続いてチューナーだが、1年生の後半、1979年から1980年にわたる年末年始のアルバイトの途中で、念願のチューナーを手に入れることが出来た。尚、この頃から、オーディオ販売員(マネキン/ヘルパー)のアルバイトを始め、大学を卒業するまで断続的に続けることになるのだが、その際の体験談は次回以降で詳しく述べる予定である。
ところで、実はチューナーは最初、トリオかヤマハの製品を選択肢としていたのだが、当時、同じアルバイト先にいたオンキョーのヘルパーさんの紹介で、新同品の Integra T-417 ¥65,000(1979年発売)を格安(半額以下)でわけてもらった。この当時、オンキョーブランドはたしかにチューナーのジャンルで格別に人気という訳ではなかったが、この製品は素直ですっきりとした味わいの音質で、使い易いシンプルでオーソドックスなデザインの佳作であった。
オンキョー Integra T-417
このチューナーは、上級機 T-419 譲りのシンプルなデザインで使いやすい機種。受信感度がしっかりとしていて滑らかな音質で聴き疲れの無い製品だったと思う。
フロントエンドには、入力ダブルチューン構成の周波数直線型高精度7連バリコンを採用しており、2段RFやミキサー段の素子に、ダイナミックレンジが広く第3次歪などの高次高調波歪の発生を抑えた極低歪率デュアルゲートMOS FET(×3)を採用していた。
このチューナーの、IFを水晶発振の明確な基準信号によって10.7MHzに固定するクォーツロック方式には、選局動作時には同調点 ±50kHz以内に入るとロックド・インジケーターが輝き、チューニングノブから手を離すと瞬時にロックするというスピーディーなジャストチューン・タッチセンサーが装備されており、高い同調安定度が確保されていた。
また受信エリアの電波事情に応じて、検波器出力のS/Nを検出し自動的に最良の音質を実現するIF帯域幅自動2段切換回路を搭載、高S/N局の場合は自動でWIDEポジションが選択され、郡遅延時間 ±0.2μs(fo 0 ±110kHz)以内のフラットな広帯域4素子リニアフェーズフィルターや正確な逆特性の位相等化フィルターが動作して、低歪(0.05%・400Hz)な音質を実現した。
また、低S/N局の受信エリアの場合ではこれも自動でNARROWポジションとなり、8素子リニアフェーズフィルターがさらに加わることにより85dB(400kHz離調)の高選択度となり、隣接局妨害をシャープにカットした。
更に、IF入力段には初段に強入力でリニアな特性のD-MOS FET、IFフィルターの結合素子には入力信号のレベル変化や温度上昇等に伴う特性の変化を抑えたハイスルーレートダブルベース差動IC4個を採用し、高い妨害排除特性の向上に成果を上げていた。
MPX部には安定度の高いPLL・ICが採用されており、オーディオ信号への混入を防ぐ為にパイロット信号を同振幅・逆位相で打ち消すオートキャンセラーを内蔵、このキャンセラーは局側のパイロット信号レベルの変動に対する追従性の高い三角波を応用したキャンセル性能の高いものであり、中域歪と高域ビートの低減に大きな成果を上げて広帯域にわたる低歪率化と高セパレーションを実現している。更にMPX部のIC内部にも、充分なNFBをかけて高調波歪の発生を大幅に低減することに成功した。
出力段のオーディオ部には、同時期のオンキョーのプリメインアンプ等と同様のスーパーサーボDCアンプが採用されている。これはサーボアンプがDCアンプをコントロールして有害な超低域をカットしていて、またカップリングコンデンサが入らない完全直結方式となり、DCアンプとしてすぐれた性能を実現していた。
電源部はプラス側に保護回路付定電圧ICを使用した ±15V 定電圧電源、大容量ケミコンを搭載した強力なものとなっていた。またMPX部及びスーパーサーボオーディオ部には3本のブスラインで電源が供給されており、ローインピーダンスに徹した給電ラインと強力な電源部によってよってつくり出された安定性と余裕が音楽性の向上に役立っていた。
各種の機能面では、電波が弱い場合に入力のレベルに応じてLch・Rchの高域ブレンドを実施、自動的にS/Nの劣化を防ぐ入力レベル検出型のオートマチック・ノイズリダクション機能、20dBfの2段切換FMミューティング機能などを有していた。
アンテナ入力は切替可能な2系統で、A・B2系統切換のF型コネクターアンテナ端子を装備。80dBfまでのリニアタイプのシグナルメーターやマルチパス検出対応のデビエーションメーター、そして440Hz、50%変調のエアチェック・キャリブレーターを持ち、オーディオ出力はレベル可変出力端子だけではなく出力固定の録音専用出力端子も装備していた。
以上のように、T-417はオーソドックスなバリコン式チューナーとして非常に実用性の高いモデルであったと言って良い。前述の様に、当時のオンキョーはチューナーではメジャーなブランドとは云えなかったが、この時期の前後から着実に技術を蓄積して音質的にも機能的にも優れたすぐれたチューナーを作り上げていったが、T-417はそんなチューナーのひとつであったと思う。
T-417 製品仕様・スペック
型式 | スーパーサーボ・クォーツロック方式FMステレオチューナー | ||||||||
<FMチューナー部> | |||||||||
受信周波数 | 76MHz〜90MHz | ||||||||
実用感度 | 0.9μV/10.3dBf(75Ω/IHF) | ||||||||
S/N50dB感度 | 1.7μV/15.8dBf(75Ω/IHF) | ||||||||
相互変調妨害比 | 96dB(±1MHz)、108dB(±2.5MHz) | ||||||||
イメージ妨害比 | 120dB(83MHz) | ||||||||
IF妨害比 | 120dB(83MHz) | ||||||||
S/N比 | mono:90dB stereo:86dB |
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スプリアス妨害比 | 120dB | ||||||||
2信号選択度 (±400kHz離調) |
IF Wide:50dB IF Narrow:85dB |
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AM抑圧比 | IF Wide:65dB IF Narrow:55dB |
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キャプチャーレシオ | IF Wide:1.0dB IF Narrow:2.0dB |
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歪率 |
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周波数特性 | 20Hz〜15000Hz +0.2 -0.8dB | ||||||||
アンテナインピーダンス | 75Ω | ||||||||
ステレオセパレーション |
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キャリアリーク | -65dB | ||||||||
出力電圧/インピーダンス | 可変出力:0〜1200mV/最大時47Ω 450mV/3kΩ |
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<総合> | |||||||||
使用半導体 | 12IC、56Tr(8FET)、43Di | ||||||||
電源 | AC100V、50/60Hz | ||||||||
消費電力 | 14W(電気用品取締法規格) | ||||||||
外形寸法 | 幅435×高さ108×奥行384mm | ||||||||
重量 | 7kg |
こうしてカセットデッキとチューナーが加わったことで、使い勝手や用途的にはほぼ満足のいく陣容が整ったのだが、この頃になると肝心のアンプやスピーカーの力不足が気になり始めていた…。
-終-
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