズとはやや趣を異にしているが、ぐっと若返った“エージェント(工作員)”ジャック・ライアンのスピーディな活躍…。今後の続編が楽しみだ!!
-終-
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