【OIC-3】 風邪に風邪薬は効かない!! 期待するならプラセボ(偽薬)効果? 〈1647JKI24〉

診察1ダウンロード【OIC/へぇー!そうなんだぁー♪】の第3回。

以前どこかで、この話は聞いたことがあります。でも、敢えて話題にしましょう。

原則として風邪には風邪薬は役立たないのです。プラセボ(偽薬)効果を除くと・・・。でも本当はどうなんでしょうか??

 

普通に風邪といわれている症状の原因のほとんど(90%以上)がウイルスによるものなので、抗菌薬(抗生物質)の投与は原則として効果がありません。

しかし病院へ行くと、多くの患者に抗菌薬(抗生物質)が処方されます。また、患者の側もそれを期待しているところがあり、抗菌薬(抗生物質)の処方を希望して医療機関を受診する傾向があるのです。(効果がない薬が処方されるのには、他にも諸々おとなの事情があるようです。例えば薬品メーカーからのバイアスとか・・・)

繰り返しますが、抗菌薬(抗生物質)は細菌には効果がありますが、風邪の原因であるウイルスには効果がないのです。つまり、普通の風邪であれば、結局は抗菌薬(抗生物質)を飲まなくても治癒しているのであり、患者は風邪薬で風邪を治しているつもりでも、実際に風邪を治しているのは、人体が本来持っている自然治癒力なのです。

また当然、病気の原因がウイルスと細菌の場合では、使用する薬が全く違うことを理解しなければなりません。
1.抗ウイルス薬…インフルエンザや水疱瘡など数種類用しかありません。
2.抗菌薬(抗生物質)…様々な細菌に対応して、数十種類の抗生物質があります。

但し、ウイルス性でも上記の様にインフルエンザや水疱瘡(みずぼうそう)には効果がある薬があるので、早めに病院で診察を受けるべきです。

つまり、早期に受診して病気の原因・種類を特定する必要は極めて高いとも考えられるのです。

 

また一般の風邪薬は症状を緩和する薬であって、決して治療する薬ではありません。症状を和らげる対症療法なので、飲めば治るというものではないのです。 そしてこれが、治癒に関してはむしろ逆効果になっている場合もあるそうです。

やや極端な例ですが、風邪薬(この場合は所謂、総合感冒薬)を飲んでも、一説には副作用により治るのが遅くなったり、場合によっては有害な影響、例えば連続して服用すると発疹や発熱、胃腸障害などを発症する危険があったりします。また抗菌薬(抗生物質)の乱用で、下痢やアレルギーを引き起こしたり、薬が効かない耐性菌を生み出すリスクがあるとされてもいます。

 

そこで多くの医師や看護師、薬剤師らの医療従事者が、普通の風邪程度だと自然治癒力に期待して、風邪薬を飲まないほうが副作用のリスクを抑え、且つ、治りが早いと考えています。

ちなみに、2003年6月に日本呼吸器学会は、成人気道感染症の指針のなかに、「風邪への抗生物質はできるだけ控えるべき」と明記しています。そして2004年5月の改訂版では、「風邪に抗生物質は無効。細菌性二次感染の予防目的の投与も必要ない」と更に強い表現となりました。

 

また下手に熱などの症状を緩和してしまうと、体が風邪ウイルスを排除するのに必要な症状が緩和されてしまう(解熱により免疫細胞の反応性が落ちる)ので、風邪が長引き、治るのが遅くなるといわれます。要するに発熱は、人間の体がウイルスと戦っている免疫反応の具体的な現象で、ウイルスが増殖しにくい環境を作っているといえるのです。

しかし、一般的な解熱薬に関しては、体力を著しく消耗するほどの発熱だったら飲んで解熱した方がいいとも考えられます。仕事などで体を休めることが難しい場合も風邪薬を飲むべきかも知れません。特に患者が幼児や児童で体温の上昇が極端に激しい場合など、リスク回避のために積極的に解熱剤を使用することは間違っていないと思われます。

また自然治癒力の高い子供に育てたいという理由で、風邪をひいても病院に連れていかない親がいますが、結果として取り返しのつかない大事に至ることがあります。たしかに抵抗力をつけることも大事ですが、医学の知識のない者が、風邪の症状に似た別の危険な病気(そうした病気はたくさんあります)を見逃す事もあるのです。風邪は病院に行っても必ずしも治りませんが、しかし病気の原因と特定するという意味で、風邪だという診断を受けることは重要なことなのです。

 

風邪薬100%不要論はやはり極論であり、一般的には必要とあらば、医師や薬剤師も風邪薬や痛み止め、また熱さましなどの薬品を自らも使用します。たしかに薬を全く飲まずに風邪を治すという医療関係者はいるでしょうが、本来は、濫用・多用をしないように注意しているだけです。なるべく風邪薬を服用せずに自然治癒力を高めて早期に風邪を治療することが望まれますが、例外もあることを理解しておきましょう。

では自然治癒力(人間が本来持っている身体を自己回復させる能力)はどのようにすれば高められるのでしょうか?

それは、手洗いとうがいをこまめに実行し、身体を温めて栄養を摂り、そして最も大事なことは睡眠を十分にとるということです。

 

それでは一般の風邪薬には、まったく効果がないのでしょうか? そんなことはありません。プラセボ効果(偽薬)placebo effect が期待されるのです。

プラセボ(偽薬)効果とは、例えば、効き目のない無害なもので薬をつくり、ある風邪の患者さんに「この薬を飲めば、風邪は簡単に治るよ」と伝えて、用意した薬を飲んでもらいます。すると、患者さんがその言葉を信じ、本当は効果が無い薬なのに自然に身体が「効果がある」と感じて、結果的に体調が好転する現象のことで、薬を飲んだという精神的な安心感が強力な自然治癒力を引き出すと考えられています。

偽薬を処方する事には倫理的な批判もありますが、不眠患者に対して睡眠薬を継続して投与する事が危険と判断された場合などに、ビタミン剤などを睡眠薬と偽って処方する事も医師法により認められているそうです。

また偽薬は、プラセボ(偽薬)効果を期待して処方される以外に、本当の薬の治療効果を実験で証明するために、比較対照試験(対照実験)で利用される事(二重盲検法など)が多くあります。

逆に、偽薬の服用によって望まない副作用(有害作用)が現われることを、ノセボ効果(反偽薬)nocebo effect といいます。これは、薬の使用者が副作用があると信じ込むことによって、その副作用が実際より強く作用するのではないかと言われています。また一方、薬の投与を継続していても、「投与されていない」と思い込むことによって、その薬の効用が弱くなる場合があり、これも同様にノセボ効果と呼ばれます。

 

結論としては、風邪に罹ったと思ったら先ずは病院で診察してもらい、本当に風邪かを確定しましょう。その上は、なるべくならば風邪薬を用いずに治癒を目指しましょう。

最善策は状況によりけりで、しかし必要とあれば躊躇せずに解熱剤などは服用しましょう、というのが次善策みたいです・・・。

-終-

 

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