今年(2014年)のベスト・デュエット・アルバムには、トニー・ベネットとレディー・ガガのコラボレーション・アルバム『チーク・トゥ・チーク』を薦めておこう!! 御大ベネットは当然だが、ガガって人は才能に溢れているね。あんな奇抜な格好さえしなければ、もっと好いのになぁ(笑)。
全米アルバム・チャート「ビルボード200」、「ジャズ・アルバム」チャート、「トラディショナル・ジャズ・アルバム」チャートにて各々1位を獲得した『チーク・トゥ・チーク』は、なんと年齢差60歳のトニー・ベネット(Tony Bennett、米国ニューヨークにて1926年8月3日の生まれ)とレディー・ガガ(Lady Gaga、1986年3月28日ニューヨーク生まれ)のジャズ・デュエット・アルバム。
「ビルボード200」全米チャートで1位となったことは、トニーにとっては史上最年長アーティストとして、ガガにとっては3作品連続となる記録的アルバムである。
全15曲が収録されており、日本盤には4曲のボーナストラックが追加収録されている。
本作は、アメリカの黄金時代といわれる1930年代の楽曲を中心にセレクトされた、ジャズ・ミュージックの名曲集である。
【収録曲】
01. エニシング・ゴーズ / Anything Goes
02. チーク・トゥ・チーク / Cheek To Cheek
03. ドント・ウェイト・トゥー・ロング / Don’t Wait Too Long
04. 捧ぐるは愛のみ / I Can’t Give You Anything But Love
05. ネイチャー・ボーイ / Nature Boy
06. グッディ・グッディ / Goody Goody
07. エヴリタイム・ウィ・セイ・グッドバイ / Ev’ry Time We Say Goodbye
08. ファイアーフライ / Firefly
09. アイ・ウォント・ダンス / I Won’t Dance
10. ゼイ・オール・ラーフド / They All Laughed
11. ラッシュ・ライフ / Lush Life
12. ソフィスティケイテッド・レディ / Sophisticated Lady
13. レッツ・フェイス・ザ・ミュージック・アンド・ダンス / Let’s Face The Music & Dance
14. バット・ビューティフル / But Beautiful
15. スウィングしなけりゃ意味がない / It Don’t Mean A Thing (If It Ain’t Got That Swing)
16. オン・ア・クリア・デイ / On A Clear Day (You Can See Forever) *
17. ビウィッチド / Bewitched *
18. ザ・レディーズ・イン・ラヴ・ウィズ・ユー / The Lady’s In Love With You *
19. ザ・レディ・イズ・ア・トランプ / The Lady Is A Tramp *
*:ボーナストラック
どの曲も著名なスタンダード・ナンバーばかりだが、軽快な曲調が好ましいタイトル曲『チーク・トゥ・チーク』 や『アイ・ウォント・ダンス』、文字通りのスイング感が堪らない『スイングしなけりゃ意味がない』、トニーとガガ、二人がしっとりと歌う『バット・ビューティフル』、トニーが渋く聴かせる『ソフィスティケイテッド・レディ』、ガガがソロで歌い上げる『エヴリ・タイム・ウィ・セイ・グッドバイ』、そして本作の白眉といえる『ラッシュ・ライフ』等々。このアルバムは、世代を超えたアメリカン・エンターテインメントの底力を発揮した、魅力溢れるジャズ音楽の世界である。
また、その奇抜なファッションや過激な言動など、音楽活動以外でも話題には事欠かないのがレディー・ガガだが、このアルバムでの彼女の歌唱力の高さには驚く人が多いはずだ。それも得意な現代風の楽曲ではなく、伝統的なスタンダードナンバーをこれだけ朗々と歌い上げる力量は凄い。
13歳の頃から、母親の影響でジャズ音楽に親しんだというガガは、ビリー・ホリデー(Billy Holiday)や、エラ・フィッジェラルド(Ella Fitzgerald)などの偉大なジャズシンガーの歌を聴くようになった。その後、近くの男子校のジャズバンドでヴォーカルを担当していたガガだが、或る日、学校の先生から勧められて、ビリー・ストレイホーン(Billy Strayhorn)の名曲『ラッシュ・ライフ(Lush Life)』を知り、その素晴らしい楽曲に感激したと云う。そしてその想い出の曲を、今作で披露している彼女の気持ちは如何ばかりのものだろうか・・・。
一方、実績充分の御大トニー・ベネットは過去にも多彩なゲストを迎えたデュエット・アルバムを複数発表しているが、本作でのガガとのマッチングは歴代のパートナーの中でも最高かも知れない。
因みに、トニーを知らない若いファンに向けて彼の代表曲を紹介しておくと、『ビコーズ・オブ・ユー(Because Of You)』や『コールド・コールド・ハート(Cold, Cold Heart)』、そして『霧のサンフランシスコ(I Left My Heart in San Francisco)』などがある。
アルバムではジャズファンの筆者の個人的な好みで申し訳けないが、ベイシー楽団をバックにスインギーに歌う『イン・パーソン』、アート・ブレイキーなどの有名ドラマーと共演した『ビート・オブ・マイ・ハート +6』やビル・エヴァンスとの共演版『トニー・ベネット&ビル・エヴァンス』、そしてMTVに出演した時のライブ版『MTV アンプラグド』などが記憶に残っている。1枚だけ選ぶならばアメリカン・スタンダード・ナンバーのベスト盤ともいえる『グレート・アメリカン・ソングブック』だろうか。また2000年代以降の数多くのデュエット・アルバムにも佳作が多い。
トニーとガガの二人は、2011年にニューヨークで開催されたチャリティーパーティで出会ったという。その後、トニーのアルバム『デュエッツII』に収録された『ザ・レディ・イズ・ア・トランプ』でコラボ、以降、交友関係が続き、本作の制作へと繋がったそうだ。
「『チーク・トゥ・チーク』は私とトニーの長年の友情と関係性から生まれた、とてもオーガニックな作品なの。」、「トニーにとって、このアルバムはジャズである必要があったの。私も幼いころからジャズを愛し、歌ってきたわ。今作では私のリアルな歌声を聴かせたかったの。この作品はジャズの名曲集だけど、モダンに仕上がっているアルバムよ」とガガは述べている。
またベネットは、「私は長年、アメリカのポピュラー音楽を歌ってきて、ポピュラー音楽とジャズをやってきた。レディー・ガガと共にアルバムを作ることは、とても素晴らしい経験になった。彼女はファンタスティックな歌手であり、私はガガのファンたちも彼女の声を聴いて楽しんでくれることを願う」と語ったという。
このアルバムの制作には1年以上が費やされたといい、ニューヨークで行われたレコーディングにはトニーのカルテットやガガのバンド・ミュージシャンが多数参加している。
この『チーク・トゥ・チーク』、レディー・ガガやトニー・ベネットのファンはもちろん、ジャズファン、ポップスファン全般にお薦めの奇跡の傑作デュエット・アルバムだ!!
-終-
《スポンサードリンク》