【訃報】 『李香蘭』こと山口淑子さん死去!! 〈2370JKI00〉

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若い人たちは知らないと思うが、戦前、本当は日本人なのに中国人としてデビューして人気を博した女優さんがいたことを・・・。

その名は『李香蘭』。戦後も山口淑子として女優や歌手として活躍し、また参議院議員を3期務めた。

その山口淑子さんが、9月7日に心不全のため亡くなったという。享年94歳。

 

戦前・戦争中は中国人女優・歌手の『李香蘭(り・こうらん)』として活躍。戦後は日本で女優・歌手として活動、参院議員も務めた山口淑子(やまぐち・よしこ、本名:大鷹淑子=おおたか・よしこ)さんが9月7日午前10時42分、心不全のため東京都内千代田区一番町の自宅で亡くなった。

山口さんは、体調を崩して3年ほど前から入退院を繰り返していたという。94歳だった。葬儀・告別式は親族・近親者のみで執り行われた。

 

戦前・戦争中、日本人であることを偽り中国人名『李香蘭』の名前で女優として歌や映画で活躍し一世を風靡ふうびした彼女だが、戦後はテレビ番組の司会者や参議院議員も務めた山口淑子さんである。

1920年(大正9年)、旧満州の奉天(現在の瀋陽)郊外の北煙台に生まれた。両親は日本人であったが、1933年に中国人の養女となり、李香蘭と名付けられたという。単身、北京に留学して女学校を卒業した後に、1938年(昭和13年)に18歳で、満州映画協会(満映)から中国人の満映専属女優『李香蘭』としてデビュー。

リコウラン251jrIcIf52L._SX425_歌舞伎界出身の二枚目俳優 長谷川一夫さんと共演した映画『白蘭の歌』や『支那の夜』、そして『熱砂の誓ひ』の3部作は大ヒットを記録した。歌手としても人気を集め、映画『支那の夜』の劇中歌『蘇州夜曲』、『夜来香』、また『防空歌』などのヒット曲を連発した。

1941年(昭和16年)の日劇公演では、入場券を求める人々が劇場入口から延々と列をつくり「日劇七回り半事件」と呼ばれたほどの、人気ぶりであったという。

上海で終戦を迎え、漢奸(かんがん:売国奴=対日協力者)の疑いで軍事裁判で訴追されるが、日本国籍であることが証明され1946年に命辛々帰国を果たす。

戦後は、日本名の山口淑子で1948年に『わが生涯のかがやける日』で映画界に本格復帰した。その後、『暁の脱走』や黒沢明監督の『醜聞(スキャンダル)』などの映画に出演し芸能活動を展開。

米国でも『シャーリー・ヤマグチ』と名乗り、舞台や映画で活躍した。また彫刻家のイサム・ノグチ氏との結婚、そして離婚を経て、外交官の大鷹弘氏と再婚する。その後、1958年(昭和33年)に彼女の芸能生活20周年記念映画『東京の休日』を最後に映画界からは引退した。

1969年(昭和44年)にフジテレビ系列のワイドショー『3時のあなた』(木・金曜日、一部水曜日)の司会者として芸能界に復帰する。また、取材でたびたび中東地域を訪れパレスチナ問題のリポーター役などを務めた。

 

1974年(昭和49年)には、当時の自民党総裁、田中角栄総理大臣からの誘いを受けて参議院議員選挙全国区に立候補して初当選した。以降、1992年まで3期18年にわたり参院議員を務め、環境政務次官にも就任した。

また、昨今話題の「従軍慰安婦」問題では、賠償事業を行う民間の基金「アジア女性基金」の創設などに尽力した。

 

著書に『“李香蘭”を生きて』などがあるが、特に昭和62年に出版した自伝の『李香蘭・私の半生』はベストセラーとなり、これを題材とした劇団四季の『ミュージカル 李香蘭』(1991年/平成3年初演)は大好評となった。その後、平成5年には勲二等宝冠章を受章していた。

 

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李香蘭/山口淑子

彼女は、満映が試みた国策映画による文化的侵略で、日本語が堪能な中国人ヒロインとして日本人ファンに支持される一方で、ラジオを通じて流れる彼女の(中国語による)歌声は、抗日戦下にあった中国民衆の心をも魅了したという。つまり、実際は日本人であった『李香蘭』は、偽りの中国人として、戦時下の東アジア地域で最も広く知られた女優であり歌手だったのだ。

山口さんの訃報を受けて、9月14日には中国関係者らが哀悼の意を示したそうだ。また、その死去を報じた中国メディアは、『李香蘭』を「旧上海の7大女流歌手」と呼び、そして『夜来香』も「歌い継がれる名曲」であるとした。

 

戦前・戦中は、女優『李香蘭』として日本の軍国主義に翻弄され、戦禍と混乱の時代に日中二つの祖国を生きた山口さんだが、一転、戦後は日本の芸能界で華々しく活躍し、そして政治家として真摯に活動した。

まさしく彼女は、激動の昭和史の象徴的な人間、と言ってもよいだろう‥‥、ご冥福を祈る。

-終-

 

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投稿者: 准将

何にでも好奇心旺盛なオジサン。本来の職業はビジネス・コンサルとマーケッター。興味・関心のある分野は『歴史』、中でも『近・現代史』と『軍事史』が専門だ。またエンタメ系のコンテンツ(音楽・映画・ゲーム・マンガなど)には仕事の関係で随分と係わってきた。今後のライフワークとして儒学、特に陽明学を研究する予定である。kijidasu! 認定投稿者第一号でもある。