「なおざり」と「おざなり」はどう違うのでしょうか? 一見、似ている表現でしばしば混同して使用される様ですが、その意味は異なるようです・・・。
そうです、こんな時は知らぬが吉日!? 早速、調べてみましょう!!
「知らぬが吉日」なんて言葉はありませんが、疑問に思ったことは即日調べることにしています。疑問のまま放っておくと精神衛生上良くないし、疑問を抱いたこと自体を忘れてしまうことがよくあります。また、小まめに調べると確実に知識も増えていきます。
そこで「なおざり」と「おざなり」について調べてみました。どちらを使っても意味は同じようですが、実は明確な違いがありました。
それでは、「なおざり」と「おざなり」の意味の違いについて、ご紹介しましよう。
「なおざり」は漢字では「等閑」(漢語の「等閑(とうかん)」の当て字)と書きます。平安時代には頻繁に使用されていた古い言葉(当時の国語辞書に当たる『色葉字類抄(いろはじるいしょう)』にも「等閑(ナヲザリ)」として掲載)で、物事をいい加減に扱ったり、本気ではない様子を表す時に使われれていました。
この言葉は、以前のままの状態が続くことをあらわす「猶(なお)」、または、特に何も対応しないという意味の「直(なお)」という字に、避ける・よけるという意味の「避り(さり)、もしくは、遠ざけるとか、その場から離れるという意味の「去り(さり)」という言葉が加えられて成立したという説があります。
「なおざり」という言葉はそのため、「いい加減にしたまま、何もしない」または「いい加減にしたまま、放っておく」という意味で使われてきました。
次は「おざなり」です。漢字にすると「御座形」となりますが、「おざなり」は「なおざり」と比べると新しい言葉の様です。江戸時代以降になって使われだした幇間(ほうかん:幇間は宴席に出て客の遊びに興を添える仕事で、別称、太鼓持ち)の隠語だったという説が有力です。
「おざなり」という言葉は「お座」に「なり」という言葉が接続したものとされ、もともとは「お座敷の形(なり)」という言葉で、昔、お座敷や宴会の席で芸を披露していた人たちが、客の顔ぶれをみて芸に力を入れたり、手を抜いたりしていたために「それぞれ、お座敷なりに」という意味で「おざなり」が使われるようになったと云います。
「おざなり」は「その場だけ、適当に取り繕って済ませる」とか「その場しのぎのいい加減な行動」という意味で使われるのです。
「なおざり」と「おざなり」は、広義に物事をいい加減に扱うという意味では同義ですが、「なおざり」の方は、いい加減なまま「放っておく、放置する」もしくは「何もしない」ことをより強調している様です。
一方「おざなり」の方は、「対象のレベルに合わせて、それ相応(適当)に対応する」という意味が強くなります。
つまり、「なおざり」は「いい加減で、すべきことを何もしない」ことを指し、「まともに着手すらしない」のですが、「おざなり」は「いい加減だが、何等かの対応はする」ことを示す言葉で、「取り敢えずは、いい加減でもいいからやり終えている」のです。ですからそこには、明確な差異が存在していることになります。
急用があったので「おざなり」な仕事となった、は百歩譲って許せるかもしれませんが、その仕事を「なおざり」にされた、のでは大いに困りますよね・・・。
言葉の違いを知らずに使おうとすると、大変な誤解を招くことがあるので充分に注意したいものですが、最近では、相手側も知らない場合が多いので、そのままスルーされる事が殆どかも知れません(笑)。
-終-
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