以下に『鬼平犯科帳』(中村吉右衛門版) テレビ番組シリーズ 第3シリーズ キャスティング・リストを掲載するが、現状は《暫定版》であり、都度、加筆・修正の予定である。また各話のあらすじやその他の諸データは番組公式HPで確認願いたい。
【懐かしの時代劇】 鬼平犯科帳 (中村吉右衛門版)・・・へ戻る
『鬼平犯科帳』フジテレビ公式HP・・・各話のあらすじはこちらから
★ 各欄コメントには、物語の結末や、所謂(いわゆる)ネタバレ的な内容が含まれているので、視聴前や未読の場合は要注意。
第3シリーズ(1991年11月20日 – 1992年5月13日、フジテレビ系 水曜20時台時代劇枠)
●第1話「鯉肝のお里」(1991年11月20日)(視聴率23.2%)
・長虫の松五郎 – 垂水悟郎 ・岩吉 – 安藤一夫 ・大根屋 女房 – 石井富子
・新助 – 山内としお ・徳次郎 – 島英臣 ・鯉肝のお里 – 野川由美子
※原作では鯉肝のお里の張り込みをするのは五郎蔵とおまさのコンビだが、テレビ番組ではおまさの相手役は相模の彦十であったので、特に色っぽいことは何も起こらない(笑)。
※鯉肝のお里・・・流れ盗めのしたたかな女賊。お盗めの分け前で江戸で遊んでいた際に火盗の監視に引っ掛かり、その後、水戸にある白根の三右衛門のもとに向かったところを三右衛門一味とと共に捕縛され、遠島となる。
●第2話「剣客」(1991年12月4日)(視聴率18.8%)
・石坂太四郎 – 中尾彬 ・留吉 – 江幡高志 ・定八 – 石橋正次 ※劇中では定七
・市兵衛 – 大橋壮多 ・松尾喜兵衛 – 丘路千
※原作では、同心・酒井祐助ではなく、沢田小平次の仇討ち物語。軍鶏鍋にまつわるやりとりは原作では平蔵と「五鉄」の亭主・三次郎の間でなされる。またテレビでは原作には登場しない久栄も姿を見せている。
※石坂太四郎役は中尾彬が好演。ふてぶてしい面構えが、捻くれた浪人の性格にマッチしている。
※石坂太四郎・・・無頼者で、沢田小平次の師・松尾喜兵衛との試合で敗北し、仕官の道を絶たれたことを恨んでいた。江戸で松尾を見かけて殺害したが、沢田に仇を討たれる。
●第3話「馴馬の三蔵」(1991年12月11日)(視聴率19.7%)
・馴馬の三蔵 – 金内喜久夫 ・お紋 – 伊藤美由紀 ・瀬田の万右衛門 – 高野真二
※原作には、小房の粂八と鮫洲の市兵衛との出会いや因縁話を描いたシーンはない。また、最後に粂八が瀬田の万右衛門を捕縛するところはテレビ独自のストーリー。
※馴馬の三蔵・・・小房の粂八の知人の一人働きの盗賊。自分の女房を殺した瀬田の万右衛門を討ち取ろうとするが失敗し、粂八に真相を打ち明けた後に死亡してしまう。
●第4話「火付け船頭」(1991年12月18日)(視聴率18.9%)
・常吉 – 下條アトム ・おさき – 竹井みどり ・西村虎次郎 – 伊藤敏八 ・久助 – 北見治一
※原作では、常吉は『大川の隠居』に出ていた浜崎の友五郎の船頭仲間という設定である。また常吉は原作に比べるとおとなしい男として描かれており、彼に対する処罰も原作とドラマでは異なる。更に口合人の塚原の元右衛門がこのテレビ番組には登場しない上、ドラマでのおさきの名前も原作ではおときである。
※優柔不断で善悪の区別がつかない男(常吉)を下條アトムが好演。
●第5話「熊五郎の顔」(原作:『にっぽん怪盗伝』)(1992年1月22日)(視聴率17.0%)
・信太郎 / 洲走の熊五郎 – 高橋長英 ・和泉屋治右衛門 – 高城淳一 ・由松 – 岡田一恭
・お延 – 音無美紀子
