『鬼平犯科帳』(中村吉右衛門版) テレビ番組シリーズ 第2シリーズ キャスティング・リスト 《暫定版》 〈22JKI28〉

以下に『鬼平犯科帳』(中村吉右衛門版) テレビ番組シリーズ 第2シリーズ キャスティング・リストを掲載するが、現状は《暫定版》であり、都度、加筆・修正の予定である。また各話のあらすじやその他の諸データは番組公式HPで確認願いたい。

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『鬼平犯科帳』フジテレビ公式HP・・・各話のあらすじはこちらから

各欄コメントには、物語の結末や、所謂(いわゆる)ネタバレ的な内容が含まれているので、視聴前や未読の場合は要注意。

 

第2シリーズ(1990年4月4日 – 1991年3月27日、フジテレビ系 水曜20時台時代劇枠)

●スペシャル「殿さま栄五郎」(1990年4月4日)(視聴率16.0%)
・火間虫の虎次郎 – 中谷一郎   ・長沼の房吉 – 高橋長英   ・五条の増蔵 – 和崎俊哉
・牛堀の参次 – 橋本功    ・勢多の幸松 – 原田清人    ・おりき – 鳳八千代
・鷹田の平十 – 長門裕之

※原作では、鷹田の平十に栄五郎を紹介するのは馬蕗の利平冶だが、このドラマには利平治は登場せず小房の粂八がその代役を務める。また栄五郎に扮した平蔵が牛堀の参次の牢抜けに手を貸すシーンもない。

※鷹田の平十役の長門裕之(2011年5月21日没)が、時代の変化を嘆く老盗賊の寂しさをよく表現。また、平十の女房・おりきを演じた鳳八千代も好演である。

●スペシャル「雲竜剣」(1990年10月3日)(視聴率14.9%)
・お妙 – 南條玲子   ・助次郎 – 藤木悠   ・堀本伯道 – 露口茂   ・堀本虎太郎 – 中康治

※この吉右衛門版テレビ番組で、平野屋源助(引退した盗賊の首領。芝・久保の扇屋の主人で密偵)が登場せずに代わりを大滝の五郎蔵が務め、岸井左馬之助も登場しない。また原作では、常陸の藤代に探索に向かうのは左馬之助と沢田同心、そして五郎蔵の三人組だが、このドラマでは沢田と粂八が行っている

※更に原作で活躍する同心・吉田藤七(最年長の同心で、後に木村忠吾の岳父となる)は番組オリジナルのキャラクターと言ってもよい「猫どの」こと村松忠之進に入れ替わっているので、木村忠吾が言い寄るのも村松の娘・おとくに変更されている。そして原作とこのテレビ番組での最大の変更点は、橘屋の女中・お妙が堀本虎太郎の情婦である点だ。

※堀本伯道・・・かつて平蔵の剣術の師匠であった高杉銀平と、真剣にて立ち合いをして引き分ける程の剣の達人で、自ら考案した「雲竜剣」(剣を体のうしろ下段に置く独特の構えが特徴的で、対戦相手には剣筋が見え難い)の遣い手である。その後、医術を学び医師となるも病人や貧しき者の為には多くの金が必要と感じ、盗人となって裕福な商家や寺社から盗んだ金銭を病者と貧者を救うことに費やす異色の盗賊となった。やがて実子の虎太郎の非道な行いを知り、自ら成敗しようとするも返り討ちに遭い亡くなる。ちなみに、池波の別途の長編小説『旅路』(若い女性が夫の仇討ちをする物語)にも彼は登場する。

※堀本虎太郎・・・堀本伯道の子で、父親譲りの必殺の剣技「雲竜剣」を遣う盗賊剣客。しかし、父の教え(本格派の盗みの道)に反して悪逆非道な急ぎ働きに走り、また平蔵ら火盗改を欺くために連続暗殺事件を起こす。だが父子相伝の雲龍剣の闘いの結末は、父の伯道を返り討ちにした子の虎太郎に上がるが、その後、捕えに来た平蔵に討たれた。

