エボラ出血熱が世界的に流行する兆しを見せており、感染パンデミックものの映画『アウトブレイク』(1995年)を思い起こさせます。エボラ出血熱を題材としたウィルス感染に立ち向かう人々を描いたパニック映画でした。
その他にも幾つかの記憶に残る感染パンデミック・サスペンス映画があるので、是非、紹介したいと思います・・・。
『アウトブレイク』
ウォルフガング・ペーターゼン監督の『アウトブレイク(OUTBREAK)』は1995年のアメリカ映画です。出演はダスティン・ホフマン、レネ・ルッソ、モーガン・フリーマン、ドナルド・サザーランドほか。
アフリカ奥地で発生した非常に致死性の高い未知の伝染病がアメリカに持ち込まれ、地方都市で感染が始まってしまいます。
町は完全に隔離され厳戒の防護措置が取られますが、ウイルスの猛威は止みません。米陸軍伝染病医学研究所のサム・ダニエルズ大佐(ホフマン)はウィルスの謎を必死で解明しようとしますが・・・。
劇中でモターバ・ウイルスと名付けられたウイルスが、エボラ・ウイルスをモデルとしているのは間違いありませんが、ウィルス感染の恐怖と、それに遭遇した人々がパニックに陥る様子が、エボラ出血熱の脅威に晒されている現実と照らし合わせて、他人事ではありません・・・。
しかしこの映画、無理やり設定した後半のアクション・シーンや軍上層部の不自然な隠蔽工作が盛り込まれていなければ傑作だったと思いますが、エボラ出血熱などの感染症の怖さを体験できる映画の代表作であることは誰もが認めることでしょう。
『感染列島』
『感染列島』は2009年に公開された日本の映画で、救命救急医を演じる妻夫木聡を主人公に、人類が初めて遭遇する感染症と戦う医師たちを描くパンデミック・サスペンス作品です。
共演は、WHO(世界保健機関)から派遣されたメディカル・オフィサー役に壇れい、感染してしまう先輩医師役に佐藤浩市、同じく感染する看護婦役の国仲涼子など。また監督は、『雷魚』や『泪壺』の瀬々敬久がメガホンを取りました。
映画評は残念なものが多かった様ですが、 公開当時、SARS(サーズ)や鳥インフルエンザ流行の問題と相俟って、その題材とストーリーが大きな注目を集めました。
『コンテイジョン』
スティーヴン・ソダーバーグ監督の『コンテイジョン(CONTAGION)』は、マット・デイモン、ジュード・ロウらが出演した2011年公開のパンデミック・サスペンス映画。その他の共演に、グウィネス・パルトロー、ケイト・ウィンスレットなど。
まるでドキュメンタリーの様な、CDC(米疾病予防管理センター)などから提供された現実の情報に基づいた、大変リアリティのある描写に驚かされます。アメリカ各地はもとより、ロンドン、東京、香港などの国際的な大都市で、未知の致死性ウイルスが蔓延していく様子を極めて客観的な手法で描写していきます。
世界におけるグローバル化の進展と大都市への人口集中が、よりパンデミックのリスクを大きくしているかを示している映画であり、また、ネット社会の情報の伝播・撹拌の仕方にも一石を投じています。
『アンドロメダ・ストレイン』
『アンドロメダ・ストレイン(The Andromeda Strain)』は、1971年のロバート・ワイズ監督による映画作品です。主人公のジェレミー・ストーン博士役には、アーサー・ヒル(カナダ出身の舞台・映画俳優)。
マイケル・クライトンのSF小説『アンドロメダ病原体』を原作として、宇宙からやって来た謎の病原体の感染とその解明の様子を描きます。
尚、原作の小説『アンドロメダ病原体』(1969年)を読んだ時、大きな衝撃を受けたのをよく覚えています。但し当時はパンデミックなどという言葉は知れれておらず、SF作品のひとつとして捉えていました。
2008年にTVシリーズでリメイクされ、好評を得ました。監督はミカエル・サロモンで、リドリー・スコットとトニー・スコットが製作総指揮です。主演はベンジャミン・ブラットが演じました。
『復活の日』
1980年に公開された小松左京の同名SF小説を映像化した作品で、製作は角川春樹、監督は深作欣二です。出演は草刈正雄、渡瀬恒彦、森田健作ほか。
物語は、1982年に東ドイツの研究所から盗み出された猛毒のウイルスMM-88が飛行機事故で拡散、やがて地球上に蔓延していく姿を描きます。
そして人類は、主人公の地震学者の吉住周三(草刈)などを含めた、南極大陸滞在の各国の観測隊員と潜水艦乗組員の一部以外は滅亡してしまいます。
その後、人類再生と文明の再建を目指す彼らに、更なる危機が判明します。それはアメリカ東部に巨大地震が発生する可能性であり、そして米ソ間の核ミサイル発射のARS(自動報復装置)起動を誘発するものでした。これらの核ミサイルは南極もターゲットとなっており、そこで主人公の吉住らはARS解除のために、ウイルスの待ち構えるアメリカ東部へと向かうことになります・・・。
『アンドロメダ・ストレイン』や『復活の日』は、現在からみると少々古めかしさが漂いますが、ウイルス感染の恐怖を描いた先駆的な映画です。
また『アウトブレイク』以降の作品は、充分、現実の感染症の恐ろしさを伝えるパンデミック・サスペンス映画となっていると思います。
-終-
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