ヨーロッパ、特にフランスやイタリアを旅していると、飲食店に多くの種類があることに気が付きます。日本に帰国してからも西洋料理店を注意深く見廻すと、やはり多くの異なったネーミングがありました。そこには明確な区別などがあるのでしょうか? 改めて調べてみましたので、紹介します・・・。
イタリアの料理店の種類
先ずはイタリア料理店から。調べてみると次のように色々な種類がありました。
●バール(BAR)
立ち飲み・食い(カウンター)中心の、エスプレッソなどの喫茶店でありアルコールが楽しめるバーでもあります。飲み物の他にパニーノなどのパン系軽食やジェラートなども扱っており、早朝から深夜まで営業している店が多いので、朝食や遅めのランチにも便利です。屋内のテーブル席やオープンカフェみたいな屋外席を持つところもありますが、各々の席によって同じメニューでも値段が違うケースがあるので注意しましょう。イタリア人にはとても身近な存在の飲食店であり、地元の人々のコミュニケーションの場でもあります。
●タボラカルダ(TAVOLA CALDA)
タボラカルダ(温かいテーブルという意味)は、本来は惣菜屋のこと。または、惣菜を買って食べる場所、立ち食い惣菜屋。もともと都市部の商店街や市場などにある出来立ての温かい総菜を売る屋台のような店だそうです。日本では軽食堂・大衆食堂と訳されています。
●スパゲッテリア(SPAGHETTERIA)
スパゲッティーの専門店、パスタと(一部)軽食がある店も。日本だと蕎麦屋さんといったところ。
●ピッツェリア(PIZZERIA)
ピザ専門店、ピザを焼く専門の釜があるお店。ピザ以外のメイン料理もあるが、注文はピザと飲み物だけでも問題はない。日本だとお好み焼き屋さんになるのかなぁ。
●タベルナ(TAVERNA)
小規模の大衆食堂。家庭的な雰囲気で、気軽に食事やお酒が楽しめる食堂のこと。日本の小料理屋的な雰囲気で全く気取らずに気軽に飲食できるお店です。昔は街道沿いの旅行者向けの食堂で、現在ならば、さしずめドライブインと言ったところでしょうか。
●オステリア(OSTERIA)
現在では日本でいう居酒屋的な食堂のことを指します。ワインを中心に酒の品揃えが豊富にあり、主にアルコールを楽しむ事が目的のカジュアルな雰囲気の飲食店ですが、当然ながら食事も可能で、リストランテやトラットリアより庶民的とされますが、現実にはトラットリアとはさほど厳密には区別されていません。しかし、なかには価格的には高級店もありますから注意が必要です。歴史的には小さな旅籠/ホテルの食堂が、宿泊客以外の飲食客も外部から招き入れる形になり、オステリア(本来は旅籠の意)と呼ばれる様になりました。
タベルナもオステリアも、その名称は中世頃から使われていたと云います。しかし、この2つの機能的な差は見当たらず、実質的な区別はありません。
●トラットリア(TRATTORIA)
一般的な食堂のこと。リストランテ程ではないにしろ、前菜、パスタ、メイン、デザートなどのコース料理の注文もでき、アンティパストとパスタだけといった省略型の注文も可能な場合が多いみたいです。リストランテとの明確な違いの定義はなく、店によっては、リストランテに近い高級な処(座席料が請求される)もあれば、オステリアのような気安い食堂もあります。しかし実際にはどちらかと言うと、予算も低めで雰囲気も料理もカジュアルで大衆的な店の方が多いとされています。
●リストランテ(RISTORANTE)
高級な料理店。価格設定も高めで、座席料(コペルトCoperto)が取られます。また予約と正装(ドレスコード/服装チェックもあり)を心掛け、フルコースでの注文が望ましいとされています。また子供の年齢制限があるかどうか、事前に確認しましょう。更に、リストランテには基本的にはピザはメニューには無く、パスタだけを食べに行くような飲食店でもありません。
この呼び名は19世紀の中頃から使われており、本来、リストランテを名乗るには、前菜、魚料理、肉料理、野菜料理と分けられたコースメニューを用意し、パン等を自家製造したりデザート部門に専門要員を配し、ソムリエの雇用と独自のワインセラーの保有がなくてはなりませんでした。