※原作は『鬼平犯科帳』シリーズではない。原作は短篇集『にっぽん怪盗伝』に収録された同名小説で、『鬼平犯科帳』の時代より半世紀ほど前の享保16年(1731年)という設定。その為、平蔵ほかの火盗の面々は登場しない。原作の和泉屋治右衛門は何かとお延母子の世話を焼くいい人だが、このテレビドラマでは財力と地位にものをいわせてお延を囲い者にしようとする卑劣な人物として描かれている。また洲走の熊五郎は原作では山猫三次と共に雲霧仁左衛門の手下で、羽黒の丁右衛門一味ではなく、火付盗賊改方の長官も向井兵庫である。
●第6話「いろおとこ」(1992年1月29日)(視聴率17.8%)
・寺田又太郎 / 源三郎 – 鷲生功 ・鹿熊の音蔵 – 浜田晃 ・おせつ – 山下智子
・市兵衛 – 中井啓輔 ・お篠 – 山本郁子 ・矢島孫九郎 – 堀田真三
・松倉の清吉 – 伊藤高
※寺田原三郎は、原作での名前は金三郎といい沢田小平次と肩を並べるほどの腕前でる。また原作では、源三郎とおせつの男女の関係についての描写はない。このテレビ番組では相模の彦十とおまさの二人が原三郎の足取りを追うが、原作では彦十ひとりが「五鉄」から居酒屋「山市」迄追いかける。更にテレビで亡兄の妻であるお篠の懐妊(原三郎の子)を看破したのは同心・木村忠吾だが、原作では寺田と同じ組屋敷に住む与力・佐嶋忠介となっている。
※山下智子演じるおせつは、ただただひたすら薄幸で要領が悪い、男運のない女である。
※ 居酒屋「山市」での張り込みの時(原作では、同心の酒井と五郎蔵、彦十の三人組)、「五鉄」の三次郎が差し入れる重箱弁当が美味そうである。
※寺田原三郎・・・火盗の同心で、同じく同心で盗賊(鹿熊の音蔵)に殺害された兄の又太郎の件を探索している。沢田小平次と同等の剣の腕前を持つ念流の遣い手だが、鹿熊の音蔵が放った刺客に奇襲を受けて重傷を負う。音蔵の事件の後、御役御免を申し出て平蔵のはからいで義姉と結婚することとなる。
●第7話「谷中いろは茶屋」(1992年2月5日)(視聴率14.4%)
・お松 – 杉田かおる ・乙吉 – 松山照夫 ・お徳 – 正司花江
・墓火の秀五郎 – 長門裕之
※ドラマでは墓火の秀五郎と同心・木村忠吾が「いろは茶屋」で酒を酌み交わす場面があり、お互いを「川越の古狸」、「兎忠」と呼び合う。しかし原作では、この二人が語り合うことはなく、当然、ラストのシーンもない。すなわち墓火の秀五郎と忠吾が対面することはなく、忠吾にとって「川越の旦那」の正体は最後まで謎のままである。
※墓火の秀五郎役の長門裕之がいい。「川越の旦那」の時は大店の主(あるじ)風の鷹揚なお大尽様だが、盗賊の頭となる場面では貫禄充分の強面親分となる演技で魅せた。
※原作は、同心・木村忠吾の初登場作である。書類作成の仕事から小柳安五郎のピンチヒッターで市中(上野・谷中)見廻りとなるが、また役所詰の内勤となったことが切っ掛けで(黒装束姿の)墓火の秀五郎一味に遭遇、後の手柄に繋がる。またシリーズ中で屈指の“鬼平”の名言「人間というやつ、・・・」がこの編の後半で聞ける。
●第8話「妙義の團右衛門」(1992年2月12日)(視聴率16.9%)
・妙義の團右衛門 – 財津一郎 ・鳥居松の伝七 – 江藤漢 ・竹造 – うえだ峻
・沼田大七 – 千波丈太郎 ・高萩の捨五郎 – 菅原謙次
※原作の馬蕗の利平治がテレビ番組では高萩の捨五郎に代わっているが、平蔵から手作りの枇杷(びわ)の木の杖を贈られた捨五郎と“鬼平”の絆が活きている。だが本来、捨五郎は嘗役ではなく一人ばたらきの盗賊なので、名うての嘗役であった馬蕗の利平治が適役であることは間違いない。また利平治の場合は弁多津から火盗改の役宅へ戻るところを尾行されて密偵であることがばれるが、テレビドラマでの捨五郎は「五鉄」に戻っていく。また原作では、利平治を惨殺した妙義の團右衛門に対して平蔵は、ラストでその鼻を切り落とす程の憤りを見せる。
