これまでは都道府県別しかなかった健康寿命のデータに関して、20大都市別データを厚生労働省研究班(主任研究者=橋本修二・藤田保健衛生大教授)が発表しました。
2010年時点で健康寿命が最も長いのは男女とも浜松市で、最も短いのは男性が大阪市、女性は堺市でした。
健康寿命(Healthy life expectancy)とは、一生のうち、健康で生活に支障なく日常の生活を送れる期間の平均のことです。厚生労働省によると、2010年の日本人の健康寿命の平均は男性が70.42歳、女性が73.62歳で、平均寿命は男性79.55歳、女性86.3歳でした。
この健康寿命の数値は、75万人を抽出した国民生活基礎調査(厚労省調べ)で、「健康上の問題で日常生活に影響がない」と回答した人の割合から計算されています。
そもそも、この健康寿命は世界保健機関(WHO)が2000年に提唱した考え方で、その後、寿命を伸ばすだけでなく、いかに健康に生活できる期間を伸ばすかに、国際的にも関心が高まっています。
さて、発表された20大都市別データによると、健康寿命が1位は男女ともに浜松市で、男性が72.98歳、女性は75.94歳でした。最下位の20番目は、大阪市の男性68.15歳、堺市の女性71.86歳でした。ちなみに都道府県別のトップは、男性が愛知の71.74歳、女性が静岡の75.32歳です。最低は男性が青森県で68.95歳、女性が滋賀県72.37歳でした。
都道府県別の健康寿命の最長と最短の差は男性の場合は2.79歳でしたが、都市別の差は4.83歳もあり、都道府県別の差より大きくなっています。都市別データ研究班は、同じ県でも地域によって異なることや、都市別も知りたいという要望を受け、2010年時点の政令指定都市と東京都区部を合わせた全国20都市に関して集計したそうです。
平均寿命が延びていることは喜ばしいのですが、両者の差の拡大は、認知症や寝たきりといった期間が延長することを意味します。2010年の健康寿命と平均寿命の差は、男性は9.13年、女性は12.68年でした。この期間は、日常生活に差し障りのある極めて不健康な期間という訳です。
そこで大切なのは健康寿命の伸長で、健康な期間が長くなれば本人にとっても幸せですし、周囲の負担となる介護や医療の費用も抑えることができるのです。今後、平均寿命が更に延びるにつれて、本人や家族の単なる健康上の問題だけではなく、国家にとっても医療費や介護費の増加などの問題が懸念されます。
健康寿命を延長する方法は、例えば高血圧や糖尿病など生活習慣病の発症を妨げたり重症化を防ぐことが重要です。そのためにはバランスのよい食生活や適度な運動、十分に休息をとり、たばこや酒を控えめにするなど、生活習慣を整えることが大切です。
都市別では男女ともに浜松市がトップという結果になりましたが、浜松というとウナギや餃子、楽器製造の町というイメージがあります。浜名湖をはじめ風光明媚で自然豊か、温暖な気候で住みやすそうです。
また静岡県は、元気に働く高齢者が多いこと、穏やかな県民性、地場の食材が豊富で食生活が豊かであることや、全国一のお茶の産地で、誰もがいつもお茶をたくさん飲んでいることなどを指摘されています。尚、お茶に含まれるカテキンはコレステロールを下げる効果があるとされています。
ちなみに、長寿日本一で健康寿命も上位の長野県は、高齢者の就業率が高く、生きがいを持って暮らしている人が多いことや、野菜の摂取量が多い点が影響したとされています。
厚労省都市別データ研究班の辻一郎・東北大教授(公衆衛生学)は「都道府県別では、浜松市のある静岡県など健康寿命が長いところは就業率が高く、喫煙率は低い傾向があった。都市別では地域の特徴がより出やすいため、健康寿命に何が影響しているのかを探りたい」と話しています。
これらの長寿で健康維持のポイントは何かという点について、さらなる研究の成果が待たれます。