他の刑事もの以外の警察ドラマでは、TBS『S -最後の警官-』が、架空の組織である警察庁特殊急襲捜査班(National Police Safetyrescue、略称NPS)に所属する少数精鋭メンバーが多発する凶悪犯罪へ立ち向かう姿、そしてSAT隊員との対立と友情や融和を描く。またこのNPSは通常の警察官では対処できない凶悪犯人を、殺害制圧ではなく生け捕り確保を目的とした部隊である。元ボクサーの神御蔵 一號を演じる向井理さんや、スーパー狙撃手の蘇我伊織役の綾野剛さんの他に新垣結衣さん等が出演。
SIT・SAT関連では、テレビ朝日系列の『ジウ 警視庁特殊犯捜査係』(原作は誉田哲也さん)。主演は黒木メイサさんと多部未華子さん。特殊犯捜査係「SIT」や特殊急襲部隊「SAT」の女性隊員である門倉美咲巡査(多部さん)と伊崎基子巡査部長(黒木さん)の2人を主人公に、立て籠もりや誘拐などの重大事案を通して巨大な犯罪組織「新世界秩序」と警察との攻防を描く、少々、非現実的ではあるがスケールの大きい作品。
しかしこのドラマでは、警視庁の刑事部長や警備部長の階級が警視監ではなく警視長だったりと、ポストと階級に関して間違いが多い。
SITに所属する“交渉人(ネゴシエーター)”が主人公のドラマに、テレビ朝日系『交渉人〜THE NEGOTIATOR〜』がある。この連続ドラマは、警視庁刑事部捜査一課の特殊犯捜査係(SIT)の5係(架空の交渉班)に配属された米倉涼子さん演じる女性交渉人・宇佐木玲子警部補の活躍を描いた刑もの。同じ米倉涼子さんが主演した『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』ほどの大ヒット作とまではならなかったが、放送当時は劇場版(映画)も製作されるなど人気を博した。但し詳細は省くが、この番組には現実にはあり得ない職務と階級のアンバランスや不可解な経歴の幹部警察官が多数登場する。
また『特殊犯罪課・花島渉』も、内藤剛志さん演じる警察庁特殊犯罪課の課長補佐で“交渉人(ネゴシエーター)”の花島渉(階級不詳)の活躍を描く作品。尚、花島の上司には(特殊犯罪課長と思われる)警察庁キャリアの神崎友香警視長(本上まなみさん)がいるが、美人なのは良いとしてもいささか若すぎるのでは…。
フジ『SP 警視庁警備部警護課第四係』も人気だった。岡田准一さん演じるSPの活躍を描く物語だが、SPとはセキュリティポリス(Security Police)の略であり、警視庁警備部警護課の所属で要人警護任務に専従する警察官を指す。ドラマは岡田さんや共演の真木よう子さんの格闘技の冴えが話題となったが、この作品も映画版の続編ではどんどん謀略ものとして過激さが増し、話の規模があまりにも大きくなり過ぎてシリーズ当初の現実路線からは離れていく。
TBSの『陰の季節』シリーズは原作が横山秀夫さん。主演は上川隆也さんで、彼は神奈川県警察本部警務部警務課調査官(警視)である。刑事などが主人公のそれまでの警察ドラマと異なり、警務部警務課(人事担当)という管理部門の警察官たちを主人公とした異色の作品である。
また最近、この作品は仲村トオルさん主演でリメイクされている。ちなみにこちらの物語の舞台であるD県警(原作通り)は群馬県警察本部をモデルとしており、群馬県警の本部長は警察庁から派遣されるキャリア組だが、その時々により階級は警視監の時と警視長の場合があるようだ。ドラマでは、主人公の上司の警務部長の階級が警視正となっていたが、現実にも警視正クラスが部長を務めているので、やはり警視庁などよりはランクが下の本部となっている。
テレビ東京の『嫌われ監察官 音無一六』。小日向文世さんが警視庁警務部人事一課の監察官(警視)を演じている。劇中で主人公の相棒役の捜一警部補の京野ことみさんが、主人公と揉める管理官に対して、「警察は階級社会。貴方より階級が上の警視である監察官と揉めるのは得策じゃないでしょ」と大声で告げるシーンがある。つまり管理官の階級は警部で、警視ではないとの設定だ・・・。
これって変でしょ!! 捜査一課の管理官は警視なのだから。但し、良く間違いがみられる高官の階級だが、このドラマでは田中美佐子さん演じる音無の上司である警視庁警務部長の千住遼子は警視監であり、これは極めて正しい。尚、小日向文世さんはどうも監察の仕事が似合う様で(笑)、『MOZU』でも物語のキーマンとなる監察官をやっている。
