何だか油断している内に、世界中が大変なことになっているみたいです。「今後60日で人類とエボラの勝敗が決まる」なんて言われると只事ではない訳で、心配が募ります。
今更ながら、ではありますが、改めて『エボラ出血熱』について基本的なことをおさらいしてみました・・・。
アンソニー・バンブリィ(Anthony Banbury)国連エボラ出血熱対策部門特別代表が、「極めて深く憂慮している。」と安保理理事会で述べたそうです。
流行拡大を抑えるためには、少なくとも感染死亡者の70%を、他者への感染が発生しない状態で隔離して埋葬する必要があるそうです。
バンブリィ特別代表は「10月1日から(11月末まで)の60日間が勝負だ。」「そしてこれに失敗した場合、私たち(人類)は完全に敗北する。」とも語りました。
そんなことを急に言われても、困ります。対岸の火事と思っていたこの『エボラ出血熱』という病気が、俄かに途轍もない心配の種と思えてきました。しかし改めて考えてみると、恥ずかしながら、この病気についてよく知りません。
そこで先ずは、基本的なことから調べてみました・・・。
■エボラ出血熱とはどのような病気か?
エボラ出血熱(Ebola hemorrhagic fever、もしくは、エボラウイルス病 Ebola virus disease – EVD)は、エボラウイルスによる感染症で出血熱の一つとされます。
またこの病気は、1976年6月にスーダン(現在に南スーダン)のヌザラ (Nzara) という町で初めて発見されましたが、『エボラ』の名は、初期の患者の出身地域であるコンゴ民主共和国(旧ザイール)の北部を流れるエボラ川に由来します。
エボラウイルスは、マールブルグウイルスと共にフィロウイルス科に属します。その大きさは80~800ナノメートルの細長いRNAウイルスであり、ひも状、U字型、ぜんまい型など形は決まっておらず多種多様の形態をしています。
このウイルスは、体細胞の構成要素であるタンパク質を分解することで、大変凶暴な毒性を発揮します。
エボラウイルスは人間にも感染し、50-80%という高い致死率を持つタイプも存在します。即ち、人類が発見したウイルスの内で最も危険なウイルスの1つとされているのです。
エボラウイルスに感染すると、2~21日(通常7日~10日)程度の潜伏期の後、発熱や頭痛、喉(のど)の痛みが現れます。次に、下痢や嘔吐、肝臓・腎臓機能の異常が生じて、末期には吐血や下血をして死に至ります。
現状では、エボラ出血熱に対するワクチンや効果的な治療法がないため、対処方法は、患者の症状に応じた治療(対症療法)を行うしかありません。現在、全世界でワクチンの開発が急ぎ進められていますが、実用化までには通常数年を要すため、今回の流行には間に合わないとされています。
しかし、感染した米国人医療関係者の2人に対して緊急投与された実験用の抗体治療剤「ZMapp」の効果があったことから、この未承認薬のエボラ出血熱患者への投与の許可を求める申請がWHO(世界保健機関)になされて、暫定的に承認されました。
ちなみに、我国の富士フイルムグループの富山化学工業(東京、菅田益司社長)が開発したインフルエンザ治療薬「ファビピラビル」が、感染抑制につながる可能性があるとのことで、国際的に期待が膨らんでいます。
また、ロシアで2種類のワクチンが開発されたとの情報もありますが、まだ効果の程は分かりません。
ワクチン以外の対策としては、エボラ出血熱に感染した後に回復した元患者には抗体ができるので、現状では、そのような元患者の血液や血清の投与が唯一の有効な治療法とされています。
エボラウイルスには、患者の血液を含む体液などに触れることで感染するとされ、空気感染はせず(一時期、空気感染の可能性も指摘された)、発症していない場合の感染もないとされています。
また、人体内にわずか数個のエボラウィルスが侵入しただけでも発症するとされますが、現在まで、その感染のメカニズムについての詳細な解明はなされていません。その為、エボラウィルスはWHOのリスクグループ4の病原体に指定されており、バイオセーフティーレベル(BSL)は最高度の4が要求されています。
世界の中で、アフリカ中央部、西アフリカ、南アフリカでの発症が見られますが、フィリピンでは、感染したカニクイザルと豚が発見されています。
未だ自然宿主の特定には至ってはいませんが、コウモリが有力とされています。猿(サル)からの感染例もありますが、キャリアではなく人間と同様に終末宿主とされています。
