『鬼平犯科帳』(中村吉右衛門版) テレビ番組シリーズ 第1シリーズ キャスティング・リスト 《暫定版》 〈22JKI28〉

以下に『鬼平犯科帳』(中村吉右衛門版) テレビ番組シリーズ 第1シリーズ キャスティング・リストを掲載するが、現状は《暫定版》であり、都度、加筆・修正の予定である。また各話のあらすじやその他の諸データは番組公式HPで確認願いたい。

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『鬼平犯科帳』フジテレビ公式HP・・・各話のあらすじはこちらから

各欄コメントには、物語の結末や、所謂(いわゆる)ネタバレ的な内容が含まれているので、視聴前や未読の場合は要注意。

 

第1シリーズ(1989年7月12日 – 1990年2月21日、1990年4月4日、フジテレビ系 水曜20時台時代劇枠)

●第1話「暗剣白梅香」(1989年7月12日)(視聴率16.1%)
・金子半四郎 – 近藤正臣   ・おえん – 西川峰子   ・三の松平十 – 中村又五郎
・利右衛門/森為之助 – 牟田悌三   ・丸太橋の与平次 – 中田浩二   ・甚兵衛 – 芝本正

※三の松平十に金子半四郎を紹介する口入屋・丸太橋の与平次は原作には登場しない。そして重要な役どころである女郎のおえんも、テレビ番組のオリジナルキャラクターである。更に原作では、人間味に欠けた半四郎の冷酷な面が際立って表現されている。

※ゲスト出演者では、近藤正臣演ずる金子半四郎に市川雷蔵・眠狂四郎に重なる姿をみた。冷静でニヒルな態度、そして妖艶さを持つ人物。また、おえんの西川峰子も年増女の色気が溢れていたし、女郎の境遇にある女の非情さをよく表現していた・・・。更に、三の松平十役の2代目中村又五郎(2009年2月21日没)も、吉右衛門シリーズには多数出演していて、本作に加えて第2シリーズ第17話「春の淡雪」(1991年3月13日放送)・第4シリーズ第1話「討ち入り市兵衛」(1992年12月2日放送)・第7シリーズ第9話「寒月六間堀」(1997年6月4日放送)の4作に参加していた。

※金子半四郎・・・雇われて殺しを行う刺客で、鬼平の暗殺を金300両で引き受けた浪人。体に染み付いた血の匂いを消すために「白梅香」という香油を使用していることから身元が割れる。元来は大洲藩士で父の仇討ちの旅に出ていたのだが、白子の菊右衛門の手によって仕掛人(暗殺者)に育てられた。ところが物語では、その仇である森為之介(利右衛門)に返討にあって、意外とあっけない最期を遂げる。原作では、色白の頬骨が張った細面、ふとやかな鼻、濃い眉をしていて眼球が見えないほどに細い目の持ち主。総髪。ひげは剃っていて、女のようにやさしい声音である、と描かれている。

※利右衛門/森為之助・・・横川の扇橋の南、石島町の船宿「鶴や」の主人だが、本当は金子半四郎の仇であった。この後、森為之介は妻の実家がある近江国へと隠遁したので、この船宿は小房の粂八が預かり、軍鶏鍋屋の「五鉄」と共に『鬼平犯科帳』シリーズの主要探索拠点の一つとなる。

※三の松平十・・・根津権現に住む、江戸暗黒街の顔役。また、彼に仕事(平蔵の暗殺)を依頼したのは蛇の平十郎である。池波の短編集『江戸の暗黒街』にも登場。

●第2話「本所・櫻屋敷」(1989年7月19日)(視聴率14.4%)
・おふさ – 萬田久子    ・小川や梅吉 – 遠藤征慈    ・服部角之助 – 水澤心吾
・丑五郎 – 木場勝己

※相模に彦十が服部角之助の屋敷に探りを入れて捕まり、拷問されるシーンは原作にはない。またおふさの過去を伊三次が調査しているが、原作では日本橋鉄砲町の御用聞き・文治郎がこの任に当たっており、また平蔵の親友、岸井左馬之助が初めて登場する。

※おふさ役の萬田久子が好演。後年の復讐に動き出した時期以降の開き直りやふて腐れ方には、おふさの心情がよく表されておりある意味では凄味も出ていた。

※おふさ・・・原作によると、若き日の平蔵と岸井左馬之助が心を寄せた女性。一度は日本橋・本町の呉服問屋「近江屋」へと嫁いだが夫の死後に虐げられて、本所に住まう無頼の御家人・服部角之助へ再嫁した不幸な女。しかし平蔵たちが再会した時には、復讐の為にかつての嫁ぎ先であった「近江屋」への襲撃計画を小川や梅吉に持ちかけるが、捕まり遠島にされた。

※小川や梅吉・・・表向きは神田・昌平橋北詰の茶漬屋「小川や」の亭主。野槌の弥平(小房の粂八の自白で盗人宿へ踏み込まれて捕縛されて磔刑となった凶悪な盗賊の首領。但し、昔は本格派盗人だった)の一味の幹部で、服部角之助をそそのかして「近江屋」への急ぎ働きを企んだが露見、逃亡するが捕えられて磔刑となる。

