【刑事ドラマ大全 -3】嘘と間違いだらけ・・・それでも大好き刑事ドラマ!! 〈22JKI35〉

府警本部103 c0003475_19164954さて【刑事ドラマ大全】も連載第三回目を迎えたが、警察ドラマには刑事ではない人物を主人公に据えたものも多い。代表例としてテレビ朝日『科捜研の女』をあげる。沢口靖子さん演じる京都府警科学捜査研究所の法医研究員(榊マリコ)の姿を描いた人気のシリーズだ。

科学捜査研究所(科捜研)の研究員は警察官とは異なり、技術職員であり捜査権などは有さない。当然ながら犯罪捜査や犯人逮捕などには赴かない。ところがこの主人公は相棒の土門刑事(内藤剛志さん)と組んで、または単独で現場を走り回りながら犯人を追い詰めていく・・・。これは危ないし、絶対におかしい!!

 

科捜研とは、通常の捜査や鑑識活動では解明できない事案の鑑定や研究を実施する組織で、警視庁や道府県警察本部の刑事部に設置される研究機関のことだ。鑑識課とは緊密に連携をとっており、事件発生の際は証拠品や遺留品の情報が適時届けられる。

研究所の所員数は1分野当たり1名~20名程度であり、規模も小さなところだと10名程度、大規模な科捜研で70名くらいである。ちなみに科捜研研究員の階級・昇進は、研究員技師 → 研究員主任 → 研究員主査 → 研究員副主幹 → 管理官ということらしい。

また似たような組織に警察庁科学警察研究所(科警研)があるが、これは科捜研とは別の組織であり警察庁の附属機関の一つとして設置された中央官庁である。

ところでドラマにおいて、科捜研の活動全般が簡略化されているのはある程度やむを得ないが、即日にしてDNA鑑定の結果が出たりするのはあまりにも嘘っぽいし、実際には検視結果や毒物検査にも時間がかかるらしい。ドラマの尺と、物語のメリハリとのバランス次第だが・・・早計な辻褄合わせはいただけないのだが、どちらかと云うと、科捜研ものは奇想天外で型破りな主人公のスピーディな活躍を描くドラマが多いようだ。

 

科捜研を舞台としたドラマには、TBS系列の『ホワイト・ラボ〜警視庁特別科学捜査班〜』なんていうのもあった。主演は北村一輝さん。科捜研の知識と捜査一課の捜査権を併せ持つ新しい組織、警視庁特別科学捜査班(通称「 ホワイト・ラボ」)の活躍を描くのだが、このドラマでは捜査権限を科捜研職員に持たせてしまうのだ。確かに、この方が手っ取り早いというもんだ(笑)。

同じTBSでは木村拓哉さん主演の『MR.BRAIN(ミスター.ブレイン)』の舞台が警察庁科学警察研究所(科警研)だった。ストーリーは、脳科学者の主人公(木村)が綾瀬はるかさん演じる助手などと共に、脳科学的アプローチによって難事件を解決していくコメディ・タッチのミステリードラマで、警察ドラマとは言い難いもの。

日本テレビ『ST 赤と白の捜査ファイル』は、今野敏さん原作の刑事ドラマ。警視庁の科学捜査研究所に新設された、「ST」(Scientific Taskforce、科学特捜班)と呼ばれる架空の組織の活躍を描いた作品。岡田将生さんが演じる百合根友久警部(のち警視)が、藤原竜也さんが演じる赤城左門研究員などの癖のある班員とともに科学捜査に携わる物語。筆者は今野敏さんの小説が大好きだが、その設定は非現実的なものが多い。

主人公は普通の刑事だが、嫁さんが元鑑識課員で警視庁科学捜査研究所の研究員なのが、フジテレビ系の『警部補・佐々木丈太郎』。寺脇康文さん演じる佐々木丈太郎警部補は、警視庁刑事部捜査一課7係所属の刑事で、彼の妻、涼子(横山めぐみさん)は科捜研の研究員だ。

ストーリーは王道の刑事ドラマで比較的手堅い(地味とも云う)のだが、寺脇さんは未だに『相棒』の「カメ」「薫ちゃん」のイメージが強い。また題名に「警部補」とついていると、主人公は永遠に昇進出来ないのだろうか? と思うのだが、考え過ぎか。

「警部補」が主人公の作品は意外にあるが、『警部補・碓氷弘一 〜殺しのエチュード〜』もそのひとつ。本作はテレビ朝日系にて2017年4月9日に放送された2時間ドラマで、原作は今野敏さんによる『エチュード』。ユースケ・サンタマリアさんが元警視庁刑事部捜査一課の刑事で現在は総務部装備課の主任だが、臨時に捜査一課5係へ応援任務に赴いた碓氷弘一警部補に扮している。相棒のプロファイラーには科学警察研究所から派遣された相武紗季さん演じる藤森紗英がおり、碓氷の同期の刑事に滝藤賢一さん、5係の係長を佐野史郎さん、警視庁刑事部参事官役が羽場裕一さん、碓氷の妻に紺野まひるさん等が出演。警察ものに真面目に取り組んでいる時のユースケ・サンタマリアさんは意外に好演が多いのだが、本作も悪くない。また相武紗季さんの抑え目な演技も好感が持てた。更に、殺害現場の検証に訪れる主人公たちが、手袋や靴カバーの他にヘッドキャップをちゃんとしていた事にも驚いた…。

他には、『北海道警事件ファイル 警部補 五条聖子』が2012年から放送されているテレビ東京系の2時間刑事ドラマだが、脚本はオリジナル。主演は若村麻由美さんで、北海道警の五条聖子警部補を演じている。その五条警部補は2作目までは方面本部、3作目以降は道警本部の捜査一課に所属しているが、所轄署の指導・応援役として毎回事件捜査に加わる形となっている。

そう云えば生瀬勝久さん主演のテレビ朝日『警部補 矢部謙三』なんていう、おふざけ番組もあった。これは『トリック』(仲間由紀恵さん、阿部寛さん主演)のスピンオフ作品で、刑事ドラマには違いないが敢えて本稿では扱わない(笑)。

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