●第1話「おみね徳次郎」(1990年10月17日)(視聴率17.1%)
・徳次郎 – 峰竜太    ・おみね – 宮下順子    ・法楽寺の直右衛門 – 小松方正
・名草の嘉平 – 今福将雄   ・佐倉の吉兵衛 – 中井啓輔

※原作では徳次郎は網切りの甚五郎の手下だが、このテレビ番組での頭は西浜の甚衛門となっている。また原作では、徳次郎とおみねは物語の最後で結ばれない。その為、平蔵に捕らえられたふたりのその後に関しては、原作では特に触れていない。

※法楽時の直右衛門を演じた小松方正(2003年7月11日没)が、やはりハマリ役。薄笑いを浮かべながら、弱い者いじめをする悪徳商人などの演技は得意中の得意なのだろう。

●第2話「むかしの女」(1990年10月24日)(視聴率15.5%)
・おろく – 山田五十鈴    ・おもん – 浅利香津代    ・大丸屋万吉 – 近藤洋介
・井原惣市 – 田中浩

※原作にはおろくが密偵となる場面はない。また番組のラストにおろくは姿を消した形だが、原作では雷神党の手で殺されている。尚、松本幸四郎版でも無惨にも殺害された。更に原作では、岸井左馬之助が事件の解決に絡む。またテレビで浅利香津代が演じたおもんは、原作よりだいぶ若い設定の様だ。

※お六役の山田五十鈴は、1993年1月13日放映の第4シリーズの第4話「正月四日の客」にも出演して得意の三味線を披露している。

●第3話「白い粉」(1990年10月31日)(視聴率16.9%)
・勘助 – 左とん平   ・おたみ – 甲斐智枝美   ・霞の小助 – 勝部演之   ・六蔵 – 三上真一郎
・駒羽の七之助 – 北村英三

※原作の冒頭では平蔵が仲人となり、岸井左馬之助とお靜、五郎蔵とおまさの2組の祝言が行われるが、テレビ番組の方ではこの場面を一切をカットして、代わりに平蔵が襲撃される場面を追加している。その他の筋立てはほぼ原作通りだが、料理の献立が原作とは異なる様だ。

●第4話「托鉢無宿」(1990年11月7日)(視聴率17.3%)
・菅野伊介 – 深水三章   ・羽沢の嘉兵衛 – 睦五朗   ・古河の富五郎 – 五味龍太郎
・寝牛の鍋蔵 – 江藤漢   ・鹿川の惣助 – うえだ峻   ・井関録之助 – 夏八木勲

※一説には放送禁止用語を避ける為にか、題名を「托鉢無宿」(原作は『乞食坊主』)に替えている。また録之助が小猫を可愛がるシーンはテレビ番組のオリジナル

●第5話「五年目の客」(1990年11月14日)(視聴率16.0%)
・お吉(喜蝶) – 波乃久里子   ・江口の音吉 – 中山仁   ・忠兵衛(丹波屋の主人) – 奥村公延
・お菊(八重菊) – 大橋芳枝   ・巽の源兵衛 – 中村孝雄

※この回のテレビ番組は原作とは異なり、お吉の喜蝶時代から始まり、また夫の丹波屋源兵衛の名が忠兵衛に変更されている。原作で聞き込みを行ったのは岸井左馬之助であるが、テレビ番組では小房の粂八になっている。更に、お吉が五十両をなんとか工面して音吉に過去のことを清算して欲しいと懇願するシーンは原作にはない。また、お吉が最後に行方知れずになるのもテレビ番組独自の展開だ。

●第6話「雨引の文五郎」(1990年11月21日)(視聴率19.6%)
・雨引の文五郎 – 目黒祐樹    ・五丁の勘兵衛 – 浜村純    ・落針の彦蔵 – 樋浦勉
・伊助 – 関根大学