●第3話「蛇の眼」(原作:『座頭と猿』・『蛇の眼』)(1989年7月26日)(視聴率15.2%)
・白玉屋・紋蔵 – 誠直也    ・おその – 松居一代    ・鶉の徳太郎 – 重田尚彦
・彦の市 – 山田吾一   ・蛇の平十郎 – 石橋蓮司   ・同心・小野十蔵 – 柄本明

※原作では鶉の徳太郎が彦の市を殺そうとして、逆に返り討ちに遭う。更に蛇の平十郎は後で水之尾で捕まっている。このテレビ番組は原作の『座頭と猿』も併せて脚本に反映しているので、徳太郎は蛇一味の牝誑男・鶉の福太郎と合わせて徳太郎と名が変わって登場している。また彦の市は、『座頭と猿』において愛人おそのの情夫である福太郎を殺して逃亡するが、その後の『蛇の眼』では、おその恋しさに再び姿を現して捕まるのだ。更に原作では皆殺しにされる千賀屋敷の人々は、テレビ番組では全員が助かる形となっている。

※蛇の平十郎・・・表向きは印刷師の井口与兵衛だが、実際は名うての兇賊の頭。“鬼平”を恐れた他の盗賊達ちが次々と江戸から退散していく中で、あくまでも江戸での盗みにこだわり、邪魔者の平蔵の暗殺(金子半四郎や雷神党などへ依頼)を何度も企むが失敗する。その後、白玉屋・紋蔵や彦の市、志度呂の金助などを従えて10年ぶりの大仕事に挑むが、平蔵に捕縛されて火刑となる。

●第4話「血頭の丹兵衛」(1989年8月2日)(視聴率13.4%)
・血頭の丹兵衛 – 日下武史    ・長次 – 鹿出俊之輔    ・お六 – 村上理子
・蓑火の喜之助 – 島田正吾   ・同心・小野十蔵 – 柄本明

※原作で最後に茶屋で喜之助と会うのは、平蔵と粂八ではなく酒井と粂八。小房の粂八のテレビ番組初登場はこの「血頭の丹兵衛」だが、原作では野槌の弥平一味として捕らえられた『唖の十蔵』である。また、テレビ番組では、平蔵と粂八の初対面のシーンには小野十蔵が立ち会っているが、原作の『血頭の丹兵衛』では十蔵は既に自決している為に登場しない。

※血頭の丹兵衛・・・以前は本格派の盗賊であり小房の粂八の親分だったが、時流に流されて急ぎばたらきに走る凶賊と化した。捕縛後は磔・獄門に処される。また、彼の捕縛を手引きしたことで粂八は密偵となる。

※蓑火の喜之助・・・大滝の五郎蔵の師匠でもあり、「お盗め三ヵ条」を頑なに守る伝説の本格派大盗賊だったが、原作の『血頭の丹兵衛』での初登場時には既に引退して武州・蕨で宿屋を営んでいた。江戸で血頭の丹兵衛の凶行を知った喜之助は、それが偽物の仕業だと思い、いかにも本格派のお盗めとみえる(しゃれた)仕事をしてのけた後に京へと上るが、途中で粂八や護送中の血頭の丹兵衛本人と出会い、ことの事実を悟った。後に訳あって再び江戸に出て盗みの世界に戻るが、決行前夜、助っ人として雇った野槌の弥平一味の残党に裏切られて相打ちとなって悲壮な最後を遂げた(『老盗の夢』。ちなみに彼は、同じ池波作品が原作の映画『必殺仕掛人・春雪仕掛針』にも登場しており、その際は兇賊・猿塚のお千代への仕掛を音羽屋半右衛門に依頼する役だった。

●第5話「血闘」(1989年8月9日)(視聴率14.2%)
・三井伝七郎 – 岩尾正隆   ・堀場陣内 – 唐沢民賢   ・吉間の仁三郎 – 磯部勉

※原作には、おまさを救う為に渋江村・西光寺裏の荒れ屋敷に踏み込んだ平蔵が、盗賊どもにおまさに関しての啖呵をきるシーンはない。またおまさが自分の居場所を教える為に針を残していくが、原作では長屋に書きつけ(厳密には縫い針を刺した畳の下に紙片がある)を残して置く。更に原作では、おまさには七つになる女の子がいるらしいとなってるが、この吉右衛門版のテレビ番組ではそのことは触れられていないし、他の相違点としては、平蔵に頼まれて急を知らせる為に役宅へ駆け向かうのは「嶋や」の船頭・由松である。

※吉間の仁三郎・・・熊倉の惣十一味でおまさと一緒だった盗賊。誘拐されたおまさの見張り番だったが、救出に向かった平蔵に首を絞められ、意識を失う。また原作では、登場当初のおまさは引き込み役を務めていた乙畑の源八という盗賊の捕縛に協力したとされているが、この吉右衛門版ではその源八の立場が仁三郎に代わった形で描かれている。

●第6話「むっつり十蔵」(原作:『唖の十蔵』)(1989年8月16日)(視聴率15.1%)
・おふじ – 竹井みどり    ・夜鳥の仙吉 – 宮内洋    ・掛川の太平 – 浜田晃
・おいそ – 柳綾稀子   ・助次郎 – 河野実    ・同心・小野十蔵 – 柄本明

