【科学ニュース】 地球温暖化により北極海は好漁場となるのでしょうか? 〈1300JKI11〉

氷山7iceberg_21221635地球温暖化の影響で北極海の海氷が急激に減少していることが問題となっています。

しかし、逆に今後この傾向が続けば北極海の生物は増加していくようです。禍転じて福となす、となれば良いのですが・・・。

 

最近の地球温暖化が、大気や海洋間の水循環を活発化させて極地の海氷を減少させたことで、栄養分が豊富な大陸棚由来の海水(陸棚水)が北極海盆域に流れ込み、冬の海氷下でも生物の生育が活性化しているといいます。

北太平洋からの海水がベーリング海峡を通過して北極海盆域に流れ込む時に大きな海洋渦が形成されますが、渦内部では動植物プランクトンが活発に活動していることが分かってきました。

また、これまでは年間を通じて氷に覆われていたことで、動植物プランクトンや魚類の生息は困難と思われていた北極海盆域の一部で、生物の生息環境が向上しているようです。

先ず、栄養分が豊かな北極海の陸棚域で、海氷に覆われる期間が短くなったことで、動植物プランクトンの生育が促進されます。次に、海氷が海水の循環を抑える役割を果たせなくなると、海流や渦の流れが強化され、潮の流れや渦の中で魚類などの餌になる動植物プランクトンの生息環境が更に向上し、生物由来粒子の深海への沈降も増えるというのが、北極海の生物循環活性化の実態のようです。

海氷減少で栄養分が減るという説もありますが、太平洋側の北極海では渦の効果もあって、生物生産が活発になっていることは確かのようです。これは、現場観測と数値計算の両面から示されたもので、今後、太平洋側の海水が流れ込む北極海の海盆域が好漁場になる可能性は高いと言われています。

更に、ベーリング海を含む亜寒帯海域が低塩化の傾向にある上に、温暖化による北極海の海氷域の減少が海中の光環境の改善につながっている可能性もあります。

その為、ベーリング海では従来の主たる植物プランクトンであった珪藻が、円石藻という種に主役(優占種)を譲りつつあるといいます。円石藻は炭酸カルシウムの殻を持ち、亜熱帯域などの貧栄養で光環境の安定した海域に多く生息する植物プランクトンですが、最近のベーリング海では円石藻の増加が珪藻の生産増加を上回っているのです。

やはりこの様に、地球温暖化により海洋環境が大きく変化しているとみられ、その影響が当該海域の低次生態系の優占種を変化させるまでに及んでいることが明確になってきています。

 

この様な北極海の海氷減少が海洋生態系に及ぼす影響は興味深く、将来は、北極海の海盆域が好漁場になる可能性もあります。

地球温暖化に関して悪影響ばかりではなく、プラス面が期待できることは正直なところ嬉しいのですが、マイナス面を決して忘れてはならないと思います・・・!!

-終-

【参考】独立行政法人海洋研究開発機構が「Nature Communications」や「Global Biogeochemical Cycles」などに、他の大学などと協力して発表した研究論文を参考としています。 

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