しかし現在では、本家イタリアでもトラットリアとあまり区別の付かないようなリストランテもある様です。
フランスの料理店の種類
次はフランスですが、こちらも何種類かに分かれています。
●カフェ(café)
いわゆる喫茶店のことで、気軽にコーヒー(や紅茶)と軽食の利用が可能です。夕方以降はアルコールを楽しめる店も多い様です。ドレスコード(服装制限)も特になく気軽な服装でOK。子供の年齢制限もほぼ無いと思ってよいでしょう。
●ブラッスリー(Brasserie)
もともとはビール製造所という意味でした。ビールなどの酒類が飲める大衆居酒屋的な飲食店(本来は「ビールと食事の店」)のことですが、アルザス料理を出す店という意味もあります。前者は庶民的・大衆的ですが、後者は高級店の場合もあるので注意が必要です。
通常のブラッスリーでは、ドレスコードは特になく気軽な服装でOKです。子供の年齢制限も、ほぼ無いと思ってよいでしょう。
●ビストロ(bistro)
日本での居酒屋という意味に近く手頃な値段で、酒類と食事が楽しめる食堂です。特に食事の作法もうるさくなく、気安く賑やかな雰囲気です。ドレスコードも特に無く気軽な服装でOKです。また子供の年齢制限も無いと思ってよいでしょう。
●レストラン(Restaurant)
高級な料理店で、食事の作法とドレスコードが要求されます。利用の際は予約が必要であり、一般的に男性はジャケット着用、女性はワンピース等フォーマルな服装を求められます。子供の年齢制限がある場合もあります。
由来は、フランス語で「回復する、元気づける」という意味のrestaurer からと云われていますが、もともとは、この言葉が名付けられた(1765年にパリで売り出された)スープの名前からとされています。このスープを出していた店ばかりでなく、他の飲食店もレストランと呼ぶようになった様です。
●オーベルジュ(Auberge)
本来は宿泊設備/ミニ・ホテル機能が併設されたフランス料理の高級レストランのことです。しかしあくまでメインはレストランだということが特徴です。他は通常の高級レストランに準じます。
●グラン・メゾン(Grande maison)
フランスでは使われていない和製仏語ですが、超高級のフランス料理店のことです。日本ではミシュランの三ツ星レストラン級を指します。
この呼称の適用の基準は、ウエイティングバーがあり、専門のパテシェがいること、ドレスコードや子供の年齢制限があることなどです。
スペインの飲食店の種類
最後に、おまけでスペインの飲食店の種類を簡単に紹介しましょう。
●カフェテリーア(Cafetería)
喫茶だけでなく軽食も可能で、フランスのカフェなどと同じです。伝統的なものから最近流行りのモダンでお洒落なカフェまでタイプは様々です。
●バル (Bar)
イタリアのバル同様のものです。但し食事は、酒の肴的なオードブル料理のタパスのみの店が多いようです。コーヒーや朝食を出す店は、Café Barとして区別される場合もあります。
●メソン(Mesón)
バルと同じ居酒屋ですが、主な違いはバルは営業時間が長く立ち飲みがメイン、メゾンは夕方からしか開店しないことと椅子席が主体なこととされています。
●タベルナ(Taberna)
イタリアのタベルナと同じく、酒に食事が楽しめる居酒屋的食堂です。
●タスカ(Tasca)
これも居酒屋・小料理屋ですが、より厳密にはタパスの専門店です。マッシュルーム、ムール貝、海老の鉄板焼きなどを出す店などがある様です。
●レスタウランテ(Restaurante)
使用されるフォークの数でランクが分類されているとも聞きますが、庶民的な店から高級店まであり、幅広く料理店を指す言葉です。
日本では、雰囲気やイメージ作りの為に色々な用語が使われています。実際には本来の使い方とは異なる場合も多々あり、その内容が曖昧になっていることも多いようです。
ところで、仲のイイ友達の口癖を想い出します。「ここはタベルナ、食事処なのに『食べるな』とはこれ如何に!」「え~、それってタスカな話?」(笑)、フフ、お後がよろしいようで‥‥。
-終-
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