※原作のタイトルは『唖の十蔵』(唖という言葉を避けた為に変更)で、小野十蔵が追っている盗賊は掛川の太平ではなく、野槌の弥平だった。また捕えた盗賊は小房の粂八である。更に、小川や梅吉が夜鳥の仙吉に変更されている。また原作では、シリーズ初回ということもあってか、火付盗賊改方の歴史や組織の概要の他、前任の堀帯刀に代わって長谷川平蔵が長官に就任する場面なども描かれている。

※十蔵と云えば、淡々としたマイペースともいえる演技の柄本明も決して悪くはないのだが、松本幸四郎版の田中邦衛がより適役であり、その独特の印象がぬぐえない。

※小野十蔵・・・いたって寡黙なところから、同心仲間からは「啞の十蔵」と呼ばれているが、働きぶりは見事。同情から掛川の太平の一味である夫の助次郎を殺した身重のおふじを匿うが、太平の手下・仙吉におふじを誘拐されて強請られ、やがてことが露見する。幸い、掛川一味は一網打尽にされるが、平蔵に詫び状を残して自害する。

●第7話「明神の次郎吉」(1989年8月30日)(視聴率14.3%)
・明神の次郎吉 – ガッツ石松   ・宗円 – 徳田興人   ・春慶寺の住職 – 松田明
・櫛山の武兵衛 – 土屋嘉男

※ほぼ原作通りの内容。この回の明神の次郎吉のキャスティングに関しては、その容貌からガッツ石松はベストだったとの意見が多い(笑)。彼は、1993年2月10日放送の第4シリーズ第8話「鬼坊主の女」でも鬼坊主清吉を演じていることから、プロの役者には無い雰囲気が吉右衛門版では重宝されていたとみるべきか・・・。ちなみに原作では、平蔵が白玉を三杯も食して腹をこわしたり、蝉の鳴く描写を取り入れたりと、初夏の季節を強調する描写が複数みられる。

※明神の次郎吉・・・櫛山の武兵衛一味の盗人。お人良しで他人の難儀を見過ごせない男で、罪滅ぼしをしながら、結果として罪を重ねるというどこか憎めない人物。宗円との約束を果たすべく、遺品を岸井左馬之助の渡す為に春慶寺を訪れる。最後は、押し込みを事前に察知されて捕縛された。劇画版では一旦囲みを破って逃走したが、左馬之助のいる松浦道場に盗みに舞い戻った挙句に捕まる。しかし、凶悪な犯罪には手を染めていなかったことで平蔵に許されて、罪一等を減じられ遠島処分となった。

●第8話「さむらい松五郎」(1989年9月6日)(視聴率15.1%)
・須坂の峰蔵 – 赤塚真人    ・おちょう – 石倭裕子    ・お兼 – 速水典子
・阿久津 – 小池雄介   ・赤尾の清兵衛 – 平井靖   ・ろくろ首の藤七 – 深江章喜
・同心・山口平吉 / さむらい松五郎 – 坂東八十助

※原作では木村忠吾が主役の編で、おちょうも登場しない。また、本物の松五郎と偶然に出会って捕える同心は、酒井祐助ではなく小柳安五郎。このテレビ番組では坂東八十助を起用する為に、原作の木村忠吾の役割を別人の山口平吉に変更したのだろうとされている。また原作での木村忠吾は、この時、自身の菩提寺である威徳寺を訪ねているが、原作前話の『五月闇』で殺された密偵・伊三次もこの寺に埋葬されたとされている。

※さむらい松五郎・・・別名は網掛の松五郎と言い、役者あがりで無口な性格。以前は盗賊・湯屋谷の富右衛門の右腕だったが、富右衛門の死後は一人働きをしていた。上記の様に、原作では木村忠吾と瓜二つで、間違われるのは山口平吉ではなく忠吾である。劇画版では平蔵と剣を交えて打倒された。

●第9話「兇賊」(1989年9月13日)(視聴率17.8%)
・網切の甚五郎 – 青木義朗   ・文挟の友吉 – 江幡高志   ・おしづ – 風間舞子
・鷺原の九平 – 米倉斉加年

※鷺原の九平が身を隠す場所は、原作では青山・久保町にあるいせや(大黒/板尻の)吉右衛門が営む居酒屋だが、テレビ番組ではおしづの店となっている(屋号は同じ「いせや」)。考え過ぎかも知れないが、やはり「吉右衛門」という名前の使用を避けたのだろうか・・・。また原作では、軍鶏鍋屋「五鉄」で食事をしていた九平を密偵の伊三次が人相書を頼りに捕らえるが、テレビでは、おまさが癪(しゃく、胸や腹のあたりに起こる、激痛の総称)を装って九平を捕らえる。更に原作では網切の甚五郎の父親は昔、平蔵に殺害されたという設定で、『あばたの新助』においては甚五郎による平蔵への復讐劇のはじまりを描いていて、その後、『兇賊』では益々大規模な平蔵暗殺を試みるのだった。但し、テレビ番組では甚五郎の父親は甚五郎の子分となっていて趣が微妙に異なる。

