【マーケティング考~そこには心理学がある】 ピーク・エンドの法則 『終わりよければ全てよし~All’s Well That Ends Well』 〈545JKI11〉

ピーク1ダウンロード好感度を上げたければ「去り際」の印象を良くすることで、自分の評価も高くなります。また、どんな会合でも打ち合わせでも、例えデートでも、最高の印象を与える大きな「ピーク」が一つあれば、それで大丈夫、あなたの好感度は高くなるのです。

そして、そこには『ピーク・エンドの法則』が働いていると云います・・・。

 

2002年にノーベル経済学賞を受賞した、ダニエル・カーネマンという行動経済学者で心理学者でもある人が提唱した理論に『ピーク・エンドの法則(peak-end rule)』というものがあります。

 

この法則は、あらゆる経験や出来事の記憶が、快いものでも苦々しいものでも、その経験や出来事の中での最大(ピーク)と最後(エンド) の度合いで、ほぼ決まるというものです。
つまり人間は、自らの体験を無意識に、ピーク(最良または最悪)とエンド(終わり方の内容や程度)の在り様や情報によって評価していて、それ以外の情報はほぼ評価の対象外となる、というものです。
『ピーク・エンドの法則』の実証には、苦痛を体験させるタイプの実験が多くあります。冷水に手を浸すものや大きな騒音を聴かすなどいろいろなものが紹介されていますが、いずれも結果は同様です。再び同じ苦痛を受けるとしたらという問いに対して、大多数の被検者は、苦痛を受ける時間が伸びても最後に和らいだ苦痛を受けるタイプを選択するというものです。つまり最後(エンド)の印象が、全体の印象を大きく左右させることを証明しているのです。

これは、体験の途中の経験よりも最後(エンド)の印象の方が強く記憶に残ることから、最後に苦痛が小さかった方がまだしも良かったと感じると理解され、『ピーク・エンドの法則』の証明のひとつとされています。

『ピーク・エンドの法則』に則れば、ある体験や出来事についてのピークとエンド以外の情報は、私たちの記憶から決して消えている訳ではありませんが、その体験や出来事全体の印象や評価の決定には、その他の情報はほとんど利用されないようです。
ややもすると、私たちは全ての情報の合計値がその体験や出来事の最終的な印象となると考えがちですが、それは間違っているのです。また人間は、ピークとエンドという二つの時点での印象をもとに判断をするので、本来重要な要素と思える時間の絶対的な長短が問題とならない点も大きな特徴とされています。

因みに、最後のピークの後が冗長だと、良い印象の場合でもその効果は半減するとも云います。

 

既にお気づきの通り、『ピーク・エンドの法則』は対人関係で相手側に良い印象を残したい場合に、大いに役に立つものなのです。

さて、対人関係でのシチュエーションとして解り易いのが、恋人とのデートですね。そこでデートでのピークとエンドについて考えてみます。

先ずデート中は、最高(最良)の状況を一つ作ることに集中しましょう。最高の場面が一つあれば、相手側のその他の記憶というものは、そのデートの最終的な判断にはほとんど関わりません。人間というものは、その体験の中で一番輝いていた場面以外の記憶というのは、驚くほど思い出すことができないのです。ですからデート全体を通して、ムリを重ねて最高の水準を維持することもなく、多少の失敗があっても、くよくよする必要はないのです。

また、別れ際(ぎわ)に好印象を与えることが大事だということも、既に読者の皆さんは気づかれていると思います。

ピーク時の場面創りと違って、エンドをおざなりにしている人は結構多いのではありませんか。できれば、あらかじめ作戦を考えておき、印象に残る演出をすることが肝心です。

 

もちろんデートに限らず、俗に「人は去り際が肝心」とはよく言ったもので、去り際/エンドにはその人の本当の人間性が際立って表れるものです。そこで最後まで気を抜かずに良い印象を残す様に努めましょう。まさしく仕上げが肝心なのです。

去り際では急いで立ち去らないことも大切なポイントです。相手に良い印象を与えたかという精神的な不安から、つい急いでその場を立ち去ることがありますが、これは大変な逆効果です。この状況から早く逃避したかったんだと誤解されてしまうからです。

立ち去る時には、ややゆっくりとした動作をとるようにし、一言(ひとこと)親愛の表現を表して堂々と去るようにしましょう。

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