それから余談ながら、もう一つのポイントとして、デートでもその他の会合でも活用できることに、立ち去ってからの「後引きしぐさ(あとひきしぐさ)」があります。
「後引きしぐさ(あとひきしぐさ)」では、別れ際に、すぐに立ち去るのではなく、少し離れてからもう一度振り返り、別れる人と視線を合わせるか、もしくは軽く会釈などをします。別れ際の名残惜しさを表現したり演出することでエンドの印象を強くし、また会いたいと思わせる所作と云われ、なんとも奥ゆかしい我が国独特の伝統的なコミュニケーション方法でもあります。
日本人ではないカーネマン教授の理論には含まれていませんが、この「後引きしぐさ(あとひきしぐさ)」は、江戸時代の人々が他人との上手な接し方や公衆でのマナーとして確立していた「江戸しぐさ」と呼ばれる行動規範の中の所作の一つとされます。
但し、昔から「後引きしぐさ(あとひきしぐさ)」と呼ばれた訳ではありません。比較的最近になり、一部の人々の間で古い日本人の流儀や作法を見直そうとする運動が「江戸しぐさ」という概念を創りだし、その結果、こうした名前で呼ばれるようになったそうで、江戸時代に限らず戦前の日本では当然の礼儀だったと思われます。
また見送る側も、別れる相手の姿が見えなくなるまで見送るのが古来より礼儀とされていますよね。今でも、一流の旅館や料亭などで見かける所作であり、こうした別れ際の作法が、印象を良くし高めるものであることは誰もが認めるところです。
『ピーク・エンドの法則』は、マーケティング理論の一つとしても非常に重要な考え方であり、サービス内容の決定やブランド構築に関する検討などの際に参考とされています。
例えば、飲食業界全般、理美容や様々な講習会などの体験型のサービス、各種イベントや催事の進行・演出、そして旅行プランの計画などで、この法則が応用されています。
この法則に従えば、顧客にサービスを提供する際には、ピーク(最良・最悪)でのサービスと最終の場面でのサービスの質が、当該の顧客の満足度に大きな影響を及ぼすことになります。特に、たとえ全体的なサービスが良くても、最後の部分の質が低いと、顧客の満足度は極めて低下すると考えられるからです。
また、ブランド構築に関しては、例えばCM作品の制作にも当てはまります。TV・CFなどが好例で、短い尺の中で、ピークとエンドにいかに高い訴求効果と好印象を創るかが大切とされています。
営業活動によるプレゼンテーションの手法でも、常にこの法則が参考とされています。更に、より直接的な販売活動である、訪問時や店頭での接客・販売手法においても応用するべき法則であることには間違いありません。
ピークとエンドをいかに演出して顧客の満足度を高めるか。顧客の心をガッチリと掴み商機を継続・拡大するためには、とても重要なことと云えます。
「終わりよければ全てよし」 ~ All’s Well That Ends Well
「仕上げが肝心」 ~ The end crowns all
是非、皆さん、恋に仕事に『ピーク・エンドの法則』を活用して、終わりを全うしてください!!
-終-
《広告》