先月、山野楽器や神田商会が相次いでFender(フェンダー)社との契約を解消して、取り扱いや製造・販売を終えると発表しました‥‥。
エ~そんな、『フェンダージャパン』が無くなるなんて信じられません。
今月(4月)より米国アリゾナ州の楽器メーカー、フェンダー・ミュージカル・インストゥルメンツ社 Fender Musical Instruments Corporation(以下、フェンダー社)が、日本での現地法人であるフェンダーミュージック株式会社を設立して、日本での事業を直接コントロールする道を選びました。
エレクトリック・ギターで有名なフェンダー社ですが、かつては日本市場でのコピー商品の氾濫に苦慮しており、訴訟沙汰も抱えていました。そこで日本の神田商会などの仲介で富士弦楽器製造(現フジゲン)とライセンス契約を交わして1982年には「フェンダー・ジャパン」を設立(1997年以降は、商標のコピーライセンス使用許諾を得た神田商会のプライベートブランドとして)、日本国内でのライセンス製造事業を任せてきました。
また米国フェンダー製品の輸入販売に関しては、山野楽器が1963年から代理店契約を締結して、大変長期間にわたり取り扱ってきました。
ところが、この何れの契約も、先月(3月)31日をもって終了とされました。
こうして今後(4月以降)、日本国内のビジネスは日本法人を通じてフェンダー社が直接、関与するところとなった訳です。
では日本のユーザーにとって長年馴染みのあるフェンダー社と山野楽器、神田商会の関係でしたが、突然のように契約が終了した背景には何があるのでしょうか?
その原因は、フェンダー社に限らずギターメーカー全体に言えることですが、各社とも近年、良質な木材材料の枯渇やそれに伴う高騰、そして何よりも音楽業界自体の衰退により業績が低迷しており、多額の負債を抱えていることにあります。
フェンダー社も株主から大規模な変革を求められており、2014年4月には、デジタル事業戦略への展開を意図して、DashboxのCEOだったボブ・ロバック氏を新社長とした他、翌5月には大物ミュージシャン『U2』のボノとジ・エッジを取締役に招聘しています。
そんな状況の中、以前に比べれば縮小しているとはいえ、まだまだ日本は世界的に見ても魅力的な音楽市場であり、ここ最近は女子若年層にギターブームが起きたりもしています。
他社にライセンス提供するよりも直接製造事業を手掛け、またネット販売の拡大も考慮しつつ流通においても代理店制度を廃して直接販売の体制に移行した方が利益率の向上も見込めます。
この様な点がフェンダー社の直接的な日本進出の背景なのではないでしょうか。但し、数年前に同様の方針に転換したギブソン社の評判および業績がいまひとつであることも是非、考慮して日本法人の経営につとめて欲しいところです。
ちょっと待ってください、『フェンダージャパン』が無くなるのは物凄く寂しいし残念なことです。予算不足で『ジャパン』を手にしたギターファンも多いとは思いますが、それでも愛用の1本には色々な想い出があることでしょう(me too)‥。
しかし1980年代の再興時にフェンダー社が掲げたのは、『我々のライバルは他のギターメーカーではない、Nintendoだ!』という言葉でした。
そうなのです。当時、従来のような単なるギターメーカーには止まらないという意気込みで再生を果たしたフェンダー社の姿勢を観てきた私たちが、今後の彼らのビジネス展開に期待したいと思うのは当然のことでしょう。
是非、品質管理の更なる向上と内外価格差の是正などに取り組んで欲しいですね・・・。
-終-
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