※妙義の團右衛門役の財津一郎は、この人が本来の持っている雰囲気を活かして女好きの盗賊を巧みに演じている。
※妙義の團右衛門・・・北信越を股にかける巨盗の首魁。還暦の肥って血色の良い、6尺近い大男である。馬蕗の利平冶が密偵であることを見破り殺害した上で江戸から逃亡した。しかし常に好色であり、昔馴染みの女郎・お八重がいる水茶屋(愛宕権現、女坂上の水茶屋)に再び現れたところを、かねてよりお八重を見張らせていた利平治の復讐に燃える平蔵の斬撃(鼻を切り落とされる)を受けた上で捕縛される。
●第9話「雨隠れの鶴吉」(1992年2月19日)(視聴率18.4%)
・鶴吉 – 石原良純 ・万屋源右衛門 – 織本順吉 ・お民 – 早野ゆかり
※原作では、鶴吉夫妻と万屋源右衛門(鶴吉の実父)を引き合わせるのはお元(鶴吉の乳母)だが、テレビドラマでは井関緑之助に変更されている。
※残念ながら鶴吉役の石原良純については、その演技について大方からの評はいまいちであったが、演技力があれば今でも俳優業を続けていただろうし、本人は気象予報士でタレント、並びに石原慎太郎の倅で裕次郎の甥、ということで充分満足しているのだろう(笑)。
※雨隠れの鶴吉・・・中国筋から上方へかけて盗みを働く釜抜きの清兵衛の子飼いの手下。女房のお民も女盗賊である。稲荷の百蔵一味に繋がる情報を井関緑之助に伝えた後、この夫婦は江戸を去る。ちなみに、この「雨隠れ」のネーミングについては原作者の池波先生も、引き込み上手の盗人にふさわしい名前としてお気に入りだったそうだ。
●第10話「網虫のお吉」(1992年2月26日)(視聴率15.4%)
・黒沢勝之助 – 磯部勉 ・網虫のお吉 – 風祭ゆき ・歌川清三郎 – 佐原健二
・志村軍造 – 山本昌平
※黒沢勝之助と網虫のお吉の関係を見つけたのは原作では小柳安五郎だが、このテレビ番組では木村忠吾になっている。また吉右衛門版では黒沢同心に対して平蔵が温情をかけてやるが、原作では敢えて厳しく接する(切腹となる)。
※網虫のお吉・・・名うてのお頭も鼻毛を抜かれるという毒婦であるが、男の運命を狂わせた女の業はいかばかりか。ちなみに、網虫とは蜘蛛の異称である。
●第11話「夜鷹殺し」(1992年3月4日)(視聴率17.1%)
・川田長兵衛 – 中野誠也
※テレビ番組では、囮として夜鷹に扮したおまさに木村忠吾が声を掛ける。また原作では、平蔵が自ら夜鷹殺しの犯人探しに乗り出すが、吉右衛門版では殺された夜鷹の知人であった相模の彦十に依頼されてという設定に変わっている。またテレビ番組では夜鷹の殺し方が幾分ソフトな描写に変更されている。
※川田長兵衛・・・ 家禄2百俵の旗本で書物奉行。息子の宗太郎が岡場所の女郎と心中したことで 、夜鷹を恨んでいた。
●第12話「隠居金七百両」(1992年3月11日)(視聴率19.3%)
・お順 – 浅野愛子 ・阿部弥太郎 – 坂詰貴之 ・奈良山の与市 – 小野武彦
・松浦与助 – 小島三児 ・薬師の半平 – 中田浩二 ・孫吉 – 多賀勝
・堀切の次郎助 – 芦屋雁之助
※原作では次郎助は与市に殺されるのではなく、腸捻転で死亡する。また奈良山の与市に襲撃されるのは辰蔵ではなく阿部弥太郎であり、これを助けるのも酒井同心ではなく平蔵本人。更に隠居金のありかはお順の口から語られるのではなく、後に平蔵が次郎助の立場になって考えて突き止めた。
※堀切の次郎助・・・引退して鬼子母神境内の茶屋「笹や」の主になっているもと盗賊。白峰の太四郎の右腕だったがその太四郎の隠居金を預かったところ、その金を奈良山の与市に狙われる。次郎助の娘であるお順に平蔵の息子・辰蔵が熱をあげたことから、辰蔵と彼の悪友の阿部弥太郎が事件に巻き込まれていく。
