いよいよ「我が音楽趣味とオーディオ遍歴」についての、大学入学以降の話を進めていこうと思う。この頃になって、ようやくアルバイト等で得た収入で“第1段階 ”のオーディオ・セットに加えてチューナーとカセットデッキを手に入れることが叶い(“第1.5世代/Season-1.5”)、2年生以降は更に勢いにのってアンプの買い替えやオープンデッキの購入へと走った時期であり、親しい友人からあるスピーカー(後述)を半永久的に借用したことで、当時は当面の理想のシステムが完成(次回の“第2世代/Season-2.0”)したと考えていた頃である。
音楽趣味に関してもジャズ熱が最高潮の頃で、大学での勉学はそっちのけでアルバイト(次回以降で触れる)に勤(いそ)しみ、その他の時間は同人誌の制作(これも次回で述べたい)とジャズの研究(次回で触れる予定)に励んだものであった。
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大学に入学早々、割賦(クレジット)販売でアルト・サックス(YAMAHA YAS-32、スタンダード/準エントリーモデル)を購入して、高校時代の友人(トロンボーン&キーボード)と双頭バンドを結成!! ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)の〈処女航海(Maiden Voyage)〉やら〈ウォーターメロン・マン(Watermelon Man)〉などを練習していた。リー・モーガン(Lee Morgan)の〈サイドワインダー(The Sidewinder)〉も少しばかり演ってみたりした覚えがある。やはり8ビートの曲ならば何とかなると考えていたみたいだ。そして半年から1年もすると、インプロヴィゼイション(アドリブ)の出来・不出来は別として、簡単なテーマ部の合奏くらいは取り敢えずこなせる様になったから不思議だ…。今振り返ると、大学入学以前には管楽器の経験が皆無だった人間が、特にスクール等に通うことも無く指導者にもつかずに、まったくの独学でスタートしたわりには、良く続いたものだと思う。
さてこのYAMAHA YAS-32だが、40年近くを経た現在でもちゃんと立派に演奏可能な状態で筆者の楽器庫に収納してある。その後、他のサックスを購入したり幾つか吹いた経験から言っても、それほど高価(13万円前後で購入したと記憶しているので、現行モデルのYAS-280の値段とさほど変わらない)でもなく、初心者にとって癖がない比較的吹き易いモデルだったと思う。
しかし楽器には皆、個体差があるので絶対的な話ではないが、筆者所有のこのサキソフォーンは使い始めの頃、演奏技術の不足も相俟って、多少、音抜けに難があり、くぐもった感じがしていたので、サックス経験者の先輩からのアドバイスでマウスピースを(サックス本体は高くて買えなかったセルマー製に)変えたところ、音色が大幅に改善されたのだった。また同時に、リードの選択と調整で更に音質・音色が変化することも知る。
リードの選び方も、複数の上級者から教えてもらったことであるが、先ずは左右が対称で均一になっていること、更に厚さも一定していなければならない。当然、偏りは厳禁で閉じた時にベック(Bec、フランス語でマウスピースのこと)の開口部(ウインドゥ)にピタリと合う事が大事である。ちなみに金管の人は、マウスピースのことをマッピとかマーピンと呼んでいたなぁ…。
ところで、独学で始めた当初のリードはバンドレン(Vandoren)の“青箱”ファイルドカット(U字にカットした上で、更にストレートラインが切られているどちらかと言えばクラシック用、固めの音色というかクリアな感じ)の3番だったが、その後、アンファイルド(ストレートラインがない、骨太・深みがあってウォームな感じの音色)の2番や2.5番(番手が低いほど柔らかい)などに変えたところ、芯の太い大きな音も出やすくなったし高音もギスギスすることが少なくなった。また、後年に一時止めていたサックスの演奏を再開(後程の回で触れる予定)した頃には、リコ(RICO)のラボーズ(LaVoz)のリード等を試したりしていたし、マウスピースに関してはアルトはメイヤー(Meyer)、テナーではオットー リンク(OttoLink)のものなども使用していた…。
まぁ、この楽器本体とマウスピースやリードの関係は、オーディオで云えばカートリッジとプレーヤー、アンプ、スピーカーなどの関係性に似ている。カートリッジを変更すると最終的な音色が大きく変わることとリードを変えることで楽器の鳴りが変わることは大変良く似ているのだが、リードの場合、“アタリ”(なかなか出会えない自分に適した状態、通常は10枚入手して1~2枚くらい)と状態の良くない“ハズレ”(“アタリ”以外のもの)の品質の差という問題があり、更に“アタリ”のものでも保管方法や使用している内にどんどん“ヘタ”ってくるので、常に“アタリ”枚数を確保するのは大変で何とも始末に負えない…。
植物が材料のリードは、どんなに加工技術が高くても少しづつ出来に違いがある。その為、試し吹きをして気に入ったものを選んでも、経年により変化するし、吹奏すればなお状態は変化というか悪化するものなのだ。だが経験の豊富な演奏者によると、(毎日少しづつ吹いて慣らしながら)リードは育てるものだそうで、初めダメだと思ったものも、工夫次第では少しづつランクUPするらしい。上級者やこだわりの強い人は自分で削り出して製作や調整をするとも云われているが、そんな事は筆者のような手先の不器用な人には想像すら出来なかった…。
また筆者は、貸しスタジオなどで練習をする時は、事前に水を入れた少し大きめの売薬の空瓶の中にリードを入れて湿らせて持ち込んでいたが、経験者に聞くとこの辺の対応も千差万別らしい。もちろん、専用のリードケースや水入れ(空のフィルムケースを使用している先輩がいた)が多数市販されているし、水に浸すのは数分で充分という説や15分くらいが良いとの話もあるし、ぬるま湯で2~3分が最適とも聞いたことがある。リード・メーカーの説明では長時間の浸け過ぎはリードの寿命を縮めるともされているが、常時、水に浸して保管している人もいる…。酒やジュースを利用する話や葦の糖分に関する説など、色々な意見が飛び交っている。だが、演奏後には余分な水分を拭い乾かして保管するべきともされ、それは過分な水分が残っていると黴がはえる原因となるからだそうだ。
こうして色々なリードを試してみてどれが自分のマウスピースと一番相性が良いか、また自分の奏法に最適かを探り、そんな1本が見つかったら大切に使用して少しでも長く使える様にと注意を払って保管するのだったが、それ程までに苦労を重ねても、毎日演奏しているとせいぜい1か月くらいで“アタリ”のリードも寿命を迎えるのだった。
但し、こういった事に右往左往し振り回されていたのは、ド素人の未経験者であった筆者の体験談であり、経験豊富なきちんと教育を受けたサックス・プレーヤーの方からみると、間違っていたり変な話に思われるかも知れない事を読者諸氏にはご了解願いたい。
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