ハラールとは何か? 《後編》 〈2417JKI24〉

ドバイのシェイク・ザイド・ビン・スルタン・アルナヒヤン・モスク

《前編》を公開して以来、長きにわたり《後編》の執筆が手付かずになっておりました。

特に理由は無かったのですが…。ようやくではありますが、改めて《後編》を掲載させて頂きます。

ハラールとは何か? 《前編》…はこちらから

 

 

《医薬品・化粧品などへの影響》
ハラールに関する大きな注意点としては、加工品でも原材料にハラールではない成分を含むもの(ポークエキス、ゼラチン、豚脂など)を使用することが出来きないことです。

豚を禁忌とするのはその肉や骨などだけではなく、豚に由来する酵素や蛋白質にまで及ぶという事なのです。これは医薬品や化粧品などにもその適用範囲が広がることとなり、実際にサウジアラビア、イラン、インドネシアなどでは豚に由来する成分を利用した医薬品や化粧品が法律で禁止されています。

現代の製薬業界において細菌の培養に必要な培地の生産に、豚由来の分解酵素が使用されていることは多い様であり、そうなると非常に広範囲の医薬品がハラームである可能性があるのですが、一般的に該当の医薬品に豚由来の分解酵素が使用されているかどうかの判別は非常に難しく、イスラム教徒の間では大きな問題になっているそうです。

ハラールの基本的な考え方では、豚と一緒に保管されたり触れたりした食品も禁忌とされる為に、製品に豚由来の成分が全く残留・混入していなかったとしても、イスラム教的には禁忌とせざるを得ないとの事情があるのです。

 

《我国でのハラールの現況》
従来、我国でハラールについて関心を持つ当事者としては、イスラム教徒向けに特化した食材店や食品店が中心でしたが、近年ではイスラム教徒の観光客の大幅な増加に伴い、一般の飲食店や食品店にもこの問題が波及してきました。更にハラールに則った料理を供する事が出来る宿泊施設が非常に少ないことも懸念されています。

これらの店舗や施設では、本来はマレーシアやシンガポール政府のハラール認証機関からの承認を得ている日本ムスリム協会や日本ハラール協会などといった団体によりハラールに関する認証や指導を受ける必要があります。しかし現実には一般的な飲食店や食品販売の店がそこまでの動きを行うことは難しい様で、ハラールである基本的な条件を理解してなるべくその条件を満たす努力をすることと、それ以上に安易にハラールであるとはうたわないことが重要と考えられます。

にわか知識や上辺だけの対応では、前述の様に原材料や調理の過程までをきっちりとカバーして検証・対処は出来ないでしょうし、結果として偽りのハラールとなってしまう可能性があるからです。

ホテルや旅館などの宿泊施設においても、豚由来の成分やアルコールを含まないアメニティ・グッズを用意したり、材料選定や調理方法の他に豚肉の調理に関わらない調理場自体を新設したり、食器に関してもアルコールでの消毒を行わないなどの様々な対応や工夫が必要で、小手先でのハラール化は難しいことをよく理解しておかなければなりません。

そして前編でも述べた通り、ハラールの問題は日本国内での課題・問題だけではなく、その基準は国別などで異なっており、食品はもとより工業製品などの該当国への輸出品に関しても、輸出相手国毎にハラールを取り直す必要がある点を留意しましょう。

更に、単にイスラム教国の団体からハラール認証を取得するだけではなく、日本の実情に合わせたハラール認証制度を創設するべきであるという意見もあります。

但し、この様なローカル・ハラールの認証の動きには、最近のブームに便乗したいい加減なものも多く、ハラールと言いながら実はハラームであった、という可能性さえあるのです。この為、不用意な日本独自のローカル・ハラール制度の制定はイスラム教という宗教そのものへの冒涜や侮辱にも繋がる可能性もあり我国とイスラム諸国との国際的なトラブルの要因になる危険性も指摘されています。

 

昨今では、我国でもごく普通にオーガニック食材が人気となっています。欧米ではかなり以前から、健康に留意する人々が注目していたことですが、オーガニック・ブームは日本人にも食や健康への意識が広がり高まってきた証拠でしょう。

こうした、日々の食事を通して体が摂取するものが果たして本当に人体に良いものかどうかということを真剣に考えて行くことは、我国の場合は必ずしも宗教に根差すものではありませんが、自らが食する食材や食品に関するトレーサビリティを重視する考え方などは、ある意味、ハラールと共通のものなのかも知れません。この様に考えると、日本人にもハラールの概念が受け入れ易くなるのではないでしょうか…。

-終-

ハラールとは何か? 《前編》…はこちらから

 

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