小海線野辺山駅近くにあった御座敷客車。1986年の撮影です。
当時は清里、野辺山は大変に賑わっていました。観光シーズンになると若者が乗る車で渋滞がおき、野辺山駅の周辺でも「日本鉄道最高地点」の標柱をバックに写真をとる姿が多く見られました。私もこの日、友人と清里から野辺山駅を目指して走っていました。当時はカーナビなどなく、そろそろ野辺山駅とあたりを見回していた時、この列車施設の姿が目に飛び込んできました。迷うことなく、車を横付けし、一人でカメラを片手に飛び降りました。
C56を先頭に5両の旧型客車。オロネ10形A寝台車が4両、間に挟まれるようにお座敷客車が1両といった編成。
お座敷客車の車両番号は塗りつぶされて読めませんでしたが、この客車は「オハ80形」。オハ80形は35系客車を改造して生まれたお座敷車両です。当時はお座敷客車と言えばもっぱら60系客車を改造したスロ62系の客車グリーンを再改造したスロ81形客車でした。外観はどう見ても普通客車にしか見えませんでしたが、デッキ付近の特徴からマニアにはわかりました。
近くに管理室があったので、様子をうかがうと、入場料を払えば車内が見られるとのこと。迷わず友人の分も無理やり払い、客車に向かいました。
デッキドアの上には、表示窓の跡がありましたが、かつてはここに「和風客車」の表示があったのです。
外付けのステップをあがり車内に入ると、広々とした座敷が広がっていました。
初めてのお座敷車両見学でしたが、冷房もついていない座敷の上には誰の姿もありません。天井は数寄屋風の舟底形。窓にはプラスチックの障子が貼られていました。座敷の片側は跳ねあげられていて、通路になっていました。
赤茶けた畳の上を、開け放たれた窓から高原の風が時折、さわやかに吹き込んできました。埃っぽい臭いや、むせかえるような空気を想像していた私は意外な感じがして、もう少しその場にいたかったのですが、退屈そうな友人に遠慮して後ろ髪がひかれる思いで車外に出ました。その数年後、もう一度訪ねてみると、客車の姿はなくなっていました。
この光景は野辺山SLホテル高原列車のもの。場所は長野県南佐久郡南牧村。1975年8月から1987年3月まで営業していました。
C56機関車はその後、きれいに整備されて野辺山駅前の南牧村歴史民俗資料館横に屋根付きで移設されて保存されています。
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