※原作では落針の彦蔵を牢抜けさせる五丁の勘兵衛の役どころは、舟形の宗平である。その為に物語の最後で死亡することはない。また原作での平蔵はこの時点では未だ文五郎を敵視しており、平蔵が文五郎を信頼するのは『犬神の権三』以降となる。

※雨引の文五郎・・・かつては西尾の長兵衛の右腕だったが、長兵衛の死後は後を継がず一人働きで「隙間風」の異名をとった神出鬼没の盗賊。火盗改方の探索をかわしながら江戸を離れる際は自らの人相書きを平蔵に送りつけ挑発するほどの人物。一味のライバルであった落針の彦蔵との抗争の末に密偵となるが、恩のあった犬神の権三郎を脱獄させた責任を取って自害する。

●第7話「猫じゃらしの女」(1990年11月28日)(視聴率16.8%)
・およね – 池波志乃    ・卯之吉 – 三ツ木清隆    ・彦蔵 – 津村鷹志
・伊勢野の甚右衛門 – 玉川伊佐男

※原作では後日談として、およねがお市の娘であることや伊三次との関係が描かれている。また鍵師の卯之吉は原作では脇役で、更に卯之吉が伊勢野の甚右衛門を裏切った理由もテレビ番組のオリジナルである。

●第8話「盗賊二筋道」(1990年12月5日)(視聴率17.6%)
・高萩の捨五郎 – 菅原謙次   ・寺尾の治兵衛 – 西山嘉孝   ・蛇の仁吉 – 片桐竜次
・篭滝の太次郎 – 石橋雅史

※このテレビ番組の脚本には、原作の『高萩の捨五郎』と『寺尾の治兵衛』の内容が併せて盛り込まれている。番組では寺尾の治兵衛は高萩の捨五郎を籠滝の太次郎に周旋した口合人だが、原作では捨五郎を篭滝の太次郎に紹介したのはある口合人としか示されていない。また原作の『寺尾の治兵衛』では、大滝の五郎蔵に助っ人を依頼するところから物語が始まる。更に原作では、最後に寺尾の治兵衛を殺すのは蛇の仁吉(原作では登場しない)ではなく(発狂して軟禁されていた)御家人・小坂金次郎である。

※高萩の捨五郎役の菅原謙次の評判が高かかった。ひとつ筋の通った、本格の盗賊らしい風格があった。原作には登場しない蛇の仁吉は片桐竜次が演じたが、こちらは逆に、悪党らしい冷ややかな態度がうっすらと漂っていて、良い。

※高萩の捨五郎・・・盗人の掟を頑なに守る本格派の盗賊で、密偵・相模の彦十とも旧知の仲である。義侠心に富み、無礼討ちにされそうになった子供を庇って足を斬られ、その後、後遺症が残ったが、手作りの杖を賜った平蔵に心服し、密偵となる。

※寺尾の治兵衛・・・もと蓑火の喜之助の配下の盗賊で、後に口合人となった。ひとり娘の嫁入り支度の為に生涯最後の頭としての本格働きを目論んで、大滝の五朗蔵とその配下に化けた平蔵の助けを受けて準備を進めるが、決行直前に狂人により殺害される。

※原作『高萩の捨五郎』では、相模の彦十は捨五郎に平蔵のことを長谷川伝九郎と紹介する。

●第9話「本門寺暮雪」(1990年12月19日)(視聴率16.4%)
・井関録之助 – 夏八木勲   ・名幡の利兵衛 – 草薙幸二郎   ・凄い奴 – 菅田俊
・白縫の伝八 – 多々良純

※このテレビ番組では、名幡の利兵衛が“凄い奴”を伴って江戸へやって来る。そして利兵衛が訪ねた白縫の伝八や大滝の五郎蔵は原作には登場しないし、当然ながら五郎蔵の立ち回りシーンも見られない。

