【歴史を巡る旅】 湯田温泉松田屋ホテルの『維新の湯』 〈25JKI00〉

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松田屋ホテル 日本庭園

ちょうど今から10年くらい前に、湯田温泉(山口県)にある松田屋ホテルを訪れたことがある。そこには『維新の湯』という、実際に高杉晋作や坂本龍馬、西郷隆盛などが入浴したことで有名な湯殿があるのだが、筆者も当然、意気揚々と維新の英傑気取りで「ひとっ風呂」浴びさせてもらった・・・。

 

山口県山口市の湯田温泉は、足を負傷した白狐が傷を癒していたことで発見されたという、およそ800年の歴史を誇る名湯だ。

そしてお目当ての『維新の湯』がある松田屋ホテル(旅館として延宝3年/1675年に創業)は、山陽新幹線の新山口駅から車で約20分、山陽自動車道の小郡インターから15分の場所にある湯田温泉(最寄駅はJR山口線湯田温泉駅)の中心街に建つ超老舗の高級旅館だ。

また松田屋は、かつて長州尊王攘夷派の拠点として、回天の偉業を目指した明治維新の志士たちが集まり、語り合った場所としても知られている。

さて現在の松田屋ホテルは、大変趣がある立派な回遊式日本庭園を持ち、天然温泉かけ流しの風呂が格別な旅館である。そして、豊富な海や山の食材を使った料理も水準以上であり、近くには地元で生まれた詩人、中原中也の記念館や詩碑などもある。 また、作家の司馬遼太郎氏もこの旅館に(維新にまつわる取材の為か)宿泊されたことがあるそうだ。

↓松田屋ホテル公式サイト

http://www.matsudayahotel.co.jp/

 

また松田屋ホテルの敷地内には、西郷・大久保と木戸の会見所や、七卿落ちの遺跡などがある。更に明治維新資料室があり、貴重な資料を見ることが可能だ。そこには『高杉晋作 憂国の楓』という1本の楓の木片が保存されている。その木には「盡国家之秋在焉(国家ニ盡<ツク>スノトキナリ)」という文字が彫られているが、これは高杉が、当時、松田屋旅館の玄関横に植えられていた楓の木に刻んだとされており、それは文久3年(1863年)八月十八日の政変の直後だと云われている。

 

館内にに現存する『維新の湯』の浴槽は、江戸時代末期の1860年に作られたと伝えられており、幕末当時の長州藩や薩摩藩、そして土佐藩などの勤皇の志士である高杉晋作をはじめとして、木戸孝允、大村益次郎、伊藤博文や井上馨、山県有朋、それから西郷隆盛や大久保利通、そして坂本龍馬らや、七卿落の公卿である三条実美などが頻繁に松田屋で宿泊・会合して、倒幕運動や王政復古の密談をした時に入浴したと云われる、歴史的な文化財である。

一般利用が可能な『維新の湯』は、幕末当時の御影石の浴場を現在も使用出来る為、高杉や龍馬の入浴したその同じ風呂に入ることが出来るのだ。歴史好きの人、特に上記の維新の志士、そして明治の元勲たちのファンであれば、垂涎ものの風呂場であろう。

斯く謂う筆者もまさしくど真ん中の歴史ファンであり、チェック・イン早々に胸ワクワクでいそいそと風呂場に向かったクチである。

 

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松田屋ホテル 「維新の湯」

現実の『維新の湯』は、小さな風呂場で男女別には分かれていないので、利用する場合はほぼ先着順の貸切状態で内側から鍵をかけて使用する形式だ。当然だが、先客がいると待たなければならない。

夜間は途切れなく使われている様で、狙い目はチェック・イン直後の早い時間帯か早朝である。

内装は意外と綺麗で風情がある。深めの湯船にはpH9.14のアルカリ性単純泉が満たされており、源泉を湯船の下部から注いでいる構造の様だ。泉質は、さらりとした温めの湯で、とてもリラックス出来る。(女性に優しい美肌の湯とのこと)

 

やはり、あの歴史上のスーパースターたちである、桂や高杉、西郷や大久保と同じ風呂に入れる喜びは大きい。なんてったって今、自分が腰かけている同じ場所に龍馬も座っていたかも知れないのだから、感動もひとしおである・・・!。

筆者も実際に入浴してみて、全国からこの風呂を目当てに訪れる歴史ファンが絶えないということが、充分に頷かれると思った。

 

という訳で、この湯で体を洗い浴槽にのんびりと浸かっていると、何処からともなく話し合う声が聞こえてきた・・・。

その大半は、ひそひそとした会話が主であり、「同盟を結ぶ」とか「蛤御門の仇だ」とかの言葉に交じって、一人元気のイイ男が「日本を洗濯するぜよ!」と張り切っていた。

-終-

 

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投稿者: 准将

何にでも好奇心旺盛なオジサン。本来の職業はビジネス・コンサルとマーケッター。興味・関心のある分野は『歴史』、中でも『近・現代史』と『軍事史』が専門だ。またエンタメ系のコンテンツ(音楽・映画・ゲーム・マンガなど)には仕事の関係で随分と係わってきた。今後のライフワークとして儒学、特に陽明学を研究する予定である。kijidasu! 認定投稿者第一号でもある。