皆さん、反転授業をご存知ですか? 〈335JKI10〉

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3月28日(金)の深夜討論番組、TV朝日系列『朝まで生テレビ!』で、藤原和博さんが佐賀県武雄市の「反転授業」について触れていたのを見て、ドキッ!
チエちゃんも、新たな教育の試みとして昨年来、反転授業には注目していたので、是非、皆さんにも紹介したいと思います!!
 

 

先ずは、藤原和博さんを紹介しておきます。藤原さんは、リクルート社の社員から東京都初の民間人校長として杉並区立和田中学校の校長先生となった人です。義務教育の「正解主義・前例主義・事勿れ主義」を改めるべく、「よのなか科」の普及と開かれた学校運動を推進中で、現在は東京学芸大学客員教授、構想日本政策委員などを務めています。

さてそれでは、反転授業について簡単にご紹介していきましょう!!

反転授業とは

反転授業(flip teaching or flipped classroom:はんてんじゅぎょう)とは、担任教師が従来型の説明形式の講義内容を、自らが用意するかもしくはサードパーティが提供したe-learningの教材や動画(授業ビデオ)として準備し、それを生徒が事前に家庭などで視聴します。その後の学校での授業時間では、生徒たちが授業ビデオで予習した知識を応用して、問題を解いたり、互いに教え合ったり、議論を行ったりします。教室では全体講義は行わず、教師は個々の生徒の理解度に合わせた個別指導を行ないます。

反転授業では、学校での授業時間内での講義時間を減らすことが可能で、教師は導入の全体授業を行なわない代わりに、授業中には生徒各々に対して、よりきめ細かい個別指導をしてその習熟度に合わせたフォローを実施します。また生徒にとっても、予習のビデオ授業では、動画を何度も繰り返し視聴できたり、再生速度を調整可能なことが、自分のペースで学習に取り組める大きなメリットとなっています。

尚、予習で用いられるビデオ授業の視聴ができない生徒たちは、原則として反転授業には参加できません。

このように反転授業の場合は、まさしく従来の「授業」の流れとは裏返しの順序で学習が進んでいきます。生徒は家庭で予習として講義を聴講し、学校でその復習や応用を行うというもので、この順序が文字通り従来と「反転」している教育の方法という訳です。

インターネットの活用やICT化の促進が、反転授業の実現を支えていることは明らかですが、現場の教師の意識改革も、その進展に大きく寄与していると、考えられます。
米国では2000年頃から反転授業に関する研究発表がなされ、数年前からは学校現場に草の根的に広がり、近年は大学や企業などでも導入され始めています。日本でも、大学を中心に授業での導入が進み、高い評価を得はじめました。

 

反転授業への取り組み

確認できるものの中から、日本における導入実例をいくつか、ご紹介していきましょう。

本格的な実例としては、先ず2012年の宮城県富谷町立東向陽台小学校の例が報告されています。佐藤靖泰先生の算数の授業において事前にビデオを家庭で視聴し、分からなかったところを授業で個別に指導しました。これは東北学院大学の稲垣忠先生の協力を得ての研究授業であり、生徒に一人一台のタブレット端末を配布し、予習として数分程度の動画を視聴してそれをもとにノートを作成してくることを課し、授業では生徒が互いに学びあう、という形式で進められました。家庭での学習時間が1.5倍に増加するなどの成果があったそうです。

また2013年には、大阪府の近畿大学附属高校で1年生全員にタブレット端末を配布、芝池宗克先生(数学)と中西洋介先生(英語)が動画での聴講を主とした反転授業を実施しながら、個々の生徒の学習の進捗管理やアフターケアもオン・オフ両用でサポートする方式を実施しました。

また、塾や予備校では、熊本県の予備校、壺溪塾の甲斐資子先生(国語)は、ThinkBoardで作成した教材をLMSで配信して、反転授業を実施しています。また、物理ネット予備校の田原真人先生は、Web教室を活用してオンラインでの反転授業を行っています。

2013年、11月より佐賀県武雄市では市内の武内小学校で反転授業を開始する事を発表しました。科目は先ずは算数と理科だそうです。2014年からは、全市での導入となるそうで、大変注目されています。

反転授業の課題

現状で考えられる反転授業の課題のひとつとしては、「保護者の理解と協力」という問題が挙げられています。

先ず生徒が家庭でタブレット端末等を使用することへの保護者の許諾が必要です。そして反転授業自体のコンセプトに関しての理解が大事となります。その狙いを充分に保護者が理解した上で生徒をサポートする必要が出てくるのが反転授業だからです。

予習時での聴講には、間違いなく今まで以上に家庭でのサポートが必要となるでしょう。生徒が保護者に学習のサポートを要求した場合に保護者がどの程度フォローできるかは大きな課題となるでしょう。

もちろん、生徒の教育に保護者が関わるこの機会を前向きにとらえて、親子間の関係性の改善と子供の学習成果の向上に結びつけることが可能ならば幸いですが、全ての保護者がそのような(能力的にも時間的にも)行動がとれるものでしょうか?  しかも学習量の増加や、授業内容の高度化は必然と思われます。

また、反転授業が本格的に全面導入がはかられた場合に、トータルで発生する費用が保護者にも負担を強いることも考えねばなりません。全ての家庭が対応できるかは未知数です。

学校並びに教師の側の課題もあります。視聴用のビデオの制作を担任の教師が自ら行なうことは、果たしてどこまで可能なのでしょうか? 更に、反転授業で必要とされるスキルを身に付けている教師がどの程度現場にいるのでしょうか? その育成も課題です。

サードパーティから提供される教材の種類や質の問題はどうでしょう? 徐々に色々な組織や団体・企業が反転授業向きの学習コンテンツを供給し始めていますが、そのクオリティの担保が重要となってくるでしょう。

 

教育改革の大きな切り札として期待される反転授業ですが、その成功の要因と考えられる学習コンテンツの供給問題について、次回は考えてみたいと思います。その鍵を握るのがOCW(オープンコースウェア)という仕組みです!!

-終-

 

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