●第13話「尻毛の長右衛門」(1992年3月18日)(視聴率17.2%)
・布目の半太郎 – 堤大二郎 ・おすみ – 水野真紀 ・尻毛の長右衛門 – 小林昭二
・塚原の元右衛門 – 穂高稔
※この吉右衛門版のドラマでは、おまさに諭されたおすみは改心して、平蔵のはからいでそのまま商家で働くことになる。また原作では口合人は鷹田の平十であるが、この番組では塚原の元右衛門となっている。更に、テレビ番組のラストで久栄が口にする「若い女には、誰にでもおすみのような激しさがある。ただ、それを表に出すかどうかは人それぞれ」は、原作ではおまさの台詞だ。
※布目の半太郎・・・もとは蓑火の喜之助に仕込まれたが、その後は本格派の盗賊・尻毛の長右衛門の配下のつなぎ役。原作では引き込み役のおすみと深い仲であったが、親分の長右衛門におすみを後添にしたいと打ち明けられた後に、一味から抜けて上州へ向かう途上の両国橋の上で薩摩藩士と揉め事を起こして惨殺された。
●第14話「二つの顔」(1992年3月25日)(視聴率17.0%)
・与平 – 花沢徳衛 ・おはる – 宮沢美保 ・おろく – 工藤明子
・神崎の倉治郎 – 田中浩 ・夜ぎつねの富造 – 坂本長利
※原作では平蔵が腹痛の岸井左馬之助を見舞うが、ドラマでは風邪をひいた相模の彦十を見舞い、女難の相が顔に出ていると言われてしまう。また、このドラマでのおはるは、原作ではおみよという名前で、妹の他に弟もいる。両親の病は労咳、母は既に死亡していた。彦十から指摘された平蔵の女難の相の件、またおはるを長屋から連れ出すのに忠吾が癪(腹痛)を装うのもドラマのオリジナルである。更に、神崎の倉治郎と夜ぎつねの富造の顔の特徴も、テレビ番組ではもみあげのところの刀傷とされているが、原作では先天的な「兎唇(みつくち)」という唇の裂け目のことである。
※テレビドラマのラストで、鬼子母神界隈で夫婦でみやげ物屋を営んでいる富造と、来店した平蔵とが声を交す。昔の喧嘩相手だった平蔵ではないかと尋ねられるが、違うと答えた平蔵はススキで作ったミミズクを一つを買い求めると釣りは取っておけと言って嬉しそうにその場を立ち去るのだった。これに対して原作では、鬼子母神の参道でたまたま前を通り過ぎていく、年老いて丸くなった富造とその妻を見かけた平蔵の感慨が語られている。
※早々と殺されてしまう与平を演じた、花沢徳衛(2001年3月7日没)の存在感が抜群である。
●第15話「炎の色」(スペシャル)(原作:『炎の色』・『誘拐』)(1992年4月1日)(視聴率15.4%)
・峰山の初蔵 – 新田昌玄 ・袖巻の半七 – 花上晃 ・神谷勝平 – 立花一男
・平山清三郎 – 草見潤平 ・牛子の久八 – 出水憲司 ・荒神のお夏 – 池内淳子
※原作とテレビ番組との決定的な差は、原作では荒神のお夏の年齢が25歳と若い設定で、荒神の助太郎の女房ではなく隠し子であること。そしてこのことは、仲間に誘われる以前に乙畑の源八からおまさは聞いていた。また荒神のお夏は、テレビ番組では畜生働きを嫌い本格を守ろうと思っているが、原作での彼女は仕方がないと納得していて、盗賊宿に火を放つこともない。更にテレビでは、平蔵の妹・お園と夜鴉の仙之助が登場しない。更に荒神のお夏には、密偵・おまさと同年代の自殺した妹がいたことで、この番組では彼女のおまさへの姉妹愛が描かれている。尚、番組後半は特別長篇『誘拐』の内容を下敷きに展開するが、原作が未完の為に結末はテレビ番組のオリジナルである。
※原作では流石に長編の為か、“鬼平”一家総動員の様相で、密偵や平蔵に協力する剣客たちも過去作から多くの者が登場している