他にも監察官を主役としたものがあるが、テレビ朝日の『監察官・羽生宗一』などもその一つ。主演は中村梅雀さん。警視庁警務部人事一課の監察官(警視)、羽生宗一を描く。ただ毎回、主役のキャラに引っ張られてか、のんびりとした印象のストーリーが多い。
また、永瀬隼介さんの原作(『狙撃 地下捜査官』)をドラマ化したテレビ朝日系の『ドラマスペシャル 狙撃』も監察官が主人公。警視庁警務部特務監察室に所轄署から抜擢された新米監察官である上月涼子巡査部長(尾野真千子さん)が、15年前に起きた次期首相候補狙撃事件を監察官として再捜査していく姿を描く謀略系サスペンス。また敵か味方か解らない謎の行動をとる彼女の上司の特務監察室長・鎮目竜二警視正には、佐藤浩市さんが配役されている。
因みに、全監察官のTOPである警察庁長官官房首席監察官は官房人事課長よりも上位者であり、階級は警視監である。
刑事ではあるが通常の捜査部門とは異なる組織を舞台としたドラマとしては、テレビ朝日の『警視庁失踪人捜査課』がある。主演は沢村一樹さんで原作は堂場瞬一さんだ。高城賢吾警部(沢村さん)は、警視庁刑事部内に新設された失踪人捜査課(通称:失踪課)の分室に異動、訳アリの上司や同僚たちとともに失踪人捜査に従事することになる。そして行方不明者の捜索以来や身元不明の遺体から重大な事件の糸口を掴んでいく。
囮・潜入捜査系では、既述の『ダブルフェイス』が有名だが、テレビ朝日系の『おとり捜査官・北見志穂』というドラマもあった。『ダブルフェイス』に比べると随分とソフトな内容だが、松下由樹さん演じる警視庁刑事部捜査一課内の(架空の)特別被害者部署に所属する女性刑事の北見志穂が、猟奇的な事件の解決に向けて自ら囮になって犯人検挙に挑むシリーズだ。
毎回犯人が北見刑事を殺害しようとするギリギリのところで、北見の相棒である袴田俊郎巡査部長(蟹江敬三さん)が間一髪、主人公を救出し犯人は逮捕されるというストーリーだが、後に袴田巡査部長の役どころは水野美紀さん演じる刑事に引き継がれる。
その他の警察ドラマには警察学校を舞台としたものもあり、テレビ朝日系列の『陽はまた昇る』では佐藤浩市さん演じる元捜一刑事の遠野一行警部補が警視庁警察学校の教官に異動し、若い訓練生とぶつかり合いながら事件を解決、また共に成長していくという物語。尚、この連続番組は同じ佐藤浩市さん主演の単発刑事ドラマ『最後の晩餐 〜刑事・遠野一行と七人の容疑者〜』の続編となっている。
通常の刑事や外勤警察官以外のドラマとしては、島田一男さん原作の『鉄道警察官・清村公三郎』がある。これはテレビ東京系の2時間ドラマで2005年から放送されている鉄道絡みの警察ドラマシリーズ。主演は小林稔侍さん演じる清村公三郎巡査部長で、彼は警視庁鉄道警察隊・東京分駐所に勤務する警察官だが東京管内以外にも鉄道を駆使して捜査に赴く。
同じ鉄道公安官の登場する作品としては、『鉄道捜査官』があり、この番組はテレビ朝日系で2000年から放送されている2時間ドラマのシリーズ。架空の捜査部署である「警視庁鉄道捜査隊東京駅分駐所刑事課」に所属する沢口靖子さん演じる花村乃里子警部補と同僚たちの活動を描く警察ドラマ。花村は、世田谷西警察署から警視庁鉄道捜査隊に異動してきた鉄道捜査官で、分駐所で主任を務める刑事だが、彼女に扮する沢口さんも刑事や捜査官役が多い人である。
更に変わり種を紹介すると、テレビ朝日系『女たちの特捜最前線』の主役は刑事や外勤の制服警官ではなく警察署内勤の女性事務職員たちで、彼女たちは実際に現場に出ることなく噂話や内部情報だけで事件の謎を解いていく。主人公のひとり、高島礼子さん演じる室町京子は京都中央警察署の総務課勤務の巡査長。宮崎美子さん演じる一条弥生は同じく京都中央警察署の広報課勤務の巡査長。そして高畑淳子さん演じる八坂美鈴は、京都中央警察署の食堂勤務の嘱託署員で京都府警の元刑事という役柄だ。
-(4)に続く-
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