※鷺原の九平役の米倉斉加年(2014年8月26日没)の演技が秀逸。いずれの場面でも老盗賊の心情が巧みに表現されていた。

※文挟の友吉は、第4シリーズ第18話「おとし穴」(原作は『あばたの新助』)でも登場(演者は小野武彦)するが、原作での時系列では『あばたの新助』が先である。

※網切の甚五郎・・・全国を股にかける、まさしく兇賊。父親・土壇場の勘兵衛の仇であり、またお盗めの邪魔となる平蔵を憎み、幾度にわたり暗殺を試みるが失敗する。極悪非道の盗みを多く行い平蔵を追い詰めたが、最後は逃亡先の倶梨伽羅峠で待ち伏せていた平蔵に(原作では)両腕を切り落とされて惨殺される。

●第10話「一本眉」(原作:『墨つぼの孫八』・『一本眉』)(1989年9月20日)(視聴率14.7%)
・馬返しの与吉 – 尾藤イサオ   ・倉渕の佐喜蔵 – 藤岡重慶   ・清洲の甚五郎 – 芦田伸介

※この回の脚本のベースは原作の『墨つぼの孫八』のウエイトが高く、清洲の甚五郎のキャラクター創りとストーリーの展開はそこから形作られている。一方、『一本眉』からは、甚五郎と左喜蔵の確執に関する因縁の関係性が筋書きに取り込まれた形だ。ちなみに、原作の『一本眉』で清洲の甚五郎と酒を酌み交わすのは、平蔵ではなく木村忠吾である。

※清洲の甚五郎・・・誰も素顔を知らない伝説級の本格派盗賊である。両の眉毛が繋がっている為、煮売り酒屋「治郎八」で奢られた木村同心から「一本眉の客」の綽名を付けられている。盗みを邪魔されたことに憤慨して、悪逆な倉淵の左喜蔵一味を探し出して壊滅させた。原作では平蔵に行動を探知されることは無く、墨斗の孫八(大工あがりの盗賊。押し込み当夜に卒中で亡くなる)と掛け合わせた人物として設定されている。

●第11話「狐火」(1989年9月27日)(視聴率13.3%)
・狐火勇五郎 – 速水亮    ・文吉 – 伊藤高    ・お久 – 池田純子
・瀬戸川の源七 – 垂水悟郎

※原作では、おまさと勇五郎が夫婦として暮らしたのは1年だが、この番組では京都への旅の途中で勇五郎は病死してしまう。またやはりこの回に関しても、原作の平蔵の方が勇五郎兄弟に対する裁断は格別に厳しい。

※瀬戸川の源七役の垂水悟郎(1999年1月21日没)は、この吉右衛門版ではこの「狐火」の他に第3シリーズ第1話「鯉肝のお里」(1991年11月20日放送)の長虫の松五郎、第4シリーズ第3話「盗賊婚礼」(1992年12月16日放送)での瓢箪屋勘助役、第6シリーズ第6話「はさみ撃ち」(1995年8月23日放送)での弥治郎、第8シリーズ第3話「穴」(1998年4月29日放送)の壷屋菊右衛門など、多数の配役を務めている。また松本幸四郎版の第1シリーズ第37話「おみね徳次郎」(1970年6月16日、NET / 東宝)では徳次郎を、第1シリーズ第63話「女賊の恋」(1970年12月15日、NET / 東宝)では源造、第2シリーズ第1話「剣客」(1971年10月7日、NET / 東宝)で松尾を、萬屋錦之介版の第3シリーズ第1話「さざ波伝兵衛」(1982年、ANB / 中村プロ)では砂堀の蟹蔵を演じた大ベテラン俳優である。

※狐火勇五郎・・・初代勇五郎は本格派の盗賊で、鶴の忠助(おまさの父親)を介して無頼時代の平蔵と面識があったが既に病没している。その息子の2代目は、先代の妾・お吉の子で名を又太郎と言う。本妻の子で自分の弟の文吉を探す為に江戸に出て来た。平蔵の温情により盗賊家業から足を洗い(原作では二度と盗みが出来ない様にと、左腕の肘から下を切り落とされて)おまさと夫婦になったが、間も無く流行り病で病死。

※瀬戸川の源七・・・狐火勇五郎の右腕だったもと盗賊。引退して葛飾・新宿の渡し場にある茶店の主となっている。

●第12話「兇剣」(スペシャル)(原作:『兇剣』・『艶婦の毒』)(1989年10月11日)(視聴率18.7%)
・浦部彦太郎 – 井川比佐志   ・高津の玄丹 – 藤岡琢也   ・およね – 長谷川真弓
・大河内一平 – 大前均   ・白狐の谷松 – 松崎真   ・猫鳥の伝五郎 – 粟津號

※テレビ番組では、高津の玄丹は追い詰められて自決するが、原作では牢内で断食して自死。

※大坂の盗賊である高津の玄丹を、自身も関西出身の藤岡琢也(2006年10月20日没)がさもそれらしく演じていて印象深い。浦部与力役の井川比佐志も、実直で生真面目、そして理屈っぽい奉行所役人の役どころを巧みに演じた。更に、玄丹一味の大河内一平に配された大前均(2011年3月1日没)が、身長190cmの巨体とその怪異な風貌で抜きん出て目立つ存在であったが、あまりにも簡単に殺されてしまう。