※この回は、原作の流れからおまさと荒神のお夏の“女の絆”の物語であるが、ある人曰く、池波“鬼平”シリーズのもう一人の主人公はまさに「おまさ」であり、そこには彼女の成長ストーリーがあるそうだ・・・。
※おまさは、お夏の父(テレビでは亡き夫)・荒神の助太郎の配下にいたことがある。また峰山の初蔵の下でも二度ほど助働きしたことがあるので、彼とは顔見知りであった。
※荒神のお夏・・・父は本格の盗賊・荒神の助太郎であり、彼女は荒神一味の2代目親分。放火癖のあるレズビアンとの設定だ。峰山の初蔵と組んで江戸で盗みを企むが、その時、仲間に入ったおまさを気に入ってしまう。『炎の色』の事件では捕り手を掻い潜り逃亡、その後、おまさへの復讐を狙っていた。
●第16話「おしま金三郎」(1992年4月15日)(視聴率19.9%)
・松浪金三郎 – 峰岸徹 ・おしま – 蜷川有紀 ・ませの七兵衛 – 不破万作
・高山の治兵衛 – 広瀬義宣
※原作では、金三郎の密偵は与吉(女賊おしまとは旧知の間柄)だが、ドラマではませの七兵衛に変わっている。原作では松波とともに牛尾の又平一味を捕らえた同心・小柳安五郎に危険が及ぶと、おしまが松波に告げるところから物語は始まる。テレビ番組では、松波とおしまのその後について、大坂に去ったとされるだけで、明確には語られない。
※蜷川有紀演じるおしまの“女”の執念が、結局は盗賊なんかよりはよっぽど凄いのだった(笑)。平蔵曰く「女という生き物に、理は通らぬ」そうだ。与力・佐嶋に言わせると「女とは、まことにもって恐ろしいものでございますな」・・・。
※松浪金三郎役の峰岸徹は、第5シリーズ第8話「犬神の権三郎」でも犬神の権三郎を演じているが、2008年10月11日に亡くなった。
※松浪金三郎・・・女賊のおしまと情を通じた不祥事により御役御免となった元同心で、なかなかの男前である。麻布・田島町の鷺森明神宮の傍らで居酒屋「豆腐酒屋」の亭主をしていたが、かつての親友である同心・小柳安五郎襲撃計画に巻き込まれることに・・・。物語の最後では結局、避け続けていたおしまと結ばれた(ところを「玉章堂」の番頭に目撃される)。
●第17話「忠吾なみだ雨」(原作:『お雪の乳房』)(1992年4月29日)(視聴率16.9%)
・お雪 – 喜多嶋舞 ・つちや善四郎 – 山田吾一 ・梅原の伝七 – 三上真一郎
・鈴鹿の又兵衛 – 高松英郎
※平蔵から「お雪をあきらめろ」と諭された後に、忠吾が男泣きするシーンはテレビドラマならではのシーン。原作では、自宅で熱燗を一杯やりながら、呆れ顔の同僚・山田市太郎を尻目にお雪の乳房を懐かしむ場面などから、悲恋・純愛一路に見えるテレビ番組とは忠吾のお雪に対する想いが随分に異なっている。このドライで打たれ強い、且つ、妙なしたたかさが忠吾の本来の持ち味なのだが・・・。
※鈴鹿の又兵衛役の高松英郎(2007年2月26日没)は、萬屋錦之介版第1・第2シリーズで与力・佐嶋忠介を演じている。
●第18話「おみよは見た」(原作:『江戸の暗黒街』から)(1992年5月6日)(視聴率17.9%)
・大島の治兵衛 – 草薙幸二郎 ・おみよ – 吉沢梨絵 ・宇吉 – 西沢利明
・金谷の又市 – 片桐竜次 ・青堀の小平次 – 近藤正臣
※原作は、『江戸の暗黒街』に収められた一編『おみよは見た』である。当然乍ら“鬼平”シリーズのメンバーは登場せず、大島の治兵衛(原作では香具師の元締・羽沢の喜兵衛)以下、殺し屋や依頼人たちが捕まることはない。テレビでは、おみよの雷様嫌いという設定等も含めて、細かいところが幾つか変更になっている。
※おみよを演じた吉沢梨絵だが、儚げな表情で小平次に秘密は喋らないと伝える姿が印象に残る・・・。
●第19話「密偵たちの宴」(1992年5月13日)(視聴率23.6%)
