【ラミパス通信社】 夏目漱石の『こころ』、再び人気を得ています!! 〈42JKI23〉

こころ1af6ed0920ea02c916c78f110.L私は、恥ずかしながら夏目漱石が朝日新聞の社員として、『三四郎』や『こころ』、『明暗』といった小説を同紙(朝日新聞)に連載していたことは知りませんでした。

今年(2014年)の4月20日から、朝日新聞に『こころ』が100年ぶりに掲載されて評判を呼んだとは聞いていましたが、新潮社の文庫本も売れている様ですネ・・・。

 

出版社の新潮社は7月31日、同社の発行する新潮文庫において、夏目漱石(1867~1916年)の代表的な小説『こころ』の発行部数が、累計700万部を超えたと発表しました。

同社によると、『こころ』の新潮文庫版は昭和27年(1952年)に刊行を開始。今年4月の朝日新聞への再連載が開始されると、直ちに販売部数が連載前の倍以上に増加し、この3ケ月だけで10万部を増刷したそうです。更に7月30日には2万部が重版され、計186刷701万500部に達しました。

約3,000タイトルを超える新潮文庫の中で、『こころ』の累計発行部数は歴代第1位だそうです。

同社の広報担当者は、「古典としては異常な売れ方。100年ぶりの連載で関心が高まり、夏休みに入って動きに拍車がかかっている」と話しました。

尚、累計発行部数の第2位は太宰治の『人間失格』で約670万部です。また漱石の作品は約420万部の『坊っちゃん』が第4位となっているそうです。

【新潮文庫発行部数ベスト10】(7月31日現在)

①夏目漱石「こころ」(701万500部)②太宰治「人間失格」(670万5千部)③ヘミングウェイ「老人と海」(489万5千部)④夏目漱石「坊っちゃん」(420万5千部)⑤カミュ「異邦人」(412万1千部)⑥武者小路実篤「友情」(411万6千部)⑦川端康成「雪国」(384万7千部)⑧島崎藤村「破戒」(376万1千部)⑨太宰治「斜陽」(369万6千部)⑩サガン「悲しみよこんにちは」(366万3千部)

 

『こゝろ(こころ)』は夏目漱石の長編小説で、乃木希典将軍の殉死事件に影響を受けて執筆した作品であるとされています。また『彼岸過迄』や『行人』とともに漱石の後期三部作とされます。

友人のKを裏切って恋人を得た「先生」が、Kの自殺によって罪悪感に苛まれ苦悩する物語です。明治の知識人の孤独な内面や、自らのエゴイズムと人間としての倫理観との葛藤を描き、「明治の精神」の終焉を提示した作品ともいわれています。

大正3年(1914年)4月20日から8月11日までの間、朝日新聞に『心  先生の遺書』として連載され、同年9月に岩波書店より書籍として刊行されました。

連載開始から100年を迎えた今年(2014年)4月20日に、朝日新聞に再び連載が開始されて話題を呼びました。

 

さて、夏目漱石が東京帝国大学の講師から、東京朝日新聞社に転職したのは1907年の4月でした。当時、帝大講師から新聞社の社員への転身に、周囲の皆は、大変、驚いたといいます。

「大学を辞して朝日新聞に入ったら、逢(あ)う人が皆驚いた顔をしている。中には何故だと聞くものがある。大決断だと褒めるものがある」(「入社の辞」1907年5月3日東京朝日新聞)と、漱石自らが書き残しています。

既に作家として著名であった漱石に対し、朝日新聞社は他の新聞社との争奪戦の結果、部長職より高給の月給200円の小説記者として招きました。

その後、入社第1作の小説『虞美人草』は人気を博し、以降、『三四郎』や『それから』、『こころ』、そして遺作の『明暗』などの小説や『硝子戸の中』などの随筆も、朝日新聞に発表していきました。

また漱石は、作品の執筆だけではなく、事実上の編集責任者として「朝日文芸欄」の創設にも尽力したといわれています。更に1911年の夏には、「朝日関西巡回講演」に参加して大阪など4ケ所で講演を引き受けていますが、これも社員としての義務感の表れとされています。

 

夏目漱石は、朝日新聞在職中の大正5年(1916年)12月9日、『明暗』を執筆中に亡くなります。満49歳の早逝でした。

もう10年、いや5年くらい長生きして頂き、もう少しでも作品を残してくれたならば、と思うのは私だけでしょうか‥‥。

-終-

 

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