懐かしいブランド『テクニクス(Technics)』が帰って来る。長年のオーディオ・ファンとしては、老舗ブランドが次々と閉鎖される状況には心を痛めていた。
決してカムバック期待の大本命とは言い難いが、日本メーカーの高級オーディオへの再参入は大歓迎だ!!
ドイツの首都ベルリンで9月3日、ヨーロッパ最大の国際家電見本市「IFA2014」の会場で行われた報道関係者向けのイベントで、パナソニックは同社の高級オーディオブランド『テクニクス(Technics)』を4年ぶりに復活すると発表した。
『テクニクス(Technics)』ブランドは、パナソニックの前身である松下電器産業が1965年に高級スピーカーの販売時に名乗り誕生した。その後、プレーヤーやアンプなどもラインナップに加え、1970年代からは輸出にも注力。ヨーロッパなどでは一時期、高級オーディオ市場で上位のシェアを獲得していた。
パナソニックでは、近年のインターネットを活用してダウンロードした楽曲を、スマートフォンや携帯型の音楽プレーヤーなどで手軽に聴く人が増えた音楽市場の変化に対応して、部屋で落ち着いて楽しむ大型オーディオ機器の製造・販売の事業を一旦、中止していた。それでも、打ち切り直前の2008年に発売のDJ用ターンテーブル「SL-1200MK6」は、操作性や品質の良さから世界中で累計350万台以上を販売。しかし、これも2010年に生産終了し、同時に『テクニクス(Technics)』ブランドは閉鎖されたのだ。
しかしここにきて、市況に変化が現れてきた。それはCDの3倍超の情報量を持つ高解像度音楽データの新規格「ハイレゾリューション(ハイレゾ)音源」の登場である。また大容量高速通信の環境が整備され、ダウンロード形式でもハイレゾ音質の楽曲の入手が可能となり、ハイレゾ音源のダウンロード・ビジネスが急速に普及の兆しを見せ始めた。日本国内では、オンキヨーやソニー、海外では米HDトラックスや英リンレコーズが既にハイレゾ音源を配信している。
CDを大幅に上回る超高音質が特徴で、これにより富裕層や音質にこだわるハイレベルな音楽ファンがハイレゾ対応の機器を購入する動きも広がり、高級オーディオの需要が再度拡大すると判断したようだ。
今回発表された新製品は、最先端のデジタル技術を駆使してノイズや音のひずみを抑え、ハイレゾ音源の原音を忠実に再現する高性能な製品となっており、一般の普及オーディオ製品とは一線を画したものとなっている。超高級版のリファレンス「R1」シリーズが4万ユーロ(約550万円)、高級版のC700シリーズが4千ユーロ(約55万円)で、この2モデルを今年(2014年)の12月から、まずは現在も『テクニクス(Technics)』ブランドの認知度が高く、高級オーディオ市場の堅調なヨーロッパで販売を開始する。また、日本にも今年度中には投入の予定で、車載オーディオ市場への参入も視野に入れているという。
ちなみにパナソニックによると、高級オーディオの世界市場は2013年に約1千億円で、今後も堅調が見込めるという。同社は復活した『テクニクス(Technics)』ブランドを更に拡充し、2018年度には100億円の売り上げを目指しており、オーディオ事業全体でも売上高を2013年度の1.5倍に拡大、黒字転換を目標としている。
『テクニクス(Technics)』ブランド等のサブ・ブランドの復活に関しては、パナソニックは2008年の社名変更以降、2011年のパナソニック電工、三洋電機の完全子会社化を経て、ブランドの統一を推進してきた。そして、このブランドの統一は一定の成果を上げたと判断されているが、しかし今後、商品特性や購買層、地域ごとの消費者ニーズに応じて、最適なブランドを展開するマルチブランド戦略に再度転換する方針で、これに基づいたものとされている。
オーディオ・家電各社ともハイレゾ市場に力をいれている。また我が国ではオーディオ機器の売上高の20%以上が既にハイレゾ関連といわれており、ソニーやパイオニア、ヤマハなども対応を強化している。
時代はハイレゾ対応なのだ・・・。そのハイレゾで高級オーディオ市場が再び活況となれば、喜ばしい限りである。
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