※浦部彦太郎・・・父・浦部源六郎から京都西町奉行所の与力職を継いだ者で、以前から平蔵とは親子共々顔見知りの間柄である。何故ならば平蔵は、かつて父の宣雄が奉行を務めていた関係から京都西町奉行所に知人が多いのだった。ちなみに彦太郎の娘・妙は、木村忠吾の許嫁であったが数年の闘病の後に亡くなったとされていて、現在も浦部と忠吾の交誼は続いているという設定だ。

※高津の玄丹・・・表向きは出雲屋丹兵衛という便船宿の亭主。だが実際は、白子の菊右衛門と双璧をなす大坂の暗黒街を牛耳る香具師の元締であり、更には盗賊稼業や密貿易まで手掛けていた大悪党。平蔵に刺客を差し向けたが、上記の通り原作では捕縛されて獄死する。

※大河内一平・・・大和郡山の浪人で、高津の玄丹の援助で大坂の王仁塚に小さな道場をかまえている。玄丹の命で平蔵暗殺を目論むが、助太刀に現れた左馬之助が投げた脇差に貫かれ死亡。だが平蔵に重傷を負わせて窮地に追い込むなど、なかなかの剣の遣い手であることには違いない。尚、この回で大河内一平を演じた大前均(2011年3月1日没)は、第4シリーズ第12話「埋蔵金千両」(1993年3月17日放送)では中村宗仙にキャスティングされている。

※原作では高津の玄丹のライバルとして、白子の菊右衛門という人物が登場する。この菊右衛門は原作では『暗剣白梅香』や『麻布ねずみ坂』などで平蔵暗殺を陰で仕掛ける上方の香具師の元締めだが、その後は“鬼平”の人柄に触れて、同じく原作の『兇剣』では、半滝の紋次からの平蔵殺しの依頼を無視するなど平蔵に好意的な態度をとる。また他の小説では藤枝梅安を仕掛人として育てた人物としても、池波ファンには御馴染みの存在。

●第13話「笹やのお熊」(1989年10月18日)(視聴率16.4%)
・荒尾の庄八 – 早川純一   ・庄八の女房 – 田畑ゆり   ・今市の十右衛門 – 五味龍太郎
・入升屋市五郎 – 下元年世

※吉右衛門版でのお熊(本所・弥勒寺前の茶店「笹や」の主人)は今回が初登場であるが、堂々と探索の手助け役を担っている。原作では既に『寒月六間堀』や『用心棒』、『蛙の長助』などに登場しては、自身の店「笹や」を火盗の探索の拠点や連絡(つなぎ)所として提供している。また原作に当たる『お熊と茂平』では、茂平は庄八の伯父という設定になっている。尚、お熊役の北林谷栄(2010年4月27日没)が、小柄ながらも矍鑠(かくしゃく)とした老婆を好演している。尚、このテレビ番組での北林・お熊と猫八・彦十の掛け合いが楽しく面白い。

※荒尾の庄八・・・今市の十右衛門の配下で、千住の小塚原で畳屋を営む。弥勒寺への押し込みを図るが捕縛される。

●第14話「あきれた奴」(1989年10月25日)(視聴率20.3%)
・おたか – 長谷直美   ・鹿留の又八 – 平泉成   ・八丁山の清五郎 – 守田比呂也
・雨畑の紋三郎 – 三浪郁二   ・岡村啓次郎 – 中村橋之助

※原作では本作は岡村啓次郎(この番組オリジナルの役柄)ではなく、同心・小柳安五郎のエピソード。また鹿留の又八の過去は、葦火の喜之助の配下で八丁山の清五郎は夜兎の角右衛門一味だった。またこの番組では岡村の人物描写のウエイトが大きいが、原作では又八の精神的な葛藤や女房・おたかとの馴れ初め話などにより多くの比重が置かれている。

※岡村啓次郎役の中村橋之助が、清々しく凛とした人物を演じて良い。また平泉成の又八の演技も光る。

※鹿留の又八・・・原作では、一度は小柳安五郎に捕まるが、小柳のはからいで逃亡する。その後にかつての仲間で殺人犯の雨畑の紋三郎を捕えた上で改めて小柳の前に現れ、遠島に処された(『流星』)。ちなみに、劇画版では蓑火の喜之助の配下で五郎蔵とは同輩だったが、喜之助が盗賊一味を解散した後は足を洗って数珠職人になったという設定である。

●第15話「泥鰌の和助始末」(1989年11月1日)(視聴率19.9%)
・大工・孫吉 – 小鹿番    ・磯太郎 – 山崎有右    ・金谷の久七 – 高峰圭二
・棟梁・喜兵衛 – 森幹太   ・泥鰌の和助 – 財津一郎

※原作の『泥鰌の和助始末』と『下段の剣』の内容が合わさって一話となっていて、このドラマでは和助の復讐譚や和助と磯太郎の話に焦点が絞られている感じがして、松岡重兵衛が登場しない。だが原作では、平蔵と松岡重兵衛との関係性や辰藏が松岡の探索でしくじるエピソード、不破の惣七が和助の押し込みを横取りするという逸話も描かれている。また番組では、和助は駿府の大盗・地蔵の八兵衛の配下だったが、八兵衛が亡くなった後に足を洗って江戸に来たという設定になっている。松岡重兵衛と惣七の物語は、第2シリーズの第18話「下段の剣」で描かれる。

