株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)は6月3日、ヘルスケアビジネスへの参入を発表した。本年(2014年)4月1日に設立した子会社、株式会社DeNAライフサイエンスの新規事業第一弾として、一般利用者向けの遺伝子検査サービス『MYCODE(マイコード)』を、7月下旬から開始するとのことだ・・・。
株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は、遺伝子検査サービス『MYCODE(マイコード)』を開始するために、100%出資の子会社の株式会社DeNAライフサイエンスにヘルスケア事業を分割・継承すると発表した。
これはDeNAがヘルスケア事業に参入するに際し、 第一弾サービスとなる遺伝子検査サービス『MYCODE(マイコード)』を開始する上で、子会社であるDeNAライフサイエンスが主体となり、遺伝子の検査やユーザー情報の管理、検査結果の提供などを行うことで事業の展開・拡大を早めるためだ、と説明している。
遺伝子検査サービス『MYCODE(マイコード)』は、癌(がん)や生活習慣病などへの遺伝的リスクや、アレルギー適合性や肌質、太りやすさなどに対する体質の遺伝的性質についての統計的傾向を調べる遺伝子検査で、東京大学医科学研究所と共同研究を推進しており、今後、遺伝子検査に必要となる日本人疾病リスク予測アルゴリズム等の研究を進め、本年(2014年)の7月下旬より実際のサービスを提供する予定だ。
同様のサービスが増加する中で、東大医科研との提携により、高い学術的な裏付けに基づくサービスを提供することが可能となり、利用者は高度の信頼性を獲得できるとし、事前に疾病のリスクを知ることで病気の予防に役立ててもらうのが狙いだそうだ。
そして、サービス利用者の遺伝子を解析し、病気のリスクや体質のリポート、予防や健康のためのアドバイスなどを主にインターネットを活用して提供する。同時に、得られた情報を逆に東大医科研にフィードバックして、ビッグデータとして蓄積していくことで日本人に特化した遺伝情報・エビデンスとして蓄え、日本人の疾病リスク予測モデルの構築に貢献する。そしてこれらの情報を我が国の疾病予防や先進医療の研究などに活用し、医療費抑制や健康長寿社会の実現に繋げることも目的である。
また、ELSI問題(Ethical, Legal and Social Issues:倫理的・法的・社会的問題)にも配慮した規範性の高いサービス運営であることが特徴だ。
尚、この共同研究を含む研究開発は、文部科学省と科学技術振興機構が推進する「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」において、「ヘルスビッグデータを用いた健康長寿イノベーション」として「COI-T(トライアル)サテライト拠点」に選ばれている。
『MYCODE(マイコード)』の具体的なサービス内容は追って発表されるが、現在、判明していることとしては、サービス利用者からの申し込みをインターネットで受け付けた上で、検査キットを郵送する。その後、サービス利用者から返送された検体サンプルをDeNAライフサイエンスが国内で検査・解析し、その結果に基づき被検者(利用者)の疾病リスクや体質についてのレポート情報と疾病予防や健康増進の為のアドバイス・コンテンツをインターネットを通じてサービス利用者に提供する他、希望者には専門家によるカウンセリングの実施も検討している、ということだ。
また、一度利用した利用者には常に最新の関連情報をアップデートして提供するなどにより、健康に目を向けてもらうため、継続的なコミュニケーションを実施する体制を整える予定という。
DeNAが目指すのは、病気を発病してからの「Sickケア」ではなく、事前に健康を維持するための「Healthケア」への転換だ。遺伝子検査を有効に活用して、利用者が自分の身体の状態を客観的に把握することで、健康生活に取り組む具体的な日々の行動の変化に結びつくことになる、と期待しているそうだ。
東大医科研によると、基礎研究を健康長寿社会への実現に活用するためには、スピード感が必要であり、その為には ITを活用するのが早道であり、また研究機関側にとっては、この様なサービスに取り組むことは、一般消費者からのフィードバック情報を得られる数少ない機会でもある、と考えているそうだ。
またDeNA側は、インターネットとリアルな巨大産業分野を組み合わせることで、新たな巨大産業を創りたいと考えており、そのひとつがこのヘルスケア事業である、とのことだ。更に、従来は医師や病院側による一方的な診断・検査による情報をもとに判断していたものを、自分で自身の身体に関する情報を集め、医師からの診断も含めて総合的に自ら判断する「セルフメディケーション」の時代がやって来ると主張している。
まだまだ『MYCODE(マイコード)』の詳細は不明ではあるが、先行している他の競合サービス(ジーンクエストやジーンライフ等)との差別化や、具体的な解析項目とか調べるスニップ数などが問題となりそうだ。また医療行為との境界線や大学の研究機関との役割分担や棲み分け、費用の負担や利益の分配などの透明性などに関しても、課題と為り得ると思う。
果たして、DeNAが得意とするSNSの仕組みやコミュニティ事業、ゲーミフィケーションの技術を活用して、適正価格で利用しやすいサービスの提供が実現できるのだろうか・・・。
-終-
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