《雑学ものしり帖》 街角でよく見かける色の雑学〈1647JKI55〉

街を歩いていると、いろいろな色が目に入ってきます。今回の《雑学ものしり帖》では、それらの中で、その色に決められたり塗られている訳や由来についての雑学をいくつか紹介します。

 

先ず最初は信号から。一般的な日本の交通信号は横型が主流で、向かって左側から青(緑)色、黄色、赤色となっています。「進め(厳密には進むことが可能)」を意味する青色は、実際には緑色ですが、誰もが「青信号」と表現しますよね。これは一説には、信号機が日本に初めて導入(1930年3月23日、東京の日比谷交差点に米国製のものが設置されたのが最初)された際に、当時の報道機関が「緑信号」ではなく「青信号」と表現したことがきっかけだそうです。

また我国では古来より、「青(blue)」と「緑(green)」を厳密に区別しない文化的傾向があることから、その後も「青信号」という表現が社会的に定着してしまいました。戦前の法令では「緑信号」と記載されていたそうですが、戦後の1947年には法令でも「青信号」という表現に変更されています。

また、日本の黄色に当たる部分は、信号機発祥の地の英国では「amber light(琥珀色)」、フランスでは「feu orange(橙色)」と呼ばれているそうです。

さてそもそも、この3色が選ばれている理由としては、人目につきやすいこと、遠くからも識別が明瞭なことが挙げられます。そして一番重要(危険)なことを知らせる赤色が、可視光の中で色の持つ波長が長く、次が黄色(または橙色)、次いで緑色(または青色)となっています。これも一般論の一つですが、赤色に危険な印象を感じる人間が多い(血液や火を連想させるからだ)そうです。

近年、普及が促進されているLED灯の場合でも、従来と同様に「青信号」は青みがかった緑色に発色するように調整されています。これは色弱の人でも黄色や赤色と区別し易くする為のようです。

余談ですが、中国の文化大革命において「革命のシンボルである赤が止まれを意味するのはおかしい。赤信号を『進め』」にしよう」という突飛な案が一部の紅衛兵によって提唱されたそうですが、さすがに大混乱が予想されるために却下されたと云います。

 

次は小ネタで、皆さんはよくビルの窓などに貼られている赤い三角形のシールに気付いたことがありませんか。実はあれは、建築基準法により定められた「この窓は開放可能」ということを示したものなのです。

火災の時などに、消防隊員がそこを開けて内部に進入が可能なように、3F以上の建物には表示が義務付けられています。

一辺が20cmの赤色の正三角形で、つけ方は規定されていません。

 

それから、理髪店の店頭に設置されている3色の棒状で回転する看板「サインポール」は、よく雑学ネタになっていますよね。

通常、赤、青、白の3色ですが、これは中世ヨーロッパの床屋さんたちが、単なる散髪の他に、傷んだ歯の抜歯や今で云う外科医の真似事(簡単な外科手術)のようなことに従事していたことの名残ともされています。古代のギリシャや中世ヨーロッパでは、体の一部である髪を切る散髪行為も、ある意味、医療と同じ区分の仕事とされていたのです。

このような理髪業と並行して外科的処置も行う職業を「理髪外科医(barber surgeon)」などと呼ぶようです。彼らは、大学などで学んだ、専門の医学知識を身に着けた(主に僧侶等の)学術医とは別の人々でした。「理髪外科医」たちは、(内科)学術医が蔑視して行わなかった外科的治療・処置を担当していたのです。

また、「理髪外科医(barber surgeon)」の中には、負傷者が多数発生する戦時には外科医を、平時には専ら他人の頭髪を刈り整える床屋を営んでいた人が多かったとも伝わります。

3色の由来は、もともと赤と白が並んだ模様がその仕事の看板色だったのですが、その後、彼らがお医者さんと床屋さんに分かれていく過程で、床屋さんを選んだ方が、区別し易い様にと青色を加えたのだとの説もあります。また以前は、あの3色の赤は動脈、青は静脈、そして白は包帯(もしくは神経)を意味するという説がありましたが、最近では支持されていません。

他の説としては、病気の患者から(または定期的に)血を抜く施療(瀉血)を行っていた時に使用していた棒状の器具に由来するとか、ナポレオン戦争時代のフランス軍の野戦病院の入り口に立てられていたフランス国旗(赤・白・青のトリコロール)が元祖である、など諸説があります。

ちなみに、世界共通でこの3色のようですが、現在でも英国では一部に赤白の2色サインが使われているそうです。

 

さて、鳥居は何故赤いのでしょうか? この理由はわりと素直に、悪霊払いの為、ということのようです。

赤色(朱色)は古代より、人々から神聖なものとされ崇められてきました。神社の鳥居や社殿に限らず、お寺や都の宮殿などでも悪霊の侵入を防ぐ為に、門柱や欄干などが赤く塗られた場所は多かったのです。そして災厄を防ぐ色というだけではなく、神社仏閣の場合は生命の躍動を現し神様や仏様のお力を高める役割りがあるとも考えられていたようです。

また朱の原材料は水銀(丹)で、これが昔から木材の防腐剤として使われていたことも関係があるようです。

但し、実際には赤色(朱色)以外の鳥居も多く存在します。例えば、グレーに近いものや黒っぽいもの、白木というか木目のままのものなどがあります。

 

郵便ポスト(郵便法による正式名称は郵便差出箱)は何故赤いのでしょうか? これは単純に目立つから、というのが答えです。

明治4年(1871年)に黒い箱が郵便ポストとして採用されましたが、夕暮れ時以降には設置場所が解りにくいとの苦情が相次ぎました。そこで明治34年(1901年)以降には、よく目立つ赤色のポストに変更されました。

また他の説としては、英国から郵便制度を導入した国の場合は郵便ポストの塗色に赤を採用している場合が多く、我国もこれに相当する、というのです。

しかし郵便ポストの色は世界共通ではなく、上記の通り英国や英連邦の諸国などでは赤色ですが、米国などは青色、ドイツ・フランスなどの国々では黄色が主流です。但し最近では、我国においても一部にグレーや青色のものもあります。

 

以上、街角の色についてご紹介させて頂きました・・・。

-終-

 

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