※泥鰌の和助・・・浅草で櫛屋を営む。大工小僧とも呼ばれた、親子二代にわたる大工兼盗賊で、その大工の腕を生かした「盗み細工」を得意とする。息子・磯太郎の仇である紙問屋の「小津屋」に対して、以前仕掛けた「盗み細工」を活かして地蔵の八兵衛一味の残党・金谷の久七らを誘って復讐を果たすが、不和の惣八に裏切られて浪人に殺された。

●第16話「盗法秘伝」(1989年11月29日)(視聴率17.1%)
・鬼頭監物 – 津村鷹志    ・弥吉 – 古田将士    ・米倉半四郎 – 加島潤
・升屋市五郎 – 田中弘史   ・おかね – 川村一代   ・女郎 – 大島瑤子   ・おもよ – 園英子
・伊砂の善八 – フランキー堺

※この回は、平蔵が浜松の叔母の法要に向かう途中での事件となっているが、原作では駿州(静岡)での『盗法秘伝』の後に京都へ向かう途中に遭遇した事件である。以降、『艶婦の毒』の事件で京都に至り、『兇剣』を経て奈良から折り返して、江戸へ戻る帰り道の『駿州・宇津谷峠』の件で再び静岡が舞台となる。また番組では、升屋市五郎に加えて金谷宿の役人・鬼頭監物と云う名の悪人が登場する。更に升屋から奪った金については、善八が風呂に入った隙に御守り袋に書かれた秘密を平蔵が盗み見て隠し場所に先回りする形となっているが、原作では全国七つの盗人宿の一つに隠すことになっていて、御守り袋に隠し場所を書いている訳ではない。

※何と言っても、フランキー堺(1996年6月10日没)の伊砂の善八が絶品、ほのぼのとした人間味のある盗人を熱演している。

※伊砂の善八・・・盗みの極意を極めた独りばたらき専門で本格派の老盗賊であるが、少々間が抜けたところもある。旅の途中で平蔵を単なる浪人と勘違いして、自分の跡継ぎにしようと思い立った。結果、盗みの秘伝書「盗法秘伝」と各地の資産家で盗みの標的を記した嘗帳「お目当て細見」を平蔵に取り上げられたが、最後は赦免された。だがその性格は弱い者や虐げられた者に対する思いやりに溢れ、実際に盗みの技も巧みで、細工した火箸と元結を使いどんな鍵も簡単に解錠してしまうのだった。

●第17話「女掏摸お富」(1989年12月6日)(視聴率18.9%)
・霰の定五郎 – 睦五朗    ・卯吉 – 中西良太    ・岸根の七五三造 – 片桐竜次
・狐火の虎七 – 根岸一正   ・お富 – 坂口良子

※番組の最後に平蔵がお富の指の筋を切り、二度と悪事を働けない様にするところは原作にはない脚色。原作の鉄砲町の御用聞である文治郎は、このテレビ番組では登場せず、代わりの役柄を(江戸屋猫八が演じる)相模の彦十が務める。また掏摸修行時代の七五三造は、お富に親しい人物として描かれている。

※霰の定五郎・・・数多くの配下を抱える掏摸の元締めで、女掏摸のお富の養父。捕縛されることなく病没した。

●第18話「浅草・御厩河岸」(1989年12月13日)(視聴率16.6%)
・お梶 – 浅利香津代   ・卯三郎 – 田武謙三   ・彦造 – 石山雄大   ・喜左衛門 – 高並功
・善太 – 遠山二郎   ・海老坂の与兵衛 – 岩井半四郎   ・松吉 – 本田博太郎

※原作では本篇が”鬼平”シリーズの実質的な第1作で、主人公は飾り職人の松吉ではなく「豆岩」の店主・岩五郎だった。松吉の女房のお梶にあたる岩五郎の嫁はお勝といい、卯三郎が同居しているという設定もない。また岩五郎とのつなぎ役は同心・酒井祐助ではなく与力・佐嶋忠介(の配下の密偵)である。そして原作での海老坂の与兵衛は、岩五郎の密告で捕らえられるが、このテレビ番組ではお梶が火盗改に訴え出た為となっている。

※海老坂の与兵衛・・・原作では、大勢の配下を従えた親子3代にわたる本格派の大盗賊。隠居金を得る為の最後の盗みとして本郷一丁目の醤油問屋・柳家吉右衛門に目を付けるが、密偵と知らずに岩五郎を雇ったことで計画が露見して捕まる。

●第19話「むかしの男」(1989年12月20日)(視聴率13.2%)
・近藤唯四郎 – 鹿内孝   ・勘造 – 亀石征一郎   ・美雪 – 小林かおり   ・辰蔵 – 長尾豪二郎
・砂吉 – きくち英一   ・三次 – 下元年世   ・用人・松浦与助 – 阿木五郎

※この番組では久栄の妹である美雪の娘・たえが誘拐されるが、原作で誘拐されるのは同心・小野十蔵が面倒をみていたおふじという女の娘・お順で、後にこの子は平蔵夫婦に養女として引き取られる。また更に原作では、平蔵が火盗改の長官を一旦解任されて京都に赴き、江戸を留守にしていた時期に発生した事件である。そしてこの誘拐事件の発生には『唖の十蔵』に登場した兇賊・小川や梅吉の弟である霧の七郎が裏で絡んでおり、テレビ番組の勘造はこの七郎の代役となっている。彼は逃げ延びて原作の『霧の七郎』で再び登場して平蔵に挑戦するのだった。尚、原作では近藤唯四朗の名も勘四朗であり、砂吉も登場しない。

