【太平洋戦争】 激闘 日本海軍 駆逐艦物語!! 〈3JKI00〉

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日本海軍最速の駆逐艦「島風」

太平洋戦争において、日本海軍の駆逐艦は常に第一線戦域に投入され非常に損耗率が高かった。

本来の任務はもとより、輸送船や損傷艦の護衛、戦闘下での危険な救出・救助活動、物資や兵員の輸送任務まで、ありとあらゆる過酷で困難な任務に従事した。そんな中から著名な殊勲艦名艦長たちを紹介する。

 

激闘 『夕立』

夕立eb93f57bd79b8c32f86b5fc7d075c4b4-300x115『夕立』は「初春」クラスの改良型である「白露」クラスの一隻。駆逐艦としてこのクラスが初めて九四式方位盤を装備し、魚雷発射管が4連装となったことも特徴だ。

1942年(昭和17年)11月14日から翌15日にかけての第三次ソロモン海戦の第一夜戦において、日本艦隊の前衛として混戦の最中に米艦隊内に単艦で突入し、その隊列を混乱に陥れ多大の戦果を挙げたが、敵艦隊の攻撃により沈没し、生存者は「五月雨」と「雷」に救助された。

沈没した『夕立』の艦長は吉川潔中佐:海兵50期。救助された翌日の戦闘にも「五月雨」に同乗して、闘志満々で参加した。『夕立』艦長の前は「黒潮」の艦長としてバリ島沖海戦で大活躍している。しかしその後、残念ながら駆逐艦「大波」の艦長としてセント・ジョージ岬沖海戦にて戦死、広島県広島市出身。「不滅の駆逐艦長」と称され、異例の二階級特進で戦死後に提督:少将に進級。高級幹部ではない現場指揮官ながら、抜群の軍功で勇名を馳せた。

基準排水量:1,685t 水線長:107.5m 最大幅:9.9m 馬力:42,000hp 速力;34ノット 兵装:主砲12.7cm×5 魚雷61cm×8

 

奮戦 『綾波』

綾波c6101343734b58f15eb9f50f35eb174b-300x192完成当時は世界最強の駆逐艦といわれた、いわゆる特型「吹雪」クラスの『綾波』は、砲装の変更で特型Ⅱ型とも呼ばれた。

第三次ソロモン海戦の第二夜戦で、『綾波』は第三水雷戦隊の一員としてサボ島に向かったが、他の味方艦隊と離れ戦艦2隻駆逐艦4隻の米国艦隊に対してただ一隻で突入した。強力な戦艦を含む敵艦隊に単艦で挑み、敵駆逐艦3隻を撃沈し1隻を大破させたが、敵の集中砲火を浴びて炎上、弾薬庫が爆発して沈没した。しかし、駆逐艦1隻としては特筆すべき大戦果であった。

沈没した当時の『綾波』艦長は作間英邇中佐。生存乗組員の一部と共にカッターでガダルカナル島に上陸し、二週間後に潜水艦で帰還し九死に一生を得る。また大和特攻では第四十三駆逐隊司令として駆逐艦「桐」に座乗し豊後水道まで同行したが、第四十三駆逐隊は急遽命令により引き返し、結果としてこの時も生き延びることになった。終戦時の最終階級は大佐。

基準排水量:1,680t 水線長:115.3m 最大幅:10.36m 馬力:50,000hp 速力;38ノット 兵装:主砲12.7cm×6 魚雷61cm×9

 

孤軍 『初月』

初月f6f164c4a227110884a4563e615568e9-300x175空母直衛の防空駆逐艦として誕生したのが「秋月」クラス。『初月』はその4番艦である。

航続距離の長い空母機動部隊に随伴するために大量の燃料を搭載し、搭載機の発艦時に30kn以上で航行する空母に合わせた高速性能が要求された。結果として艦形は大型化し日本海軍最大級の駆逐艦となった。主砲である長砲身65口径10cm高角砲は初速1,010m/秒、最大射程19,500m、最大射高14,700mの高性能を誇った。(砲性能には諸説あり)

1944年(昭和19年)10月25日、米軍のフィリピン攻撃に際し、『初月』の所属している小澤中将率いる空母機動部隊(第三艦隊)は囮となって戦艦中心の第二艦隊(司令長官:栗田中将)ほかのレイテ湾突入を成功させようとした。この小澤機動部隊は多くの艦船を米軍空母機の来襲で失いながらも有力な米軍艦隊を北方に引き付けることに成功した。空母機が撃ち漏らした日本機動部隊の残存艦艇を葬る為に北進した巡洋艦3隻と10隻以上の駆逐艦を基幹とするデュボース少将の部隊は、損傷して漂流中の空母「千代田」を発見し一方的に撃沈した。その後、米軍艦隊は更に北上し小澤機動部隊を追撃、巡洋艦「五十鈴」と2隻の駆逐艦、『初月』と「若月」を発見、砲撃を開始した。突然の砲撃を受けたものの『初月』は「敵水上艦艇ト交戦中」と打電し、他の日本側の2艦ともども直ちに離脱を図り煙幕を張って逃走を開始した。しかし練度の低い「五十鈴」と「若月」を庇うために、また他の日本機動部隊の残存艦を救う目的で、『初月』は単艦反転し米軍部隊へと突撃した。しかし残り魚雷の既に無い状態の中、魚雷攻撃を仕掛けるふりをしながら必死で時間を稼いだが、やがて一方的に集中砲火を受け沈没した。尚、この時、米軍側は『初月』を巡洋艦だと判断しており、デュボース少将は13対1の劣勢をものともせずに果敢に挑戦してきた『初月』の奮戦を称えた。