またエボラウイルスの感染について、マラリア原虫を媒介するハマダラカが吸血したての人の新鮮血を用いて媒介しているという学説がありますが、吸血後、何時間以内に刺咬されたらエボラウイルスが感染する確率があるのか、研究成果が待たれるところです。
■今回の流行の経緯
本年(2014年)の1月~3月にギニアで第一波の流行が発生し、西アフリカでの流行は今回が初めてでしたが、リベリアやシエラレオネ、ナイジェリアなどに急速に拡大していきました。
一時期、ギニアにおいては症例数が減少傾向にありましたが、第二波の感染が5月に始まり現在に至るまで継続しており、ギニア・リベリア以外に、シエラレオネにおいても多数の症例が報告されています。
WHOはこの様な経緯を受けて、8月8日には「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」(PHEIC)を宣言し、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は最高度の緊急体制に入っています。
9月18日には、国連安全保障理事会は今回のエボラ出血熱の流行に関する緊急会合を開き、決議2177号を出しました。 9月21日現在、WHOの公式発表では、感染は5カ国に及び合計感染者は6,263名で、死亡者は2,917名となっています。しかしCDCは、その感染者の実数は約2.5倍(1.5万人~2万人)であろうと推定しており、WHOも未報告例が多いことを認めています。
先月(9月)末に開催された国連総会でも、記事冒頭のバンブリィ特別代表の発言のように、このエボラ出血熱の流行は2大議題の一つとなり注目を集めました。
この流行の原因については、医療器具の不足や行政によるエボラ出血熱に関する情報の徹底不足と民衆の無知、また、これらの地域で行われていた葬送の風習(遺体に直接触れて清めること)が、感染の拡大に寄与したと考えられています。
更に、現地で治療・看護に当たった医療従事者が、米国や欧州の母国などに帰国して発症し、更にその患者に対応した医療関係者が発病する事態に至っています。
医療従事者に感染が広まっている傾向に関しては、接触感染予防対策が適切になされていないことや、医療施設が対策を適切な実施ができない環境にあることが、その原因とされています。
■我国の対応は?
幸いにして、まだ我国では感染者・患者が確認されていませんが、元厚生労働省幹部によると、「日本はまだエボラの対応はできていないのが実情」とのことでおり、早急に具体的な対応策が必要とされます。
最悪なシナリオとしては、西アフリカ地域に渡航したり、または経由して移動していた人物が発症前に日本に帰国 or 入国し、発熱等の症状が具体化したことで地域の一般医院や病院を突然受診する場合です。
現状では、多くの病院で、BSL4のレベルに対処可能な全身を完全に覆う防護服の準備は無く、エボラ患者を想定した実地訓練も実施していません。患者はもちろん、医療機関側も全くエボラウイルスの感染予防の対応が整っていないため、高度に危険な状態に陥ることは免れません。
同様に問題なのが、我国ではこの様な危険なウイルスを調べる体制が整っておらず、確実な診断や調査ができないことです。
これは、WHOが定めた前述のBSOのレベル4に相当する最も危険度が高いウイルスに関して取り扱う能力を備えた施設・設備そのものはあるのですが、現状では制度上、取り扱いが許されていないためです。
国立感染症研究所村山庁舎(東京都武蔵村山市)と理化学研究所バイオリソースセンター(茨城県つくば市)がその施設なのですが、地元住民の同意が得られないなどの理由から、現在も最高レベルでの運用は許可されていないのです。
その為、ウイルスを取り出したり、培養したりすることは出来ず、確実に感染しているとの判断は難しいようです。つまり、厚生労働省の担当者によると「現状では感染の疑いの有無までしか調べられない」とのことです。
多くの専門家は、より詳しい感染経路の調査やワクチン開発の為にも、培養が可能な施設の必要性を指摘していますが、厚生労働省によると万一、エボラ出血熱が国内に入ってきても準備態勢は整えてあり、制限はあるが対応はできる、としています。
しばらく、そうですね取り敢えずは11月末頃までは、私たちには様子を観るしか出来ることはありません。手洗い、うがいの励行では風邪やインフルエンザの予防には役立つでしょうが、エボラ出血熱の対策になりませんしね・・・。
厚生労働省の説明を鵜呑みにするのも怖いのですが、さりとて、何かしようにも一介の主婦には力不足、固唾を飲んで見守るしかありません!!
-終-
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