●第20話「山吹屋お勝」(1990年1月10日)(視聴率19.1%)
・お勝 – 風祭ゆき   ・関宿の利八 – 森次晃嗣   ・霧の七郎 – 菅貫太郎   ・政 – 森田順平
・弥吉 – 岡部征純   ・お才 – 西岡慶子   ・夜兎の角右衛門 – 五味龍太郎

※原作では、政は登場しない。また、最後に関宿の利八とおしの(お勝)はふたり手を携えて姿をくらますというのが結末で、その後に関宿の利八から平蔵へ届いた詫びの手紙によって捕縛に繋がる。更に関宿の利八のかつての頭である夜兎の角右衛門は、話の冒頭から既に平蔵の密偵となっているという設定だ。また、原作での忠吾の出番はごくわずかである。

※時代劇にも多数出演している風祭ゆきは、第3シリーズの第10話「網虫のお吉」(1992年2月26日)でも網虫のお吉を演じているが、池波の描く悪女に適任の女優なのだろうか・・・。

※夜兎の角右衛門・・・自ら一味を解散して、ひとり火盗改へ自首した盗賊の首領。その時、関宿の利八のみが従った。その後、人足寄場から戻った二人を平蔵は密偵とし、角右衛門は本所・回向院裏に小間物屋を営んで平蔵の為に働いた。ちなみにこの夜兎の角右衛門に関しては、池波は彼の作品『看板』(短編集『谷中・首ふり坂』所蔵)で、初めて真の盗賊の三か条を披露させている。またこの短編が、後の“鬼平”シリーズの原型ともなったとされている。

●第21話「敵」(1990年1月17日)(視聴率15.0%)
・舟形の宗平 – 浜田寅彦    ・お浪 – 浅見美那    ・小妻の伝八 – 井上博一
・富治 – 椎谷建治   ・文助 – 草薙良一   ・花屋利兵衛 – 相馬剛三

※原作では、五郎蔵が初めて登場する。また五郎蔵の配下である文助が死病を病んでいるとの設定はなく、お浪も登場しない。

※舟形の宗平・・・大滝の五郎蔵と同様に元々は蓑火の喜之助配下の老盗賊であり、初鹿野の音松の盗人宿の番人をしていたところを捕まり、平蔵の人柄に心服して密偵となった。その後、本所の相生町で煙草屋を構えながら平蔵の探索に協力していたが、後に五郎蔵と義理の親子の盃を交しておまさと共に3人で暮らしている。

●第22話「金太郎そば」(原作:『にっぽん怪盗伝』)(1990年1月24日)(視聴率19.4%)
・お竹 – 池波志乃   ・藁馬の重兵衛 – 織本順吉   ・由松 – 潮哲也   ・伊太郎 – 山内としお
・ちゃり文 – うえだ峻   ・善助 – 灰地順   ・金屋伊右衛門 – 堺左千夫

※原作は『鬼平犯科帳』ではなく『にっぽん怪盗伝』から。当然だが本来は平蔵他の火付盗賊改方の面々は一切登場しない。このテレビ番組での“木更津の旦那”こと藁馬の重兵衛が、原作では鬼坊主清吉であり、彼はお竹に“川越の旦那”と名乗っている。また後に鬼坊主清吉は捕縛されて市中引き回しの上、品川の刑場で磔となるが、その際に辞世の歌を詠んで見物の町人達ちの喝采を浴びた(吉右衛門版ドラマでは、第4シリーズの第8話「海坊主の女」)。

※金屋伊右衛門役の堺左千夫(1998年3月11日没)は、初代シリーズの松本幸四郎版や萬屋錦之介版で密偵の伊左次を演じていた。

●第23話「用心棒」(1990年1月31日)(視聴率17.3%)
・高木軍兵衛 – ジョニー大倉    ・おたみ – 森口瑤子    ・文六 – 佐藤仁哉
・馬越の仁兵衛 – 江角英明   ・内儀・おわか – 松村康世   ・番頭・長吉 – 石浜祐次郎
・浪人・宮内 – 吉中六

※原作では、おたみや文六は登場しない。その為に、軍兵衛が州崎弁天社で浪人に絡まれたのは集金途中の文六の護衛をしているところではなく、暇な軍兵衛が散策に出掛けた折のこととなっている。また高木軍兵衛とお熊は知り合いであり、更に軍兵衛を脅迫するのは文六ではなく馬越の仁兵衛自身である。

※高木軍兵衛を演じていたロックロール・ミュージシャン(矢沢永吉らとキャロルを結成)のジョニー大倉は、2014年11月19日に亡くなった。

※高木軍兵衛・・・原作では、肥前・唐津藩の江戸藩邸詰めの藩士の息子として生まれた彼は、弱虫が故に幼い頃にはお熊によく助けられた。父の役目で唐津に戻った後に家督を継いだが、役目上の失敗で浪人となり諸方を放浪した結果、やがて江戸へ舞い戻る。鍾馗様の様な外見とは程遠く、見掛け倒しで弱虫な浪人の軍兵衛は、剣術の方もからっきしダメであった。その彼が盗賊の片棒を担がされそうになったところを平蔵に助けられる。以降は気分一新、坪井主水の道場に通って腕を磨いているという設定。劇画版では用心棒で入った商家の娘と恋仲になり、結婚後は武士を捨てて商人となった。

