これは「おもろい」奇手だ。世間体など気にせず一中小企業からやり直すつもりで経営再建に取り組めば、光明も見えてくるのではないだろうか。頑張れシャープ・・・。
経営再建中のシャープは、現在1,218億円ある資本金をわずか1億円に減らす検討をしているという。目のつけどころが、さすがシャープと言っては失礼か…。
シャープは2012年3月期と2013年3月期に合計およそ9,000億円超の連結最終(当期)赤字を計上し、単体の累積損失(繰越欠損金)が2014年3月末時点で208億円となっていた。2015年3月期にも2,300億円前後の最終赤字となる見通しで、更に2016年3月期にも約1,000億円規模の最終赤字が見込まれ、これに備える必要もある。
そこで、主力銀行2行に対する優先株発行などで資本を拡充するとともに、資本金を一気に取り崩して累積損失の一掃を目指す。そして残額の資本金を剰余金に振り替え、一気に財務体質の改善を図る方策が、今回の奇手、資本金1億円への減額だ。
また、税法上は資本金1億円以下だと「中小企業」とみなされ、法人税への軽減税率の適用や外形標準課税が適用されないなどの優遇措置も見込める。
こうして累積損失を一掃しておけば、今後の業績の回復いかんでは株主への復配が可能となり、更に他社との資本提携の交渉や新たな公募増資なども進め易くなる。
資本金の全額減資ではない為、当面は株の持ち分や上場などへの影響はないが、将来的に資本増強などで発行株式数が増えれば各々の株主の持ち分は大幅に目減りすることになるとの考えが大だ。但し、持ち株比率で上場基準に抵触することも考えられので再増資の可能性自体が不透明では、との意見もある。
また、資本金3億円以下の企業は、下請法で保護される「下請け事業者」とされ、取引先との決済方法などに影響が出る、との指摘もある。
さて、経営破綻に至っていない年間の売上高が3兆円にもなる大企業が、99%以上の減資を行うのは極めて異例のことだが、6月下旬に開催される株主総会で承認が得られれば、早々に実施する方向のようだ。
本件に関しては、今月(5月)14日には2015年3月期の決算と合わせ正式に発表するという。約2,000億円の資本支援を決めている、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行の主力2行も、既にこの減資に合意している模様だという。
シャープとしてはこの一連の動きで財務体質の改善を進めて、2018年3月期末には連結の自己資本比率を約10%に戻すことが、当面の大きな目標の一つである、としている。
随分と大胆なことをするもんだ。でもこの会社は、昔はこの位のことは平気でやってのける柔軟性とバイタリティがあったと思う。もちろん、時としてはあらぬ方角に走る事もあったが、それがユニークさと革新に繋がっていた。
しかし近年では大企業病にかかり、必要以上に保守的で慢心な経営体質により、何もかも後手後手に回って現在の為体(ていたらく)となったのだ。
そこで是非、本当に一から出直す(中小企業の)気持ちで、今回の様な大胆な改革を進めて復活を遂げて欲しい。社員一同の健闘を祈る!!
-終-
【追加情報】
シャープの減資について、宮沢洋一経済産業相は5月12日の閣議後の記者会見で「企業再生としては違和感がある」と指摘。中小企業を想定した優遇税制を大企業が意図的に活用する点について、政府が問題視する可能性が出てきた。この為、シャープは資本金を1億円に減らす計画を断念し、資本金は5億円にすることになった。減資で累積損失を解消する方針は変えず、将来の復配などに備える。(5月13日 日本経済新聞より)
《スポンサードリンク》