英国スコットランドのロサイス造船所で7月4日、英国海軍の最新鋭空母『クイーン・エリザベス』の命名式が実施され、エリザベス女王やキャメロン首相が参列した。
『クイーン・エリザベス』は、2017年の就役が予定される英国海軍史上最大の艦艇だ!!
英国海軍の新鋭空母『クイーン・エリザベス(HMS Queen Elizabeth)』は艦体の建造を完了し、艦載兵器などの各種装備や電子システム等の艤装作業に入り、本年中(2014年)に洋上テストを実施する計画とのことだ。
また、9月末迄に最後のスポンソンの取り付けを完了し、10月中旬頃にはマスト・キャップを、11月中には固定翼艦載機の発艦の為のスキー・ジャンプ台式の飛行甲板の整備を終える予定だ。
搭載予定のマーリンMk.2ヘリコプターに関しては、コンウォールのカルドローズ海軍航空基地でテスト飛行を実施しており、主力艦載機のF-35Bは英軍パイロットが初めて米国海軍の強襲揚陸艦『ワスプ』で離着艦体験を先月実施したという。
夫のフィリップ殿下(Prince Philip)とともに命名式に出席したエリザベス女王は、式典の挨拶で「この艦(ふね)が我々にとって誇りの源になると信じている」また「わが国の海軍史の新たな段階を画すもの」と述べ、造船所の所在地(スコットランド/ロサイス造船所)にちなんで、スコッチウイスキー(ボウモア Bowmore ウイスキー)のボトルを艦体にぶつけて割り、命名を祝った。
↑『Queen names new aircraft carrier HMS Queen Elizabeth』 提供:The Royal Family Channel
『クイーン・エリザベス』級航空母艦(Queen Elizabeth-class aircraft carrier)は、英国海軍で建造・配備が進められている最新鋭のSTOVL運用能力を持つ正規空母。ネーム・シップの『クイーン・エリザベス』に続き、2番艦の『プリンス・オブ・ウェールズ(HMS Prince of Wales)』の建造も進められている。
満載排水量6万5千トン、全長284メートルで全幅は39メートル、英国海軍史上において最大規模の艦艇となる。速力は最大26ノット、乗組員は航空要員を含めて1,400名以上である。
当初はCVF(Carrier Vessel Future)と称されていた同級は、『インヴィンシブル』級軽空母の後継クラスとして、CTOL機運用も考慮に入れた次世代空母として1990年代から計画が進められてきた。しかしその建造には紆余曲折があり、艦載機の調達コストの高騰から、2番艦に関しては建造そのものが断念されたり、インド海軍に売却されると報道されたりと散々な経緯を経ている。一時期は、1番艦は2016年に電磁式航空機発艦システム(EMALS)を搭載せずヘリ空母として完成し、EMALSを搭載した2番艦の就役(2019年)を待って予備役編入(インドへ売却?)の予定とされていた。
本級の大きな特徴は、二つの艦橋(アイランド)を持つことだろう。航海・作戦用と航空管制用の艦橋が別個に分かれている近未来的なデザインだ。また、この前後の艦橋(アイランド)の直後に1基ずつ、計2基のエレベーターが、いずれも舷側式に設置されている。
また二つある艦橋との重量バランスをとる為か飛行甲板は左舷側に大きく張り出しており、この点から将来的にアングルド・デッキに改修してCATOBAR方式に変更することも可能と考えられる。
搭載機についてはF-35Bと、ヘリコプターのマーリンMk.2やシーキング ASaC.7、アパッチ AH Mk 1などを予定している。標準的な搭載機数は約40機で、内ヘリコプターが約10機といわれている。
最新の仕様ではSTOVL運用空母とされていることから、飛行甲板は首尾線と平行に配置されており、その先端部の左舷前部には13度の傾斜をもつスキー・ジャンプ台式飛行甲板が設けられている。
因みにHMSとはHer Majesty’s Shipのことで、「女王陛下の海軍艦艇」という意味だ。
いかにも英国の設計らしく米国海軍とは一線を画すデザイン。艦橋を二つに分ける意味について、いま一つ納得できないが・・・それにより独自の個性を確立しているのは確かだ。伝統的に「ややゲテモノ」感が漂うのが英国軍の兵器だということも忘れてはいけない(笑)。
予算不足で二転三転した建造計画ではあるが、現状は2隻ともSTOVL運用空母とされている。結局、搭載機の調達や運用コストを考えると、将来的にCATOBARタイプに変更するのは困難だろう・・・。
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【続報】AFP=時事通信によると、空母『クイーン・エリザベス』の就役式が2017年12月7日、英国の南部ポーツマスで行われた。エリザベス女王も出席して「英国の技術とイノベーションの粋を示すものだ」と述べた。
【参考】英海軍や英空軍も『クイーン・エリザベス』級 STOVL運用空母の就役を前提に、シーハリアーやハリアー GR.5/7の後継機として、F-35B型の配備を計画していたが、2010年10月25日のストラテジック・ディフェンス・アンド・セキュリティー・レビューに伴い、一旦はこれをC型(CTOL艦載機向け仕様)に変更すると発表した。しかし2012年当時におけるC型の開発の遅れや、空母に装備するカタパルトやアレスティング・ワイヤーのコスト高騰などを理由に、再びB型に変更したとされる。
他の連載記事は こちらから ⇒ “「空母」を考える ”シリーズ
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