※対決の場となる池上本門寺の場面だが、実際のロケ現場は光明寺(京都府長岡京市粟生にある寺院で西山浄土宗の総本山)にある石段で行われた。ちなみに実際の池上本門寺には、あの様な立派な石段は存在しない。

●第10話「女賊」(1991年1月23日)(視聴率16.3%)
・瀬音の小兵衛 – 花沢徳衛   ・おすみ – 野平ゆき   ・幸太郎 – 黒田隆哉
・勝四郎 – 伊藤高   ・猿塚のお千代 – 沢たまき

※原作では、幸太郎は自分の親が盗人だとは知らない。また平蔵が幸太郎の無責任さを叱責するのはテレビ番組オリジナルの演出であり、原作のラストでは小兵衛親子のその後が描かれている。

※原作の末尾では、京都に上る途中の平蔵が東海道・岡部の宿で小間物屋を営んでいる小兵衛と幸太郎の父子、川口屋のおすみ・お米の母子と邂逅するシーンが描かれている。

●第11話「四度目の女房」(原作:『にっぽん怪盗伝』)(1991年1月30日)(視聴率16.9%)
・伊之松 – 西岡徳馬   ・おふさ – 森口瑶子   ・利三郎 – 中田浩二   ・仁吉 – 花上晃
・おせい – 入江若葉

※原作は『鬼平犯科帳』シリーズではない。『にっぽん怪盗伝』の中の短編であり、伊之松の四度目の女房の名はおまさだが、密偵のおまさとの混同をさける為におふさに変更となっている。また利三郎は原作では単なる薬種問屋の主人であり、テレビ番組の様に伊之松の頭という設定ではない。

※更に原作の伊之松の最期・ラストもテレビ番組とは異なり、おふさも無惨に殺されているが、テレビ版では彼女は死んでおらず、なおも亭主の帰りを待つ形で終わる。

●第12話「雨乞い庄右衛門」(1991年2月6日)(視聴率16.6%)
・雨乞い庄右衛門 – 田村高廣   ・神楽の市之助 – 小野進也   ・勘行の定七 – 石山雄大
・破目の伊太郎 – 富川澈夫   ・お照 – 朝比奈順子

※原作での雨乞い庄右衛門は、旅先で岸井左馬之助に看取られて客死する。破目の伊太郎もそれほど重要な役柄ではなく、冒頭でお熊と共に仲間の盗賊に殺されてしまう。

※田村高廣演じる雨乞い庄右衛門が、番組ラストの方で裏切った手下の元へ一人で斬り込む場面は、原作には無いが、鬼気迫る見所との評が多い。

※雨乞い庄右衛門・・・もともと夜兎の角右衛門の配下であった大盗。原作では最後の盗みを前に湯治をしていたが、子分から裏切りを受けて襲撃される。一旦は岸井左馬之助により助けられたが、心臓の具合が悪化して病死してしまう。死の間際に自身の素性と裏切った子分の居所を左馬之助に伝えた。

●第13話「密告」(1991年2月13日)(視聴率17.1%)
・伏屋の紋蔵〈横山小平太〉 – 沖田浩之   ・久兵衛 – 村田正雄   ・三右衛門 – 北村光生
・お百 – 光本幸子

※原作では、平蔵がお百と再開して食事をする場面はない。

※お百役の光本幸子(2013年2月22日没)は、第4シリーズ第8話「鬼坊主の女」でお栄を演じている。

※伏屋の紋蔵・・・木更津を本拠として安房や上総、下総、そして常陸国を縄張りにした笹子の長兵衛の義理の息子である。原作では長身で浅黒い肌、きりっとした顔つきとされている。

●第14話「夜狐」(原作:『殺しの掟』)(1991年2月20日)(視聴率16.4%)
・夜狐の弥吉 – 江藤潤   ・おやす – 芦川よしみ   ・井坂孫兵衛 – 沢竜二
・近藤監物 – 根上淳   ・満寿子 – 佐野アツ子

