この記事は、ロシア料理の定番『ビーフストロガノフ』について解説するもの。由来や来歴以外にレシピにも触れます。
段々と春めいてきましたが、まだまだ時折、肌寒い日があります。そんな日の夕食には、温かいロシア料理などはいかがでしょうか? そうです「温かいんだから」のスープ、じゃなくて『ビーフストロガノフ』…です!?
『ビーフストロガノフ(beef stroganoff、ロシア語ではбефстрогановまたはговядина по-строгановски)』は、代表的なロシア料理のひとつです。
この料理の名称は、ロシア語の「ベフ」、つまり「~風」「~流」といった言葉が変化して「ストロガノフ」の前について「ビーフストロガノフ」となったとされ、その為、本来は「ストロガノフ風」の料理という意味であり、牛肉料理の意で「ビーフ」と冠されているのではない、との(まことしやかな)説もありました。
しかし、最近ではこの説はまったくの都市伝説とされています。実際には「беф」の部分は、牛肉を意味するフランス語「boeuf(ブフ)」に由来するとの説もあり、『ビーフストロガノフ』は間違いなく牛肉料理である、とされています。但し、「беф」が牛の肉を意味する単語ということではなく、フランス料理の名称をロシア語に翻訳する上でなんらかの誤解があって生まれた言葉、と解釈されています。その為、ロシア語の辞書を探しても牛肉の意味で「беф」を見つけることは出来ません。因みに「~風」や「~流」にあたるロシア語は「по~」となります。
また「строганов(ストロガノフ)」は、ロシア/ウラル地方の有力貴族であるストロガノフ家のことでまず間違いありません。16世紀から20世紀にかけての帝政ロシア時代において大地主や政治家、大商人、実業家などを輩出しました。
ところがこの料理に関しては、考案者と生まれた時代については諸説があります。古いものでは16世紀初頭には既に食されていたとの話があり、またストロガノフ家の賄い料理が発祥だとかコックの手違いで偶然生まれたとか、他にはアレクサンドル・セルゲーエヴィチ・ストロガノフ伯爵(1733年~1811年)の代に固くなった牛肉を美味しく食べる為に創案されたとの説もありますが、現在では、アレクサンドル・グリゴリエヴィチ・ストロガノフ伯爵(1795年~1891年)のシェフが、同種のフランス料理を参考に創作したものが「бефстроганов」という料理の元となった、という説が地元ロシアでは大きな支持を得ているようです。
『ビーフストロガノフ』は、20世紀初頭にロシアの料理本にそのレシピが掲載されて、ソ連時代に一般に広く普及したと云います。本家のロシアでは、観た目の色は白く、ビーフシチューというよりむしろクリームシチューに味も色も近いそうです。
尚、この料理の作り方は、先ず細切りの牛肉とタマネギ、マッシュルームなどのキノコ類をバターで炒めて、若干のスープで煮込んでいきます。そして仕上げとして、サワークリーム(スメタナ)を入れます。日本ではトマトやデミグラスソースを使ったり、サワークリームの代わりに生クリームを使用する場合が多く、バターライスや白飯、またはパスタ、揚げたジャガイモなどと共に供されることが一般的です。
結論としては『ビーフストロガノフ』は、牛肉料理なのでした。しかし本場のロシアでも牛肉を鶏肉や豚肉で代用したり、敢えてアレンジした家庭料理はあるそうです。しかし、やはり牛肉で作るのが一番美味しいのではないでしょうか‥‥。
-終-
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