●第24話「引き込み女」(1990年2月7日)(視聴率15.6%)
・お元 – 高沢順子    ・佐兵衛 – 下塚諒    ・磯部の万吉 – 金子研三
・駒止の喜太郎 – 林彰太郎   ・長右衛門 – 有川正治

※原作では、お元は磯部の万吉に殺されるという悲惨な最後を迎えるが、このテレビ番組での結末は、ひとり旅立つお元を見送るおまさ、その二人の前に磯部の万吉が現われて危機一髪のところを同心・沢田小平次が救う。不承不承ながら結局、沢田もお元を見逃すというもの。また原作での大滝の五郎蔵とおまさは、既に夫婦となっている。

●第25話「雨の湯豆腐」(原作:『梅雨の湯豆腐』、短編集『殺しの掟』(『仕掛人・藤枝梅安』の原点))に収録(1990年2月14日)(視聴率16.4%)
・時次郎 – 清水健太郎    ・お照 – 黒田福美    ・上松の清五郎 – 辻萬長
・赤大黒の市兵衛 – 須永克彦   ・大工・為吉 – 新海丈夫   ・卯の木屋・藤右衛門 – 高桐真
・市助 – 日高久   ・宮沢要 – 大出俊

※原作は『鬼平犯科帳』ではなく『仕掛人・藤枝梅安』シリーズの原型となった『梅雨の湯豆腐』をもとにしており、従って鬼平犯科帳のレギュラー陣は登場しないので、この回のストーリーは大きく変更されている。梅安の相棒の彦次郎の湯豆腐好き、そして楊枝職人といった設定が受け継がれているが、名前は彦次郎ではなく時次郎に変更された。また彼はお吉とは恋仲ではなく、宮沢要も4年も前に斬り殺されている。

●第26話「流星」(スペシャル)(原作:『大川の隠居』・『流星』)(1990年2月21日)(視聴率18.6%)
・浜崎の友五郎 – 犬塚弘   ・沖源蔵 – 河原崎次郎   ・杉浦要次郎 – 伊東達広
・鹿山の市之助 – 南原宏治   ・籔原の伊助 – 花上晃   ・井上立泉 – 牧冬吉
・木下与平治 – 出水憲司   ・お仲 – 宮田圭子   ・生駒の仙右衛門 – 金田龍之介

※原作での同心・原田一之助の役が、このテレビ番組では小柳安五郎に代わっており、物語の最後で見事に妻の仇を討つ設定。また小房の粂八と一緒に盗人宿を発見するのは、原作では小柳安五郎ではなく「鶴や」の船頭・弁吉である。更に、浜崎の友蔵が登場する『大川の隠居』も併せてこの回の台本の下敷きとなっている。

※浜崎の友五郎・・・かつては盗賊・飯留の勘八の右腕であったが、若かりし頃の腕を活かして川越船頭となり別名を友蔵と言う。また粂八の師匠筋にも当たる人物。平蔵の評判に影響されて火盗改の役宅に侵入して平蔵の煙管を盗むが、赦されてその後は密偵として働いていた。だが、鹿山の市之助に勘八の遺児であり自分が面倒を見ていた庄太郎を人質にされ、心ならずも盗人の片棒を担がされてしまうが・・・。

※この回の友五郎(友蔵)役の犬塚弘(「ハナ肇とクレージーキャッツ」のメンバー)が好評だった。他作品ではとぼけた味のある役柄が多いが、この時は一本筋の通ったを盗賊/船頭の意地を好演している。

※井上立泉・・・平蔵とは父・宣雄の代から付き合いがある、芝・新銭座に住まう御典医(表御番医師)。かつて養母の波津と衝突して家を飛び出した若き日の平蔵を助けたこともあり、肝胆相照らす仲の人物。平蔵ら長谷川家の家族の健康管理はもとより、配下の者たちの病の治療や毒物の鑑定等と、火盗改の仕事をも手伝う。

※生駒の仙右衛門・・・大坂の大盗賊で別回で登場する掻掘のおけいの後ろ楯でもある。江戸への進出を図るが平蔵に尽く阻まれたあげくに、関東を縄張りとする鹿山の市之助と手を組んで再び配下の賊を江戸に送り込むが、ここでも平蔵に次々と捕縛される。そこで何としても平蔵に復讐をと考えるが、市之助が捕らえられたことをいち早く察知して逃亡を目指すが、大坂町奉行所の捕り手に捕縛された。

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投稿者: いずみ将哉

性別は男。年齢は不詳。職業も秘匿だ。 時々、気儘な散文を書いているが、昔から推理小説や警察小説といったミステリ、冒険小説とか戦記モノの愛好家であり、また大の歴史ファンなので、Kijidasu!ではそういったジャンルと関連する記事を紹介するつもりだ。 では諸君、記事で会おう。