※原作は鬼平シリーズではなく、短編集『殺しの掟』に収録された『夜狐』をもとにしたテレビ番組のオリジナル。その為、平蔵が用心棒として弥吉を助ける場面はない。また強請(ゆすり)を企てるのは弥吉本人となっており、腕に自信のない彼が居酒屋「三河や」亭主の伝蔵に紹介された助っ人が井坂孫兵衛で、それまで両者には面識はなかったという設定。

※夜狐の弥吉・・・彼は阿呆烏(アホウドリ、ポン引き・無店舗の女郎屋!?)だったが、大名家の跡目争いに関わる謀殺事件を目撃したことから強請りをもくろみ、浪人に変装した平蔵に用心棒を依頼する。このテレビ番組では謀殺事件解明のきっかけとなったことで極刑は免れたが、百叩きの刑に処された。

●第15話「霧の朝」(1991年2月27日)(視聴率17.6%)
・桶屋の富蔵 – 平田満   ・おろく – 二木てるみ   ・吉造 – 石丸謙二郎   ・おきね – 小鹿みき

※原作の冒頭で平蔵と共に事件にかかわるのは細川峯太郎である。また、雨の中、桶屋の女房・おろくが幸太郎の無事を祈ってお百度参りするシーンも原作にはない。またこの回では平蔵自らは刀を抜かないが、井関録之助(夏八木勲)が犯人捕縛に活躍するのは原作と同じだが、同心・沢田小平次の出番はテレビ番組のみのオリジナル。

※吉造役の石丸謙二郎は、結構色々な役でこの吉右衛門版に登場するスーパーサブ的な役者。

●第16話「白と黒」(1991年3月6日)(視聴率15.6%)
・もんどりの亀太郎 – ベンガル   ・お紋 – 浜田朱里   ・お今 – あべ静江

※原作には、亀太郎の隠し金を姉妹が狙うというエピソードはない。また彼が左腕が不自由なのもテレビ番組オリジナルの設定。また原作では彼女たちは姉妹ではなく泥棒仲間であり、タイトルの『白と黒』は、お紋(原作ではお仙)の色白い肌と、お今の浅黒いの肌の対比から。

※『広辞苑』によると「もんどり」とは、「もんどり【翻筋斗】(モドリの撥音化)身を倒(さかさ)にかえして立つこと。とんぼがえり。もうどり。」とある。

●第17話「春の淡雪」(1991年3月13日)(視聴率17.7%)
・大島勇五郎 – 中村浩太郎   ・雪崩の清松 – 平泉成   ・平瀬の又吉 – 森下哲夫
・日野の銀太郎 – 椎谷建治   ・池田屋五平 – 中村又五郎

※原作での同心・大島勇五郎は、女のように色白で大人しくて、気も弱く剣術も出来ない男として描かれているまた原作で雪崩の清松と日野の銀太郎に関する情報を平蔵にもたらすのは、『穴』の事件以降、火盗に協力している扇屋の番頭の茂兵衛であったが、このテレビ番組では登場しない。茂兵衛の役どころはおまさと大滝の五郎蔵が務めている。

※大島勇五郎・・・火盗改の同心。気が弱く剣術もダメだが、尾行や聞き込みには優れている。博打の借金のかたに、自分の配下の密偵・雪崩の清松から盗賊へと引き込まれてしまうが、最後にはことが露見して自害して果てた。

●第18話「下段の剣」(1991年3月20日)(視聴率16.1%)
・松岡重兵衛 – 江原真二郎   ・長谷川辰蔵 – 長尾豪二郎   ・牛久の小助 – 井上昭文
・不破の惣七 – 宮内洋   ・お歌 – 斉藤絵理

