香港で街頭デモを続ける学生や市民の間で、近辺にいるスマートフォン(iOS7系のもの)などのユーザーとメッセージのやりとりが出来る、『ファイアーチャット(Fire Chat)』というアプリが力を発揮しています。電話回線やインターネットを経由せずとも、マルチピア無線接続機能を利用して情報共有が可能な優れものです。
iOS7の新機能を活用したチャットアプリ『ファイアーチャット(Fire Chat)』を利用すれば、普通のネット環境がなくてもiPhoneやiPad、iPod touchなどを使って周りの人とチャットができるようになります。インターネットに繋がっていなくても大丈夫だし、また、どんなに使っても無料です。どんな処でも、互いにこのアプリを立ち上げればその場にいる他のiPhoneユーザーを見つけられます。
Apple社がiOS7に搭載したマルチピアの無線接続機能を使っているからで、『FireChat』はiOS7のために開発されました。
繰り返しになりますが、この『FireChat』を使えば約9メートル以内ならば電波なしで通話可能です。マルチピア無線接続機能により、約9メートル以内にいるiOS7を搭載したデバイス同士ならば、通信インフラや無線LANなどを使用せずに直接コミュニケーションすることが出来るのです。グループ間でチャットや写真の共有をしたり、周辺の人に限定して会話したり出来ます。
また世界中のどこでも利用可能であり、消費電力が低いので電池の寿命も長持ちするそうです。
更に近距離だけでなく、遠距離とのチャットも条件次第では可能となります。これは「グローバルモード」といい、もちろん、このモードも理論上は電波がなくても使用可能です。付近のデバイスを経由してリレー形式で伝達していく仕組みであり、各デバイスが次のネットワークパートとの節点になることにで、より遠く広い範囲と通信が可能となるのです。
『FireChat』は会員登録やログインなどの手続きも一切必要がなく、またユーザー名もいつでも変更が可能です。また、一旦アプリを閉じると過去のチャット内容は遡って閲覧出来ない仕組みとなっています。この様に『FireChat』は、極めて匿名性や秘匿性が高い仕様となっているのです。
既にこの『FireChat』アプリが、香港の民主化デモ活動でも大活躍をしていると伝えられています。
デモに参加している大学生によると、「携帯電話が使えなくても、周辺にいるiPhoneユーザーから警官隊やデモ隊の動きなど、1分間に数十もの情報が入ってくる」とのことです。
「武装警官隊が○○地区に配備された」とか「政府庁舎を包囲する学生数が不足しているので、応援よろしく」などといった言葉が次々に書き込まれ、どんどんと新たな情報が入ってきます。匿名の発信も多いので虚偽の情報もあるとみられますが、普通の携帯電話が使えない状況でも情報が途絶えることはありません。
また中国本土側では、香港の民主化デモに関連する報道を当局が検閲し、不適切と判断したものは削除や遮断していますが、『FireChat』はインターネットを経由しないため、現時点では、このアプリの使用を通じて一部の活動情報が本土側にも洩れ伝わっているようです。その結果、広東省側からも「香港の民主化運動を支持する」などという発言が書き込まれているそうです。
このアプリは、通常の携帯電話等が利用できない場所での連絡手段としてはもちろんのこと、イベントなどで、多くの他人と匿名で交流するという使用方法もあるでしょう。
しかしそれ以上に、大規模な自然災害の発災時や何らかの非常事態が起きた時などの通信インフラが途絶した状況を考慮すると、大いに役立つ可能性を持っていると思います。
アンドロイド(Android)系のデバイスとも互換性ができれば良いのですが、取り敢えずiOSユーザーは(無料なので)ダウンロードしてみてはいかがでしょうか・・・。
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