・豆岩 – 青木卓司 ・鏡の仙十郎 – 五味龍太郎 ・大崎重五郎 – 岩尾正隆
・竹村玄洞 – 戸浦六宏
※全体的な話の流れは原作と変わらないが、細部では多くの違いがある。先ずは、盗みに参加する密偵たちの内、舟形の宗平がこのテレビ番組では浅草御厩河岸の豆岩の岩五郎に変更されている上に、「五鉄」の三次郎や女中のおとき(江戸家まねき猫)も仲間入りしている。正直なところ、この豆岩や三次郎、おときの参加は少々不自然だ。またこのテレビ版では、未だにおまさと五郎蔵が結婚しておらず、その為に彼らの盗みの打ち合わせ場所も五郎蔵の家から「五鉄」に変更されている。原作では相模の彦十は最初から密偵たちの企みに参加しており、盗んだ金も、竹村玄洞の用心棒・大崎重五郎を通して返す。また五郎蔵たちが盗みを決行したのも鏡の仙十郎一味が捕縛された日の明け方とかではなく、しばらく後のこととなっている。更に、最後の終わり方も原作は随分と違う。密偵たちが酒盛りをしている五郎蔵の家におまさが帰って来て、平蔵から言われた言葉(配下の不始末は自分が切腹して責任を負う、といった意味合い)を披露する形となっているのだ。
※つまり、番組のラストで密偵たちの宴にふらりと立ち寄った平蔵が語る言葉の「俺もこれまで数知れない盗人と渡り合ってきたが、今度の奴ほど腕の良いのは見たことが無い。強いてあげれば蓑火の喜之助、夜兎の角右衛門、先代狐火の勇五郎、この辺にも勝るとも劣らない奴だ。どんな奴か一度でいいから面を見てみたいものだ・・・。」や、五郎蔵にひと言釘を差す場面(「そうだ五郎蔵。盗んだ金蔵の鍵な。早く返しておけよ」)、そして最後の最後にぺろりと舌を出すコミカルな演出はテレビ番組の完全なるオリジナルである。
※原作で五郎蔵が草間の貫蔵を見かけたのを褒めると同時に、担当外の場所にいたことを疑問視(テレビでは同心・酒井が詮索)する場面では少々疲労の色が濃い平蔵であるが、テレビ番組では全編を通して茶目っ気たっぷりで、まだまだ元気だ。
※竹村家の用心棒・大崎重五郎役の岩尾正隆が、短い出番の中で妙に味のある演技を見せている。原作での用心棒は二人組で、妻子持ちが大崎重五郎で独り者が猪坂七兵衛だが、猪坂は盗賊の襲撃時に金蔵を守って斬死にする。またテレビ版では既に述べた様に、事件直後に竹村玄洞宅から密偵たちにより金が盗まれるが、その時の大崎重五郎は祝い酒で酔っていたことになっているが、原作での盗みはしばらくたってからのことで、その時は猪坂の後釜の浪人、谷八介が首筋の急所を強打されて昏倒している隙に、まんまと大金を盗まれた。
※原作では悪徳金貸しの町医者・竹村玄洞の番頭は吉右衛門という名前だが、テレビ番組では「やへい(弥平?)」という名称に変更されている。主役の中村吉右衛門への配慮は明白だが、五郎蔵が「やへい」という一言を発する場面が一か所あるきりで、他では「番頭」としか表現されていない。
※ラストでおまさが、「だから私は最初から嫌だって言ったんだよ! 明日からどの面下げて長谷川様と顔を合わせりゃ良いんだよ! なんとかお言いよ!!」という台詞は原作に準じているが、既述の通り話す場面が異なっている。だが、梶芽衣子のこのシーンでの演技は巧いの一言、(自分自身も含めて)怒り心頭なんだけど妙に可愛げのある姿を見事に演じて、おまさファン倍増であった。更に、去り際の平蔵の一言に、ばつの悪さや恥ずかしさやら複雑な気持ちで何も言えない密偵の面々の演技も秀逸である。
※この番組は原作と異なる部分も多いが結果オーライとなっており、筆者も大のお気に入りの作品であり、世評でもシリーズ中で人気が高い一作である。
【懐かしの時代劇】 鬼平犯科帳 (中村吉右衛門版)・・・へ戻る
『鬼平犯科帳』フジテレビ公式HP・・・各話のあらすじはこちらから