【2016年9月追補】約2,000年以上前に地中海で沈んだ舟に載っていた小さな「機械」、それが「アンティキティラ島の機械」です。
今から115年ほど前に海綿採りの潜水夫によって発見されました。
写真で観ると、たしかにこの「機械」は何らかの計算機のようです。人類が作り上げた「最古のコンピューター」と称されるのもうなづける様な外見ですが・・・。
ギリシャの南方にあたるクレタ(Crete)島とペロポネソス(Peloponnese)半島の間に位置するアンティキティラ(Antikythera)島の沖合で、1900年~1901年に海綿を採取する潜水夫たちによって発見・回収されたのが「アンティキティラ島の機械(Antikythera Mechanism)」です。
回収当時は、同時に引き揚げられた大理石やブロンズの彫像などに注目が集まり、この「機械」の存在は誰もが気に留めませんでした。また、この引揚げ作業が、考古学的な目的で調査された史上初のサルベージ行為だったということは有名です。
さてしかし、当初の過小評価(単なる玩具、ガラクタ扱い)から一変、やがてこの「機械」に関して非常に驚くべき発見があったということが発表されました。
それは数多くの歯車を組み合わせた非常に精密な青銅製の機械で、最初は航海用のナビゲーターの一種であるとか、もしくはアストロラーベ(星座早見盤のようなもの)とされていました。
発見された印象的な4本のスポークがある大きな歯車部分(上記写真)の直径は約13cmで、それ以外にも多数の破片と、収納されていたと思しき木箱の残骸がありました。
その後、数十年を経過する中で、いろいろな推論がなされていきましたが、刻まれていた古代文字の解読も進み、科学技術の発達で新たな調査技法も取り入れられて、現在では、古代ギリシャ人が製作した星々の運行に関する機械式万能計算機(天文計算機)であると考えられています。
この天文計算機は、過去、現在、未来の天体の動きを計算して、星座、太陽や月、そして各惑星の運行、また月の満ち欠けや、更には日食や月食のタイミングや期間などの計算が可能だったと思われています。
またこの「機械」は、約40個の銅製の歯車からなる非常に複雑な構造ですが、この歯車は(今のところ)現存する人類史上で最も古いものと云われています。
そして複雑な演算を行う計算機の仕組みをもっていることから、人類最古のコンピューターともされています。
一緒に引き揚げられたアンフォラと呼ばれる土器の調査や、機械が収められていた木箱の片の放射性炭素年代測定法により、また機械に刻まれていた古代ギリシャ文字の解析などから、この「機械」の成立年代が紀元前1世紀くらいであることは、ほぼ確定しています。
この「機械」と同じレベルの機能を備えた天文計算機がヨーロッパ諸国で製作されるようになったのは、はるか後年、1500年以上も経てからのことでしたから、やはり驚くべき発見であることは確かです。
しかし依然として、誰がどの様に作ったのか? は謎に包まれたままですが、優れた天文学の知識と非常に秀でた工作技術を持った人物が、極めて丁寧に作ったことは間違いありません。
現在では、「アンティキティラ島の機械」を載せていた舟はローマに戦利品を輸送中に遭難したもので、紀元前70年から60年頃にローマを目指して小アジアのペルガモンを出帆し、おそらくアレキサンドリアを経て次にロードス島に寄港したと推測されています。
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