この『初月』の孤軍奮闘により小澤機動部隊の残存艦は脱出に成功した。しかし救助した空母「瑞鶴」の生存者866名と、第61駆逐隊司令の天野重隆大佐:海兵47期(戦死後少将に進級)及び橋本金松艦長:海兵55期石川県出身(戦死により大佐)以下、全乗組員が戦死した。因みに、「瑞鶴」救助中の『初月』の内火艇が生還したようである。

基準排水量:2,701t 水線長:132.0m 最大幅:11.6m 馬力:52,000hp 速力;33ノット 兵装:主砲10.0cm高×8 魚雷61cm×4

 

武勲 『時雨』

時雨f8e67b8fff86614596d5f781e7bc1493-300x155『時雨(しぐれ)』は「白露」クラスの2番艦であり、「呉の雪風、佐世保の時雨」と並び称された武勲艦だ。

1942年(昭和17年)5月8日の珊瑚海海戦に出撃、ミッドウェー海戦には途中まで参加した。8月にはマーシャル諸島付近で活動し、以後、ガダルカナル島への兵員・物資の輸送作戦にも10回ほど従事した。11月12日に第三次ソロモン海戦で損傷し、トラック島で応急修理を受けた。

以降、ベラ湾夜戦、第一次ベララベラ海戦、第二次ベララベラ海戦と戦い、その活躍は天皇にも言上・報告され賞賛された。またブーゲンビル島沖海戦では参加艦艇中、唯一無傷で帰投した。

1944年(昭和19年)2月17日のトラック大空襲の時は真っ先に外海に向けて退避行動を始めたが、内水路で敵の艦爆35機の襲撃を受けた。回避行動の取れない水路のため、ひたすら直進するのみであったが猛烈な対空射撃を実施し12機の米軍機を撃墜、第二煙突付近に損傷を受けるも外海に到達することができた。

その後、マリアナ沖海戦でも生還を果した『時雨』は、レイテ沖海戦では西村艦隊に属しスリガオ海峡海戦を生き延び唯一生還した艦となった。煙幕の中を、戦艦6隻、巡洋艦8隻という優勢な米艦隊のレーダー射撃を受けながら、右に左に回頭しながら突進したが味方の艦隊は『時雨』を除き全滅(一旦退避した重巡洋艦「最上」は損傷がひどく後に処分)した。当時の艦長は、西野繁中佐:海兵55期で、その操艦技能とリーダーシップで終戦まで生き延びた。

1945年(昭和20年)1月24日、マレー半島東岸のタイランド湾で「ヒ87A船団」の「さらわく丸」を護衛中、米潜水艦「ブラックフィン」の雷撃を受け沈没した。尚、1944年12月1日以降の艦長は、荻原学少佐である。

基準排水量:1,685t 水線長:107.5m 最大幅:9.9m 馬力:42,000hp 速力;34ノット 兵装:主砲12.7cm×5 魚雷61cm×8

 

強運 『雪風』

雪風baba77220c7290993a29ef66b2fff293-300x174『雪風』は終戦まで生き残った唯一の駆逐艦で「陽炎」クラスの一艦。緒戦の真珠湾攻撃から大和沖縄特攻まで16回以上の主要な作戦に従事し、戦果を挙げながらも無傷で生き残り終戦を迎えた「奇跡の駆逐艦」として大変有名である。『雪風』と並ぶ(激戦の中で生き残った)幸運艦には、駆逐艦「時雨」、空母「瑞鶴」、軽巡洋艦「大淀」などがあったが、いずれも終戦までには没している。

最後の(4代目)艦長は寺内正道中佐で、90kg近い巨漢。大の酒豪で、まさに豪傑を絵で書いた様な人で「ワシがいるかぎり雪風は沈まん」と豪語していた。マリアナ沖海戦やレイテ沖海戦でも活躍したが、大和沖縄特攻時にも『雪風』は奮闘し、寺内艦長は絶望的な闘いの中でも最後まで闘志を失わなかった。後に、寺内は『雪風』が沈まなかった理由について、“乗組員が皆、優秀であると同時に「やはり運だろう」”と述べたという。

基準排水量:2,000t 水線長:116.2m 最大幅:10.8m 馬力:52,000hp 速力;35ノット 兵装:主砲12.7cm×6 魚雷61cm×8

 

次回は筆者の最も好きな艦種である巡洋艦に触れてみたい。乞うご期待!!

-終-

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