【超入門】 Kelly Blue/Wynton Kelly モダン・ジャズの超入門盤 〈12JKI00〉

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【超入門】シリーズで扱うだけに、超々入門盤ともいえるモダン・ジャズの名盤を紹介しよう。

ウイントン・ケリーの『ケリーブルー(Kelly Blueだ。 ジャズ好きの貴殿(あなた)からは、今更何を、と言われるのは覚悟の上で、敢えて“超入門してもらおう!!

 

ウィントン・ケリーについて

ウィントン・ケリー(Wynton Kelly、1931年12月2日生まれ)は、米国のジャズピアニストだ。西インド諸島のジャマイカ生まれで、1971年に39歳でカナダのオンタリオ州トロントで死去した。

スインギーなタッチとブルージーなプレイが人気だったが、黒人特有の泥臭さは希薄で、ジャマイカ生まれが影響したのか、エキゾチックな響きとゆったりとしたビート感とともに、どことなくカラリとしたサウンドが特徴的といえる。

10代から当初はR&Bのピアニストとして活躍し、レイ・エイブラムズ、 セシル・ペイン、やがて1951年にダイナ・ワシントンの伴奏者となる。以降、レスター・ヤングやチャールズ・ミンガス、ディジー・ガレスピーらと共演しジャズシーンの表舞台に躍り出る。そしてマイルス・デイビスのコンボに参加したころには、モダン・ジャズ中堅ピアニストのNo.1プレーヤーと評され、才能を開花させた。

また、たとえ帝王マイルスのバンドに所属しても自分のスタイルを守り、決して必要以上の難解なプレイは行わず、ブルース・フィーリングが横溢した明快でシンプルなタッチと、スイング感溢れるメロディツクな表現に徹したところが評価されよう。

その後、ケリーはマイルスのもとをベーシストのポール・チェンバースやドラマーのジミー・コブとともに去り、自身のトリオを結成した。そして数枚の秀作アルバムを発表するが、凋落期が訪れるのも早かった。

 Kelly Blue/Wynton Kelly”の概要

ウィントン・ケリーはハード・バップ系パウエル派のピアニストの中でも人気者のひとりだが、その代表アルバムの一つのが、自身がリーダーとなった3枚目である本作『ケリー・ブルー(Kelly Blue)』で、モダン・ジャズの大人気盤でもある。

ホーン入りのセクステットによる3曲とトリオで演奏される5曲をカップリングしたもので、いずれの演奏でもスウィンギーでかつブルージーなハード・バップが楽しめる。

さて収録曲のうち、冒頭の印象的なイントロで始まる「1.ケリー・ブルー(Kelly Blue)」は、誰もが認める名曲・名演。特徴ある魅力的なテーマメロディが軽快に奏でられ、思わず口ずさみたくなるようなファンキーで、少しばかりキャッチーなフレーズが愛らしく感じられる。

ボビー・ジャスパーのフルートがとても印象的に使われていて、独特の雰囲気を創り上げるのに成功した曲だ。それぞれのソロはいたってストレートに演奏されていて、セクステット全体のバランスはファンキーでありながら泥臭くはならず、リラックスしたムードとなっている。軽快でセンス良い曲の構成と、ドライヴ感にあふれたアドリブのフレーズが好対照をなしている、とも言えようか・・・。

セクステットでのもうひとつの録音「5.キープ・イット・ムーヴィング(Keep It Moving)」では、ナット・アダレーがイイ味を出しており、やはりソフトで丸みのある、コルネットという楽器の音色には癒されるものがある。

尚、この2曲(1.と5.並びに追加曲に5.の別テイクあり)は、コルネットがナット・アダレイ、テナーがベニー・ゴルソン、またフルートがボビー・ジャスパーとなっている。

また、このアルバムのケリーの自作曲は、上記のセクステットでの2曲に加えて「6.オールド・クローズ(Old Clothes)」の3曲である。

これらに対し、残りの曲(2.3.4.6.および追加曲の7.)では、ピアノ・トリオの編成で演奏している。

「2.朝日のように爽やかに(Softly, As In A Morning Sunrise)」は、従来より大傑作録音といわれ、こういう洒落たブルースでの“ケリー節”が炸裂した代表曲のひとつとされている。独特の鍵盤の上を転がるようなシングルトーンのソロが素敵だし、とにかくリラックスして軽快で歌心に溢れている。ピアノ・トリオでの「朝日は・・・」はこれが一番というジャズファンは多く、哀愁と詩情を感じさせる素晴らしい演奏だ。