※原作は『泥鰌の和助始末』である。第1シリーズ第15話の「泥鰌の和助始末」は、池波の原作から和助のエピソードだけを抜き出した話だが、本作は松岡重兵衛のエピソードが中心だる。その為、泥鰌の和助は登場せず、代わりに松岡重兵衛の相棒には牛久の小助があたる。また原作にはないが、このテレビ番組では辰蔵と松岡重兵衛の立ち会いのシーンがあるが、原作では辰蔵が松岡の剣に憧れることもなく、剣を合わせることもない。

※松岡重兵衛役の江原真二郎の演技が、実直な雰囲気が伝わって好演。

※松岡重兵衛・・・かつて高杉銀平道場の食客をしていた剣客。若かりし頃の平蔵や岸井左馬之助の兄貴分で、二人の面倒をよくみた。平蔵と再会した時には泥鰌の和助一味に加わっており、一味の仲間割れに巻き込まれて殺害された。

●スペシャル「熱海みやげの宝物」(1991年3月27日)(視聴率15.3%)
・高橋九十郎 – 伊藤敏八   ・横川の庄八 – 鶴田忍   ・長助 – 小島三児
・板垣軍次郎 – 堀田真三   ・赤井助右衛門 – 早崎文司   ・小沼の富造 – 高峰圭二
・与惣松 – 広瀬義宣   ・念仏 – 伴勇太郎   ・次郎吉 – 日高久
・馬蕗の利平次 – いかりや長介

※テレビ版と原作では細かなストーリーに幾つか差がある。例えば原作では、江戸に向けて下る時、相模の彦十は一旦は横川の庄八の跡をつけて平蔵や馬蕗の利平次と別行動となり、小八幡の茶店で飯を食う場面にはいない(駕籠を使い藤沢の宿手前で追いつく)。江戸の火盗改方に火急の知らせをするのも、先行して戻っていたおまさが藤沢の宿から飛脚で手紙を送っている。平蔵たちが横川の庄八らに襲われるのも、程ヶ谷宿の手前の権太坂近辺である。

※原作では、平蔵を手助けに来た佐嶋与力の一行と小田原藩の役人たちとのコミカルなエピソードはなく、最終的に馬蕗の利平次は自首して盗賊を廃業する。また二代目高窓の久太郎は扇屋の女あるじ・お峰の娘であるお幸と夫婦同然の暮らしをしており、盗賊から足を洗っていて最後まで死ぬことはない。更に、お峰と馬蕗の利平治が好い仲であったという話も、テレビ番組では描かれていない。

※テレビ番組では、平蔵が利平治の嘗帳のありかをずばり言い当てるが、原作ではラスト近くで利平治が自ら平蔵に差し出した。また嘗帳も実の姉ではなく、赤の他人である小八幡の茶店の夫婦に預けてあった。

※平蔵の旅先での偽名は、同心・木村忠吾をもじった儒者・木村忠右衛門である。

※馬蕗の利平次役のいかりや長介と、相模の彦十役の の掛け合いが抜群で、老優の老盗が老友として“のほほん”と絡む姿は観ていて心が和む。

※馬蕗の利平次・・・馬蕗とは牛蒡の異称であり、その名の通りに手足が細く長く色黒の容姿である。元は上方の高窓の久五郎一味の嘗役で、相模の彦十とは旧知の間柄である。しかし後に妙義の團右衛門に密偵であることを見破られて、殺害されてしまう。だが、テレビ番組では殺されるのは高萩の捨五郎に変更となっていた。

※『広辞苑』によれば、馬蕗(うまぶき)とは牛蒡(ごぼう)の古名である。

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投稿者: いずみ将哉

性別は男。年齢は不詳。職業も秘匿だ。 時々、気儘な散文を書いているが、昔から推理小説や警察小説といったミステリ、冒険小説とか戦記モノの愛好家であり、また大の歴史ファンなので、Kijidasu!ではそういったジャンルと関連する記事を紹介するつもりだ。 では諸君、記事で会おう。