今年は『不思議の国のアリス』発刊から150+1周年!! (その1) 〈2288JKI24〉

アリス123ダウンロード気がつけばあっという間に早や新年(汗)ですが、昨年(2015年)は児童文学不朽の名作『不思議の国のアリス(Alice’s Adventures in Wonderland)』(以下、『アリス』)が発刊されてから、ちょうど150周年の節目の年なのでした。

そこで年内に『アリス』に触れなくてはいけないと慌てて原稿を書き始めましたがなかなかまとまりがつかなくて・・・。結局、151年目となりましたが取り敢えず発表させて頂きます。

さて、筆者は初めてこの物語を読んだ時、(子供心に)その世界観に馴染めませんでした。日本と英国の歴史や文化、習慣の違いだけではなく、あちらこちらに散りばめられている少し癖のある風変わりな文章や表現に違和感を覚え、子供向きのお話には思えなかったのです。当時は何気なく読んでいましたが、さぞかし、その独特の言葉遊びを日本語に訳するのは翻訳者の方にとっては大変な作業だったことでしょう。

また子供の頃には、「この本は本当は大人の為の童話なんだよ、実は色々と難しいことが裏には隠されているんだ・・・」などと、それこそオトナの人達からは云われたものでした。

そこで、大人も大人、いいオジサンになった今、再びあの不思議な世界を旅して真実のアリスの物語に迫ってみようと思います!!

 

著者ルイス・キャロルと『不思議の国のアリス』

さて改めてこの本を紹介すると、英国の数学者で写真家のチャールズ・ラトウィッジ・ドジソン(Charles Lutwidge Dodgson:1832年1月27日~1898年1月14日  以下、キャロル)がルイス・キャロル(Lewis Carroll)というペンネームで書いた児童向け小説で、1865年に刊行されたものです。

実は1865年の7月にキャロルは自費出版で2,000部を刷りましたが、挿絵画家のテニエルからのクレームで、一旦この初版本をすべて回収することになりました。その後、文字組みから出直した『アリス』は、マクミラン社から同年11月に再度正式に刊行されました。尚、この件は続稿(その2)で詳しく解説します。

さて物語の概要は、白ウサギを追ってウサギ穴に落ちた賢い少女アリスが不思議な世界(国)に迷い込み、しゃべる動物や生きているトランプカードなどの個性的なキャラクターたちと出会いながら、その異世界を冒険する様子を描いていきます。

そしてこの物語の誕生の切っ掛けは、キャロルが知人の娘アリス・リデルの為に即興で創作したストーリーが元となっており、キャロルはこの物語を手書きの本として作成して1864年にアリスにプレゼントしましたが、それを見知った周囲の知人・友人たちの高い評価に後押しされて手直しを加えたうえで正規の出版に踏み切ったのでした。

また、このオリジナルの手書き本は『地下の国のアリス(Alice’s Adventures under Ground)』と名付けられ、『アリス』が有名になった以降の1886年には複製版が出版されました。また後述しますが、キャロル自筆の原本は、現在は大英博物館に収蔵されています。

 

『アリス』誕生の状況

より詳しい『アリス』出版の発端は、正式作品出版の3年前の1862年7月4日にまで遡ります。

この日、キャロルは、以前より親しくしていたリデル一家(キャロルの住んでいたオックスフォードにあった大学の学寮クライストチャーチの学寮長の家族)の三姉妹であった長女ロリーナ(Lorina Charlotte Liddell、13歳)、次女のアリス(Alice Pleasance Liddell、10歳)、そして三女イーディス(Edith Mary Liddell、8歳)、それにキャロルの大学(トリニティ・カレッジ)の気の合う同僚であったロビンスン・ダックワース(Robinson Duckworth)とともに、オックスフォード付近でアイシス川と呼ばれていたテムズ川をボートで遡るピクニックに出かけたのでした。ちなみに、ダックワースは大変な美声の持ち主で、その歌声でいつも子供たちを楽しませていました。

このささやかな船旅はオックスフォード近郊のフォーリー橋のたもとから始まり、5マイル程上流のゴッドストウ村で終わるのですが、この日、キャロルは三姉妹の為に、「アリス」という名の少女が主人公の不思議な冒険譚のさわりを即興で語って聞かせました。

またその日の午後は、夏の日射しが水面にキラキラと反射して周囲が黄金色の光に包まれた様な、後日、キャロルが「黄金色の午後」と回顧して述べた日でした。(※しかし・・・このときの様子は作品の巻頭の献呈詩のなかで「黄金の昼下がり」として描かれていますが、実際は途中で少し雨が降る程で、決して天気は良くなく、ピクニックの最後の頃は夜の8時近くになり辺りは薄暗くなっていたようです。)

ボートの上で、いつもの様にアリスたちにお話をせがまれたキャロルは、懐中時計を片手に急いで走ってくる(あの有名な)ウサギの場面を語り始めました。ボートを漕いでいたダックワースが振り返りながら、その話は今即興で考えたのかと尋ねると、その時キャロルは「そうなんだけれど、この少女をウサギ穴に落としてはみたものの、その後にどう展開するかは考えていないんだ・・・」と答えたそうです。(※一説には・・・キャロルはピクニックと舟遊びをしている間ではなく、もう夜も近くなりクライスト・チャーチにまで戻って来てから三姉妹とダックワースを自らの家に招き、「マイクロ写真」=覗くと小さな画像が眼前に大きくリアルに見えるという、びっくり映像を観せた後に、即興で30分程のお話を語って聞かせたとも云われており、またこの体験が普段以上に三姉妹に、この日のキャロルの物語の印象を強くしたとも伝わっています。)

キャロルはよく即興で物語を創ってリデル三姉妹や他の子供たちに聴かせていましたが、自分と同じ名前の主人公が登場するその日のお話をとりわけ気に入ったアリスは、「私の為にちゃんとした文章にして残して欲しい・・・」と頼みました。そこでキャロルは彼女の願いを聞き入れて、翌日から物語の続編を書き始めたのです。

同年の8月に、再びゴッドストウ村へ三姉妹と出かけた際には物語の続きを語って聞かせたといいます。そして手書きによるこのお話が完成を見たのは1863年2月10日のことでしたが、更にキャロルは自ら挿絵を描き装丁を施した上で、翌年の1864年11月26日にアリスにこの本(前述の通り『地下の国のアリス』と名付けられた)をプレゼントしました。

(その2)に続く

今年は『不思議の国のアリス』発刊から150+1周年!! (その2)・・・はこちらから

 

 

《スポンサードリンク》