ソニー・クラークの同曲も印象深くて甲乙付け難いのだが、このケリーの演奏に軍配を上げる人が少しだけ多いかも知れない。

「3.オン・グリーン・ドルフィン・ストリート(On Green Dolphin Street)」は、筆者がサックスを少しばかり練習していた頃の課題曲で、思いで深い曲でもある。このちょっと変則的なリズムと旋律を持つ曲に、ケリーのピアノはピタリとハマる。

この曲も、デューク・ジョーダンらを思い浮かべる人がいると思うが、ここでのケリーの演奏もなかなかイイ感じである。この曲は、レッド・ガーランドの『ブライト・アンド・ブリージー所蔵の同曲や、ビル・エヴァンスの『グリーン・ドルフィン・ストリート』と聴き比べてみるのも面白いし、後述のマイルスの評価がなるほど正しいと思えてくる。

次に、「4.柳よ泣いておくれ(Willow Weep For Me)」だが、力強くクリーンなタッチで、内側から込み上げてくるような豪快なスイング感は、当時の王道良識派ピアニストの爽やかな感動が満ちている。この曲は元々ブルース曲なので、3.よりナチュラルにスイングしている様子も感じ取れる。

6.と7.もトリオの演奏であり、ここでもメロディツクなフレージングとスインギーなタッチに好感が持てるし、明快で小気味の良い颯爽とした爽快感が味わえる。またP・チェンバースのどっしりとしたベースの安定感についても特筆しておきたい。コブの太鼓ととも当時のマイルス・コンボのレギュラー・リズム隊ということもあって、息の合った完成度の高い演奏だ。

 

ケリーの演奏は全体にわたり、単に明快なだけではなくグルーヴィな味がある。原則として音数は少なくシンプルな響きだが、その背後に、ブルージーな翳りが垣間見えるところも魅力的。しかし明るさとファンキーな香りを常に失わないところに、彼の特徴がある。

ちなみに、7 曲目と 8 曲目の 2 曲は、 CD 化にあたってのボーナス・トラックだ。

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価格:1,512円
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収録曲について

1. Kelly Blue
2. Softly, As In A Morning Sunrise
3. On Green Dolphin Street
4. Willow Weep For Me
5. Keep It Moving – (take 4)
6. Old Clothes
以下、CDボーナス・トラック
7. Do Nothin’ Till You Hear From Me
8. Keep It Moving (take 3)

パーソネル・録音について

1.5.8.:ウイントン・ケリー Wynton Kelly (p)、ナット・アダレイ Nat Adderley (cor)、ベニー・ゴルソン Benny Golson (ts)、ボビー・ジャスパー Bobby Jasper (fl)、ポール・チェンバース Paul Chambers (b)、ジミー・コブ Jimmy Cobb (ds)

1959年2月19日NY録音。

2.3.4.6.7.:ウイントン・ケリー Wynton Kelly (p)、ポール・チェンバース Paul Chambers (b)、 ジミー・コブ Jimmy Cobb (ds)

1959年3月10日NY録音。

amazon.comでは試聴可能です。→ Kelly Blue

 

大部分のジャズ・ファンは、ウイントン・ケリーを保守的でスウィンギーなピアニストであると見なしているが、意外にも、時として伝統的な溜感を持った(スウィングする)8分音符よりも、ストレートで明確さを強調した8分音符を演奏する傾向があり、また同様に、“レイドバックなビート感”を抑えて演奏する場合があった。これはハード・バップからモードへの移行期において、より現代的なサウンドの目指していた新世代のピアニストたち、マッコイ・タイナー、チック・コリア、ハービー・ハンコックなどに影響を与えたとされる。

上記のような演奏スタイルと関連して、マイルス・デイヴィスはウィントン・ケリーのことを、レッド・ガーランドとビル・エヴァンス(二人ともマイルスのコンボでケリー以前に活躍)の“ハイブリッド”と評したことがある。これはケリーについての非常に的確な評価であり、ケリーはレッド・ガーランドのようなスインギーでパワフル、かつリズムドライヴを根底にしたスタイルを背景に持ちながらも、時にはビル・エヴァンス流のリリカルで控えめな表現での演奏も可能であったことを物語っている。

 

晩年は不遇で、また早逝してしまったが、ピアノ好きなジャズ・ファンとしては、マイ・フェイバリットのひとりとして、いつまでも想い出に残るミュージシャンだ!!

-終-

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