我が家にも本がたくさんあって、収納には苦慮しています。蔵書が増えたからと言って、都度、書棚用のスペースを拡張することは一般的な日本の家屋ではまず無理ですよね。そこで「断捨離」の出番となりますが、これまた「さよなら」する本を選ぶのに辛い思いをしなければなりません・・・。
国立国会図書館では、現状のままだと2020年頃には本の収蔵スペースが不足し、新たに納本された書籍の保存が困難になるといいます。
国家の貴重な文化的財産である書籍などを、(我が家のように)古書店などで処分する訳にはいきませんから、国立国会図書館の悩みは大変だと思います。
日本では、国立国会図書館法(昭和23年法律第5号)に基づき1948年から納本制度が開始されましたが、これは国内で発行されたすべての出版物などは必ず国会図書館に納入するように法律で義務付けられた制度です。2012年刊行の民間出版物の納入率は98.9%で、2013年7月からはインターネット上の電子書籍なども対象になりました。尚、費用に関しては国から補塡されます。
またこの納本の目的は、「国民共有の文化的資産の保存」であり、日本国民の知的活動の記録として特殊な事情がある場合を除いては、納本された原本を図書館側が破棄する事はありません。
その為、寄贈分等も含めて国会図書館の所蔵点数は増加を続け、2013年3月末時点で書籍・図版だけで約1,033万点、その他の映像資料等を加えると約4,029万点に及んでいます。そして2009年度以降の5年間では、毎年50万点(DVDやCDを含む)を超える納本があり、2013年度は約56万点に上ったそうです。
そこで国内最多の蔵書を誇る国会図書館では、増え続ける蔵書の保管の為に、(厚さ3cm換算で)約1,200万冊を収蔵可能な(新館書庫を含む)東京本館に加えて、2002年には京都府精華町に関西館を新設しました。
この施設は、サッカー場三面分に当たる広大なスペースに書庫(約600万冊収蔵可能)を設置しており、また収蔵品を傷めないように、常時、室内の温度は22度、湿度は55%前後に保たれています。
しかしこの関西館の書庫も、いろいろな工夫と努力により少しでも収蔵量の増加に努めてきましたが、昨年度(2014年度)末時点で90%弱が保管図書で埋まる状況となっています。
そこで増築計画が立てられ、その設計費6,900万円が今年度予算に盛り込まれました。これにより、2020年の春には増設書庫が完成して約500万冊ほどの図書の収蔵スペースが増しますが、それでも15年も経てばまた書庫が足りなくなるそうです。
つまり納本とのいたちごっこであり、継ぎ足し継ぎ足しでの書庫スペース増築では抜本的な解決策にはなりませんが、取りあえずは、頑張って新たな書庫を造り続けるしかないようです。
そこで、デジタル化の進捗により、既に電子化され保存されているデータを閲覧することが可能となっている為、思いきって原本を破棄すれば、画期的な省スペース対策となります。
しかし国立国会図書館では、決して原本を破棄することは考えていないそうで、電子データには置き換えられない紙の質感なども含め、出版文化を継承していく上で原本の保存は極めて重要だとの方針は揺るがないようです。
更に、日本で出版された図書の原本がすべてそろうのが国会図書館の存在意義であり、あくまでリアルな書庫を増設して、増え続ける図書に対応していくのが本来の使命だと考えているそうです。
こうした状況のもと、一部には、「分散納本」への移行を提案する動きもあります。何もかも全てを国立国会図書館で保管するのではなく、該当図書と結びつきや関連性があれば、その納本対象の図書の原本等は国立国会図書館以外の有力図書館(都道府県の中央図書館や大規模な大学図書館など)をも納本先としては如何か、というものです。
この様に原本が分散しても、ネットワークを介して電子データの共有は可能であり、どこの図書館に原本があってもデータの閲覧には問題はありません。所蔵先を検索するシステムの確立と保管状況が担保されれば、充分、検討の余地のある提案だと思えます。
私も原本の破棄には反対です。可能な限り、長期間にわたり保存して欲しいのですが、予算にも限りがあることでしょうから、上記にある分散納本も一案ではないかと思います。
ところで永田町の国会図書館には、以前、何度か仕事の都合で訪れたことがありますが、毎回、帰りに美味しいインドカレー店で食事をしたことしか覚えていません。どうも私は知的好奇心よりも、単なる食欲の方が強かったみたいです…。
-終-
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